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更新日:2017.05.23旅グルメ

串揚げ一筋半世紀、素材の持ち味を引き出す 丁寧な仕事と、飾らぬ味わいで愛される老舗店|兵庫【まこと】

JR三ノ宮駅前から東へ続く商店街で、串揚げ専門店として46年前に開業した【まこと】。メニューはすべて1本100円とあって、オープンと同時にお客で埋まる盛況ぶりですが、人気の理由はそのクオリティにあり。随所に工夫を凝らした値打ちの串揚げは、リピート必至の逸品です。

串揚げ一筋半世紀、素材の持ち味を引き出す 丁寧な仕事と、飾らぬ味わいで愛される老舗店|兵庫【まこと】

細やかな工夫を凝らした串揚げを気軽に

和食店で修業を積んだ店主が屋台からスタート

    親子で切り盛りする気さくな雰囲気も人気の理由。連日にぎわいが絶えません

    親子で切り盛りする気さくな雰囲気も人気の理由。連日にぎわいが絶えません

 にぎやかな駅前の商店街にあって、細い間口の目立たない店構えながら、暖簾がかかると、待ちわびたお客で店内はみるみる一杯に。若者から年輩のお客まで、カウンターを譲り譲られ、活気のある雰囲気に変わります。

 50年前に屋台から始まった【まこと】は、界隈で知る人ぞ知る串揚げの老舗。最初は1本10円で始まったため、1000円あればお腹一杯。今はすべて1本100円に変わりましたが、それでもお値打ちです。
 
 ただ老舗とはいえ、安さばかりが長年、支持を得ている理由ではありません。店主の鈴木さんは、店を継ぐ前に神戸の和食店で修業を積み、さらに鮮魚卸でセリ人も務めた経験の持ち主。素材は毎日中央市場に通い、独自のルートで直接仕入れます。

 野菜は生産者によって味が違うので、その日のいいものを選り抜きで。また、品書きに必ず1、2種入れる新鮮な魚介も名物ネタの一つ。時にはクジラや穴子など、串揚げにはもったいないほどの魚が登場することもあります。目利きに自信を持つ素材をさらに生かす秘訣が、とことん手間を惜しまない仕込みのひと仕事にあります。

ネタの仕込みから自家製の揚げ油まで随所に工夫

    くじらのコクのある味わいは甘口のソースと好相性

    くじらのコクのある味わいは甘口のソースと好相性

 季節替わりの串揚げは、しっかり味を煮含めてから揚げる筍や、縦半分に切って筏にし、歯触りを強調したアスパラなど、野菜一つとっても仕込みにひと手間あります。

「天ぷらと同じ要領ですから当然のこと」と、和食出身だけに細やかな調理もお手の物。一見、地味なジャガイモでさえ、湯がいて軽くつぶすことで、しっとりした食感とホクホク感が際立ちます。尖った先で割れないようにと、串を逆に刺す気遣いも心憎いばかりです。

    生の串揚げとソースの持ち帰りも可能

    生の串揚げとソースの持ち帰りも可能

 さらに揚げ油も、A4~A5ランクの牛脂をミンチにして、煮出してから絞るという自家製のもの。お肉屋さんのコロッケのような、甘く香ばしい風味がクセになります。

    しっかりとソースを付けていただくのがマスト

    しっかりとソースを付けていただくのがマスト

 毎日継ぎ足しするソースは、和ダシなどを加えた神戸風の甘口で。後を引く味わいに、ついもう一本と手が伸びます。

 素材の組み合わせはいろいろありますが、「あえてシンプルに直球勝負」。決して目を引くネタはないですが、ごまかしがきかない分、この一本にかける職人気質の仕事が光ります。

「自分で手間をかける分、お客さんに還元できれば」と、油からネタまですべて手作業で作る名代の串揚げ。老舗の良心がにじみ出る、気取りのない味わいが1本100円とは、これぞお値打ち! 連日の盛況も納得の一軒です。

この記事を作った人

取材・文/田中慶一(フリーライター)

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