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更新日:2017.12.12グルメラボ

余計な手を加えずに素材の持ち味を生かし切る【小料理 五半】 明石の海の幸に惚れた店主による魚尽くし

関西有数の好漁場を擁し、鯛や穴子など昼網の魚介が全国に知られる明石。魚自慢の店がひしめく街で、旬の魚介をお値打ちで楽しめると評判の【小料理 五半】。新鮮な素材の持ち味を引き出す丁寧な仕事で、季節ごとに、瀬戸内ならではの多彩な魚の醍醐味に出合えます。

余計な手を加えずに素材の持ち味を生かし切る【小料理 五半】 明石の海の幸に惚れた店主による魚尽くし

関西屈指の漁師町へ

    カウンター席とテーブル席がある店内。テーブル席は予約必至

    カウンター席とテーブル席がある店内。テーブル席は予約必至

 27歳で会社員から転身して、京都、東京など魚料理の名店で10年余の修業を積んだ、ユニークな経歴を持つ店主・伊藤道直さん。修業時代に明石のタコや鯛の評判をよく耳にしていたことから、「地元大阪での独立も考えましたが、それなら良い素材が獲れる産地に近い所で店を出したいと思って」と一念発起、5年前に明石で店を構えました。以来、飛び込みで漁協を訪ね、市場に通い、地道に仕入れ先を開拓。現在は、夜は店に立ち、昼は漁協のセリをしながら目利きを鍛え、すっかり漁師町の空気が身に馴染んでいます。

その日の仕入れで料理が決まるおまかせコース

  • 料理はすべておまかせコースから。『鰆の焼物 自家製のカラスミと白子を添えて』<br />

    料理はすべておまかせコースから。『鰆の焼物 自家製のカラスミと白子を添えて』

  • 淡い味付けで白身の風味を活かした『目板カレイの煮物』

    淡い味付けで白身の風味を活かした『目板カレイの煮物』

「旬の魚を、ギリギリまで新鮮な状態でご提供したい」と、その日に仕入れた魚はその日のうちに出すのが伊藤さんのモットー。獲れる魚は毎日違うため決まった品書きはなく、その日の仕入れで構成するおまかせ1本のみ。明石浦漁港の昼網のセリに自らが赴き、厳選した旬の魚介を仕入れてからその日の献立を決めるのが日課です。

「明石浦の漁師は魚の扱いを心得ているのでいい状態の魚が手に入ります。今は、いかに明石の魚だけで勝負できるかを考えています」と、界隈では“前もん”と呼ばれる時の魚のみを使用。市場では数が揃わないバラの魚を1尾単位で仕入れ、瀬戸内ならではのバラエティ豊かな磯魚や、日によって希少なネタが登場することも珍しくありません。

素材本来のおいしさを活かした“前もん”尽くし

  • 大豆の甘みが濃厚な『自家製豆腐と金山寺味噌』

    大豆の甘みが濃厚な『自家製豆腐と金山寺味噌』

  • 生で漬けるからこその歯ごたえと磯の風味が魅力の『ヒイカの沖漬け』

    生で漬けるからこその歯ごたえと磯の風味が魅力の『ヒイカの沖漬け』

 コースの献立は前菜・刺身・焼き魚・煮魚・揚げ物・酢の物・土鍋ごはんの7品。例えば造りには、ユニークな名と裏腹に旨み濃密なタモリ、歯ごたえのいい西貝といった個性派が存在感を発揮。春先に産卵期を迎える鰆は、焼物と共に白子、さらに卵でカラスミを作って提供。きめ細かな身の質感、しっとりとした脂の旨味と白子のまろやかなコク、カラスミの軽やかな酸味の三位一体に、お酒が進みます。白身のメイタカレイなら煮物碗のような淡い味付けで、繊細な味わいが際立ちます。1週間醤油に漬け込んだ自家製のヒイカの沖漬けなど、小さな皿にも手間を惜しまない仕事ぶり。信楽焼のおくどさんと土鍋で炊き上げる〆のご飯も、名物の一つです。

「その日揚がった魚を使い切るので、冷凍庫もいらないくらい。何より素材に嘘がないのがいいんです」と伊藤さん。「今日は何が食べられるのかな?」と訪ねるたびに楽しみになります。滋味あふれる料理の数々は、港に近い場所だからこその、魚の活きの良さが感じられる一軒です。

【小料理 五半(こりょうりごはん)】

電話:078-918-6002
住所:兵庫県明石市大明石町1-8-8
アクセス:各線明石駅から徒歩5分
営業時間:17:30~22:00(魚がなくなり次第終了)※要予約
定休日:木曜

この記事を作った人

文/田中慶一(フリーライター)

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