ヒトサラマガジンとは RSS

更新日:2017.07.26旅グルメ

<タイ・ローカルフード紀行 VOL.04> バンコク屋台の濃厚『とろとろ豚足煮込み』

秘伝のスープでじっくりとやわらかく煮込まれた豚足は、とろみが濃厚で、深い味。タイ料理の中でも辛くなく、コラーゲンたっぷりで美容と健康にもばっちりです。バンコクでは、こんなメニューに路上の屋台で出会えるのです。

<タイ・ローカルフード紀行 VOL.04> バンコク屋台の濃厚『とろとろ豚足煮込み』

 バンコク名物の屋台街が、危機に瀕しています。都知事が「バンコク都内の屋台、露天商を撤去していく」という方針を打ち出したからです。理由は衛生面の問題や、景観を損ねるといったものでした。

 とはいえ、屋台文化はタイの華。路上は庶民の台所でもあるのです。当然、抗議活動が起こっています。屋台街を楽しみにタイを訪れる観光客の多い欧米諸国からも、懸念の声が寄せられています。

 それでも都は姿勢を崩さず摘発を進め、都内中心部のスクンビット通りなど主要な目抜き通りからは次々と屋台が消えていきました。通りは一見、さっぱりとこぎれいになりましたが、どこかガランとした寂しさを覚えてしまうのは僕だけでしょうか。

    『カオカームー』屋の【カオカームー・コンベント】。外国人観光客も多いので簡単な英語は通じる。「ポークライス」でOKだ

    『カオカームー』屋の【カオカームー・コンベント】。外国人観光客も多いので簡単な英語は通じる。「ポークライス」でOKだ

 それでは、シーロム通りはどうだろう……。ここもやはりバンコクを代表する大通り。大企業の本社もたくさんある商業の中心で、日系企業も多いことから日本人の姿もよく見る場所です。

 地下鉄で訪れてみると、あれほど密集していた服や雑貨、おみやげ、食べものの屋台が取り払われ、呆然。この様子では、あの屋台もなくなっているだろうな……。肩を落としてシーロム通りを歩いていたのですが、そこから一本折れたわき道には、いまだ屋台群が健在ではありませんか! その中に、行きつけの『カオカームー』屋である【カオカームー・コンベント】も発見。うれしくなって、路上に置かれたやや傾いたテーブルに腰かけ、おばちゃんに注文します。


「『カオカームー』大盛り、皮と玉子つきで!」

    タイ屋台文化の中心的なメニューでもある『カオカームー』。屋台のほかフードコートなどでも気軽に食べられる庶民の味

    タイ屋台文化の中心的なメニューでもある『カオカームー』。屋台のほかフードコートなどでも気軽に食べられる庶民の味

 すぐにほかほかの湯気を立てた『カオカームー』、豚足煮込みごはんが運ばれてきます。八角やシナモンでこってり煮込まれた豚足は、見た目からもうとろっとろ。ほおばると口の中で溶けていきます。

 煮込みに使ったスープは、ぱらぱらのタイ米によく染みこんでいて、これまたいけます。そして注文通りに添えられた皮の部分は、ねっとりもっちりとした食感と甘みがたまりません。コラーゲンもたっぷりありそうです。仕上げにあひるの半熟煮玉子を崩して、混ぜていただきましょう。

    【カオカームー・コンベント】の「看板娘」のおばちゃんは、もう20年以上もこの屋台を切り盛りしているという

    【カオカームー・コンベント】の「看板娘」のおばちゃんは、もう20年以上もこの屋台を切り盛りしているという

 この豚足屋さん、日本のタイ料理レストランではポピュラーなほうではありませんが、タイでは全土で愛されている定番中の定番。漢方などの調味料でじっくり煮込んだ豚足を、ナタのようなでっかい包丁で切り分け、ごはんに乗せます。そして煮込みに使ったスープをかけるのですが、各店この調合に工夫をこらしていて、レシピは秘密。仕上げにパッカナー(カイラン菜)やパッカドーン(高菜の一種)を添えて、できあがり。一皿50バーツ(約160円)前後という安さなんです。

 お好みでサイムー(モツ)やナン(皮)、カイ(玉子)を追加することもできます。スパイシーな料理の多いタイにあって、『カオカームー』はマイルドで辛さがなく、日本人の味覚にも合うメニューです。

    次々と豚足をさばいて調理していく。その手際も見ものだ

    次々と豚足をさばいて調理していく。その手際も見ものだ

 そんな『カオカームー』でも、この店はとくに絶品だとみんなが知っているのです。ふとまわりを見れば、仕事帰りのサラリーマンやOLでテーブルはもう満席。お持ち帰りの人々は行列をつくっています。

    豚足煮込みを使った『クイッティオ(米麺)』もあり、こちらも人気になっている

    豚足煮込みを使った『クイッティオ(米麺)』もあり、こちらも人気になっている

 夕方から夜半まで店を開けているのですが、おばちゃんいわくその間に300皿以上が売れるそうです。これはなんと豚足20本以上の量。

 今日も元気におばちゃんが包丁を振るう、路上の豚足屋台。「ここはシーロムじゃないよ。わきに入ったソイ(小道)だから大丈夫!」と、都の政策もどこ吹く風。こんな店が、いつまでも残ってほしいものです。

【Convent Pork Rice(カオカームー・コンベント)】

住所:Convent Rd.,Silom Bangkok
営業時間:16:30~22:30
定休日:日・月曜休み

タイ・ローカルフード紀行 関連記事

この記事を作った人

取材・文/室橋裕和(フリーライタ―)

タイに10年在住し、現地日本語情報誌を中心に活動。帰国後は雑誌や書籍、ウェブなどの執筆・編集にあたり「アジアのいま」を発信している。タイ料理ではラープ・ペット(アヒル肉とハーブのサラダ)をカオニャオ(もち米)と一緒に食べるのが大好き。

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(4/13~4/19)

エリアから探す