更新日:2017.02.27グルメラボ
非常時の備えは大丈夫? 進化を続ける保存食と選び方のポイント
秋になると冬支度がはじまり、実りを迎えた野菜や稲、果物などを軒先に干して保存食を用意する姿は、古くから日本の原風景の一つでした。近年でも東北大震災や熊本地震などの災害が立て続けに起こり、こういった非常時のための保存食に注目が集まっています。
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知っておきたい、ニッポンの保存食事情
原始的な保存食技術を応用した最新技術とは?
ちゃんと準備してる?災害時に備えた保存食のアレコレ
もともと日本は、保存食を作ることに適していない国だった
最も原始的で種類が多い保存食の技術は、干して乾燥させること。しかし、高温多湿な気候を持つ日本では、簡単に乾燥できる食品のほうが少なかったため、大根やかんぴょうなども細く千切りにしてから乾燥させるなどの工夫がされていました。
また、乾燥と並んで多い加工方法が塩漬けと発酵。特に両方を組み合わせた漬物のようなものは、韓国のキムチやアメリカのピクルスなど世界的にも多くみられますが、中でも日本は群を抜いて漬物の種類が多く、およそ600もの種類があるといわれています。こうした漬物大国になった背景も、日本の風土と関係していると考えられます。
時代とともに変遷を続ける保存食技術
1804年にフランスで広口ビンに食品を詰めるビン詰めが発明され、その6年後には金属容器に詰める缶詰が発明されたことが、保存食文化に大きな転機をもたらしました。もともと軍用食として開発されたものでしだが、その有用性は世界中に知れ渡り、現代ではなくてはならない存在になっています。
現代でも、缶詰の技術を応用し合成樹脂のフィルムに食品を密封させるレトルト食品の出現や、凍結乾燥の技術を発展させたフリーズドライなど、原始的な保存食技術を応用発展させながら進化を続けています。
実際に保存食を準備するときに気をつけたいこと
普段保存食について考える機会はあまりないかもしれませんが、地震大国日本に住む者として、実際に災害に備えた保存食を用意する際に気をつけたいポイントをいくつかご紹介いたします。
①熱処理が不要なものを準備する災害時には、ライフラインの断絶も想定されます。水やガスなどがなくてもおいしく食べられる加熱不要のレトルト食品やパンの缶詰などは多めに用意しましょう。
②栄養バランスを考えたものを用意する非常事態においては心身ともに疲弊してしまうもの。だからこそ栄養バランスを考えた保存食を用意しておくことは肝要です。常温でも保存のきく野菜や果物があると便利です。漬物や乾物をはじめ、フリーズドライ食品などもいいでしょう。
③普段から保存食を食べて、好みのものをそろえる非常時に備えた食べ物を、最終的に口にするのは自分や家族たちです。特に缶詰はおつまみ用に作られた味付けが濃いものも多く、普通の食事としては口に合わないと感じてしまうことも。それぞれの好みやアレルギーなどをしっかり把握して、安心しておいしく食べられるものを備えておくことが大切です。
幸せなことに恵まれた今の日本では、あまり意識に上らない保存食ですが、そもそも保存食は『どんな時でも、よりおいしいものを食べられるように』という人々の努力の結晶なのです。普段の食事だけでなく保存食にもきちんと目を向けることで、普段の食事自体にもっと感謝できるキッカケになるかもしれません。
この記事を作った人
坂野 絵美(フリーライター)
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