ヒトサラ シェフズ・テーブル ダイジェスト vol.11 - ゲスト・杉本 敬三シェフ第3話 『独学者、フランス人になる』
プロとして料理をこよなく愛する人々“Dish Artist”をゲストに、食のネクスト・トレンドを語るトーク番組『ヒトサラ シェフズ・テーブル』。Vol.9~12のゲストは、【ラ・フィネス】の杉本敬三シェフです。
10年以上は現地で学ぼうと決めたフランス留学。それは決して三つ星レストランで働いたとか、有名な料理人に師事したとか、自身の経歴に「箔を付ける」ためのものではなかった。フランスの食文化に真っ向から挑み、感覚的なレベルでフランス料理を自分のなかに取り込む。それこそが、杉本シェフがフランス留学中に目指したもっとも大切なことなのだ。そのために、パリではなく地方を選び、仕事以外の時間も練習に費やして、来たるチャンスに備えたという。鋭い観察眼と独特の分析力をもって、さらなる飛躍を遂げたフランス留学時代にスポットライトを当てる。
杉本敬三シェフ 第3話:独学者、フランス人になる-
フランス人のDNAになりたい
1ツ星レストランで感じた、フランス人のたくましさ
フランス人のDNAになりたい
――あえてパリには行かずに地方を選ばれたのは理由があったのですか。
杉本:三ツ星レストランなど一流レストランだけで働いていて、本当にその文化が勉強できるんだろうかと思ったんです。日本だったら、京都の【吉兆】さんとか、有名なお店がありますが、そこで何年か働いたといっても、例えば秋田のきりたんぽとか、大阪のたこ焼きとか、家庭で食べられている漬物とかつくることができるのかな、と。その土地に根づいている文化を感じたうえで、僕はできるだけフランス人のDNAになりたかったんですね。フランス人のDNAをもったまま日本に帰って、それで自分が思うフランス料理をつくりたかったんです。
1ツ星レストランで感じた、フランス人のたくましさ
杉本:13人くらいいる厨房で、その前は歳が下から2番目の研修生でしたが、2年目にはオーナーに来年からシェフができるかと言われて「やります」と言いました。そしたら抜擢されたんです。
――厨房での人間関係は難しくなかったですか。
杉本:それがフランス人の本当に凄いところだと思ったのですが、向こうは「この日本人と働いてどれだけプラスになるか」を考えたうえで接してきます。だからどうすればいいかというのは簡単。魚や肉をさばくにしても、じゃがいもの皮剥きにしても、「お前よりこれだけ早くてきれいなんだよ」という実力の差を見せつけるんです。そしたら、「教えてくれ」となる。こいつから学んだ方がプラスだと考えるわけです。
ゲストプロフィール
杉本 敬三 氏
1979年、京都府福知山市生まれ。料理が好きで、小学校3年生、8歳で料理人になることを決意し包丁と砥石を買ってもらう。19歳で渡仏。ロワールやシュノンソーやリモージュといった地方都市をあえて選び働きながら滞在し、ホテルレストラン【ボンラブルール】などのシェフを務める。フランスでの12年間に及ぶ修業を終えて帰国し、2012年、東京・新橋に「AUTODIDACTE」(独学者)をコンセプトに【レストラン ラ・フィネス】を開店する。2013年日本最大級の料理人コンペティション”RED”のU-35初代チャンピオンとなる。
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