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更新日:2017.06.13グルメラボ

自宅をレストランに変える新世代のサービス「ミール・キット」

SNS全盛のさなか、食べ物にも「フォトジェニック」が求められています。そんな時流にのって注目を集めているのが食材配達サービス「ミール・キット」です。高級レストランのような豪華な食事を手軽につくれるこのサービス、食のあり方を変えていくかもしれません。

自宅をレストランに変える新世代のサービス「ミール・キット」

アメリカ都市部で生まれた食材配達サービス

 調理前の食材一式の配送サービス「ミール・キット」は、2012年頃からアメリカで広まり急速に成長を続けています。2010年にサンフランシスコで創業したゴブル社はもともと調理済み食品の配達を行っていました。「家族に電子レンジで温めただけの食事を出すのは罪悪感がある」という顧客からの声をうけ、食材の販売を始めたところ、顧客は倍増し、投資家からは1100万ドルの融資を得ることに成功したそうです。

 都市部の「忙しく健康志向」な層がおもな客層で、Blue Apron、HelloFresh、Platedなど、代表的なブランドがニューヨークでサービスを提供しています。
アメリカでは150社以上がミール・キット販売を行っており、現在市場は15億ドル、2020年には60億ドルにまで拡大すると言われています。

時短で手軽、なのにゴージャス! ミール・キットの魅力とは

 ミール・キットが従来の食品配達と異なるのは、「レストランで外食をするような、凝った食事を自宅でつくれる」ということ。プロ監修のレシピに基づいたメニューは、「時間はないけれど、自宅でちゃんとしたものをつくって食べたい」という人のニーズを叶えています。毎週1〜3回、ディナー1食分の食材、調味料、レシピが届き、箱を開けた瞬間から料理を始めることができます。「献立を考え」、「買い物をし」、「調理する」。3つの行程のうち2つを省くことが可能です。

 厳選された食材を使用しており、食材はカットや味つけをされずに届くので鮮度や品質も自分の目でチェックできます。すべて使い切りの量が届くので食材を余らせて悪くしてしまう、なんてこともありません。
 料金は、比較的リーズナブルなBlue Apronのベーシックな2人用プランで、1週間に3食の注文をし、送料込み約60ドル、1人1食当たり約10ドルです。スーパーで食材を買うよりは高いけれど、外食するよりは安い、この絶妙な価格設定が人気の秘密でもあります。

 日本でミール・キットサービスを提供するTasty Tableでは、毎週3つのレシピから2つをチョイス。2人分2食のプランで1食あたり1500円、毎週6000円で食材が届きます。『鶏肉ときのこのフリカッセ』『真鯛のポワレ タプナードソース添え』『豚フィレ肉のスカロッピーネ』など、一聴しただけではどんな食べ物なのかわからないような、凝ったメニューが目白押しです。自宅でふるまったら株が上がること請け合いのフォトジェニック料理の数々。これはSNSにアップ必須でしょう!

食の多様性を牽引するミール・キットの今後

 ミール・キットの隆盛で、アメリカの食産業は活性化しているとのこと。外食、中食、内食の各分野に「外・内食」ともいえるミール・キットが一石を投じていることは間違いないでしょう。
 都市生活者の利用が主流のアメリカのミール・キットですが、現在各企業は都市部以外への進出を狙っています。ただ、都市部のように住居が隣接していない郊外では配送のコストの問題があり、またサービスが増え過ぎて飽和状態にあることによる投資金額の減少も業界の課題となっているそうです。ワインとのセットや有名シェフとのコラボ、おかしキット販売など、各ブランドはそれぞれ趣向を凝らし差別化をはかっています。新業態のミール・キットの真価が問われるのはこれからのようです。

 日本では始まったばかりのミール・キット。既存の食品配達業者も同様のサービスを開始しており、これからますます盛り上がっていきそうな気配です。特別な週末、「おうちレストラン」をオープンしてはいかがでしょう?

この記事を作った人

取材・文/塩川千尋(フリーライター)

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