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更新日:2017.04.16グルメラボ

滋味深い広東料理の数々は、愛情に満ちた中国版“おふくろの味”

中国広東省出身の店主の両親が、1950年に開いた中華料理店。その代名詞ともいえる中華粥は、地元の華僑の間でも本場の味として長年、支持を得ています。料理とともに手間ひま惜しまない仕事ぶりで創業から変わらない味を受け継ぐ、神戸が誇る老舗の一つです。

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じっくり煮込んだ中華粥の優しい味わいに癒やされる【杏杏】

幼いころから親しんだふるさとの味を継承

    シンプルゆえに際立つ手間ひまかけた深い滋味

 元町駅から坂を上ること8分、住宅街の一角に溶けこんだ小さな店は、昼時ともなれば近隣から訪れるお客でにぎわいが絶えない。「【杏杏】といえばお粥!」と、地元の人々から厚く支持されているのが、名物の中華粥。日本では病気の時などに食べる印象が強いですが、中国では朝食から夜食まで、毎日の食卓に上る家庭料理の定で、日本の味噌汁のように、家ごとに味が違います。

 この店の中華粥も、華僑二世の二代目・呉 杏芳(ウー・シンファン)さんが、幼いころから親しんだ祖父のレシピを継承。初代がお粥と豚まんの店として開店した頃は、お粥というと怪訝な顔をされるお客も多かったそうですが、やがて地元の華僑の間で「懐かしい故郷の味」と評判に。

 1997年に【杏杏】の名でオープンし、メニューも広東料理や点心などが増えましたが、今もほとんどのお客のお目当ては中華粥。いまや店の代名詞として、神戸っ子に親しまれています。

    香ばしいエビのライスペーパー巻揚、旨みたっぷりの牛バラの炒めも人気

 基本となるお粥の材料は、水で炊いた「お粥のタネ」と、老鶏の丸鶏からとるスープのみと至ってシンプル。それだけに、「少しでも手を抜くと、とろみがつかず水っぽくなりますから、ごまかしがきかないですね」と呉さん。

 それぞれを別の鍋で毎朝2〜3時間、じっくり火にかけます。さらに丸鶏のスープでお粥のタネを煮込むこと3~4時間。焦がさないように、ひたすらかき混ぜ続ける、まさに手間ひまを惜しまない仕事の賜物です。

 ぽってりととろみのついたお粥は、鶏の旨味が渾然と溶けあって、濃密な味わいがじわりじわりと染みわたります。お腹も心も満たされる、深い愛情に満ちたお粥は、まさにおふくろの味。底に忍ばせた千切りショウガの爽やかな香りや、ひと垂らししたゴマ油の香ばしい風味がさらに食欲を刺激します。

 中華粥は全部で6種類。鯛の切り身や香菜、長ネギを乗せる「魚生粥」は、熱々のお粥と混ぜて、ほんのり火が通った鯛の旨味が秀逸。ほかにも「貝柱粥」や「牛肉粥」など、好みに応じて様々な味わいが楽しめます。

 諏訪山の支店では朝からお粥が楽しめるので、旅行や出張の際に神戸ならではの朝食としてもおすすめです。

自家製の点心はお土産としても人気

    ほくほくした餡の甘味に癒やされる卵まん

 中華粥はもちろんですが、カウンターに並ぶ自家製の点心も、この店の醍醐味の一つ。紹興酒を片手に、焼き豚や蒸し鶏、焼売など、手作りで仕込む本場の味を楽しむことができます。

 中でも、焼き豚まんは、細かく切った豚胸肉とネギを炒めた具がたっぷりで、中から漂う五香粉の香りが食欲を刺激します。

 また、食後のデザートとしても人気なのが、オリジナルの卵まん。卵とバター、カスタードなどを根気よく練った特製の餡を包んだ、上品な甘さが後を引きます。テイクアウトも可能なので手土産やおやつとしても好評の、知る人ぞ知る“神戸スイーツ”の逸品です。

 現在、お店を切り盛りするのは、呉さんとご主人の遠藤晏市さん、三代目となる3人のお子さんたち。「自分が親しんできた味を多くの人に広めていければ。中華粥のおいしい食べ方や本日のおすすめなど、気軽に聞いてくださいね」と、先代から受け継いだ味を変わらず守り続けています。

【杏杏(しんしん)】

電話:078-322-3339 
住所:兵庫県神戸市中央区下山手通4-13-14 
営業:11:30~14:00、17:00~21:00 
定休:日曜、第3月曜休 
URL http://www.xingxing.jp

この記事を作った人

取材・文/田中慶一(フリーライター)

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