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更新日:2017.06.09グルメラボ

日本料理を心から愛し、未来へとつなげる~【銀座 小十】 奥田透さん~

第一線を走り続ける、トップの料理人にフィーチャー。今回はミシュランガイド東京で星を獲得し続け、メディアからも注目されている【銀座 小十】の店主、奥田透氏にお話を伺いました。

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 ミシュランガイド東京で星を獲得し続け、メディアからも注目されている【銀座 小十】の店主、奥田透氏。東京・銀座のみならず、フランス・パリ8区にも店を構えるなど、その活動の場はグローバルに展開されています。日本料理を深く愛するからこそ、その未来を憂えているという。そんな奥田氏に、パリ出店への想いと日本料理の未来についてお話を伺いしました。

日本と同じものをパリで再現することが目的

――パリにお店を開かれましたね。どれ位の頻度でパリに行かれているのですか?

 毎月1週間ほどパリへ行く、そんな生活が3年ほど続いています。

――フランスでは魚屋を営んでいらっしゃいますね。

 はい、活魚店をつくって鮮魚を卸しています。生きた魚を締めて配達をする、日本では当たり前のことが海外では当たり前ではないからです。

――ある種、革命的ですよね。

 そうですね、魚流通の革命だと思います。これによって魚の状態が大きく変わりますから。そもそも、海外では漁師さんが生きたまま魚を港に持ってくる概念がない上に、魚を運ぶ活魚車もないのです。EUではEU内で作った工業製品で、さらに基準適合マークが付いたものでないとダメなわけですよ。だから、活魚車を日本から持っていくことができず、EU内で一から車をつくりました。

――そこまでご自身でおやりになる、奥田さんの真意とは。

 日本料理というものは、ただ皿の中にあるものを食べて美味しかった、と評価されるだけのものではない、と私は考えます。何百年という歴史の中で培ってきたもの、文化的なもの、精神的なもの、それら全てが料理の背景にあってこそ、日本料理だと思っています。

 だからこそ、日本と同じことをパリで再現することを一番の目的としました。店構えも、器も、従業員も。あとは食材だけだったのです。これさえどうにかできれば、一番難しいとされるヨーロッパで日本と同じことが再現できると考えたからです。

―ー今、奥田さんの想いがどれくらい現地の方に伝わっていると実感していますか。

 想いは100%伝わっていると感じています。ビジネスのことだけを考えるのであれば、お客様である外国人に合わせることが先決なのかもしれません。しかし、この形を崩してしまったら日本料理ではないと私は思うのです。

 外国では日本人が認めることの出来ないものが、日本料理だとか寿司とか天ぷらだと言われもてはやされていて、しかも評判が良いという。これってそのまま一人歩きさせて良いんですか? と疑問を呈したいのです。同じ仕事をしているつもりでも、全く違うじゃないですか。そんな想いがありますね。

日本料理人を志す若者の減少に危惧

――奥田さんの和食に対する想いをお聞かせください

 今、日本料理を学びたい学生さん方が少ないと聞きます。正確な数字ではないのですが、日本料理を専攻する人は1~2割寿司・天ぷら・そば・和菓子の就職希望率は0に等しいそうです。8~9割の生徒はフランス料理やイタリア料理、パティシエを目指し、日本酒ではなくワインを希望するそうです。

 島国であるが故、外国に憧れる気持ちは誰もが持っているので否定はしないのですが、なぜそんなに日本料理、寿司、天ぷら、そば、日本酒の人気がないのか。それはきっと、大人が和食の魅力をきちんと子供たちに伝えられていないからではないか、と考えるわけです。

 私自身、日本料理は世界に類を見ないほど素晴らしい芸術だと思っています。これほどまでに豊かな食文化を持っている国は他にはありません。そういった認識がこの国には少なすぎるように感じています。

学校教育や給食の改革で日本料理の未来を変える

――認識を変えるために、何かされていることはありますか。

 日本料理の価値、値打ち、人気を取り戻すために行っていることが3つあります。まず1つ目は、先ほどお話しした海外での本格日本料理店の出店。2つ目は調理師学校の改革。日本の調理師学校はもっと和食と寿司、天ぷら、和菓子を教えるべきなんです。そんな想いから、2016年4月に東京・池尻大橋に寿司と和食だけの調理師学校「東京すし和食調理専門学校」を開講致しました。

――学校を開講されたのですか?

 水野学園というところが運営をしており、私は運営ではなく顧問をしております。調理師学校の改革をしなければ、和食と洋食の1対9の比率が、10年後は0対10になってしまうと危惧しているわけです。

 それだけではなく、家庭で和食を作るお母さんたちがいないんですよね。麻婆豆腐とパスタで文句を言う人は誰もいません。私も大好きなので否定するつもりはないのですが、子供たちが和食に触れる機会が少ないんです。和食を知らずして大人になってしまう、これできちんとした食文化を継承できるんですか? と問いたいのです。

 そこで、3つ目は学校給食の和食化を訴えております。これは教育であり、仕事です。学校給食で和食を作ることができれば、これから先の日本に和食は残せるかな、と考えております。

――奥田さんが書かれた本に、外国人に日本料理をしっかりと評価してもらうことで、もう一度我々が日本料理を評価しようじゃないか、ということが書かれていたのですが。

 日本料理には、何百年もの間培ってきた文化が集約されています。それを外国に持って行き、外国人が評価をすると、そこでやっと日本人は凄さを認識するのです。よくある話ですよね。自分たちの文化なのに、いつの間にか自分たちでは価値をつけられなくなってきているのです。
 
 だからこそ、日本人に対して日本料理の価値を高めるためにするべきこと。それは海外で勝負をし、まずは外国人に日本料理の素晴らしさを知ってもらうことなのです。日本料理の価値を高めて、世界中に日本料理の素晴らしさを知ってもらいます。その評価を知った日本人が、そこでやっと日本料理の素晴らしさに気付くのです。私自身、それこそが日本人の中で日本料理の価値を高める近道だと思っています。

 そうして、日本料理の素晴らしさを知った若者が日本料理の料理人を目指したり、子供たちが和食に触れる機会が触れる事を願っています。

奥田透(おくだ・とおる)

  • Profile.
    1969年、静岡県静岡市生まれ。高校卒業後、静岡の割烹旅館で日本料理の修業を始める。その後京都、徳島での修業を経て、1999年に静岡にて【春夏秋冬花見小路】を開店。2003年には東京・銀座に【銀座 小十】を開店、2007年には同店が「ミシュランガイド東京横浜湘南」で三ツ星を獲得する。以後10年に渡り、星を取り続けている

この記事を作った人

撮影/大槻志穂 取材・文/シマアキコ(ヒトサラ編集部)

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