更新日:2017.08.10食トレンド
フランス料理界の巨匠、アラン・デュカス氏にインタビュー/ 自然食にグローバリズム。フランス料理の未来とは?
16歳で料理人となり、33歳でモナコの【ル・ルイ・キヤーンズ】に料理長として就任後、わずか33ヶ月で三ツ星を獲得。以降、フランス料理界のトップを走り続けるアラン・デュカス氏に、「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2017」記者発表会でインタビューした。
今や、料理人の枠を超えて世界に20以上のレストランを経営するアラン・デュカス氏。クリエイター、実業家としても活躍している。フランス料理を気軽に楽しめる食のイベント「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2017」の元となる「Tous au Restaurant」の提案者のひとりである。
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「ナチュラリテ」(自然食)が未来へのキーワード
テロワールを活かすのは料理人と生産者のコンビネーション
グローバリズム化で際立つシェフの個性
「ナチュラリテ」はまだ始まったばかり。まだまだ根付いていないし、これからますます根付かせていくべきことだと思います。「ナチュラリテ」とは地元で採れる野菜、穀物を中心とした食材を使い、脂質と砂糖、塩味を抑えて、動物性たんぱく質を控えるという考え方です。健康にはもちろん、環境にも優しい。海産物であれば、その旬にも十分関心を持たなければならないし、資源を枯渇させないサステナブルな漁業を考えなければいけません。その考え方は「トレ・ボン!日本のテロワール」という今回のフランスレストランウィークのテーマにも通じます。日本においては、生産者や食材業界の方々の情熱にとても感銘をうけています。そういう方々の協力なしにシェフたちは料理を作ることができませんから。
(C)Pierre Monetta
【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】の料理の一品。「ナチュラリテ」をテーマに魚と野菜だけでコースを構成
日本の野菜には情熱を感じます。例えば、大根。きっと私たちフランス人にとっての蕪のように庶民的なものだと思うけれど、大根は好きです。京都の【祇園さゝ木】で食べた大根は、完璧だった。大根は目立たない、控えめな存在の野菜だけれど、だからこそ土地の味がする。土地の味とは“京都で食べている”、と実感できるということ。東京で食べるとまた違う味がする、ということなんです。そして、そのテロワールを活かすには、食材そして料理人双方が必要です。【祇園さゝ木】で食べた大根の料理は、完璧に取られただし、ビーフと一緒に出てきた白みそのソースも素晴らしかったのだけれど、それだけでは成り立たない。どう野菜が育てられたのか、それをどう料理するのか、どう盛り付けするのか。そう、すべては野菜を育てた人、そしてそれを提供する料理人を含めたコンビネーションが大切です。
それはもちろん感じます。フランスと日本が近くなっている。私たちフランス人は和食を、そして日本人はフランス料理を知ろうとしている。その歩み寄りで近づいていく進化がもっとも面白い。若い日本人の料理人がフランスに来て、フランスでも日本でもない料理がつくられている。技術と食材が調和し、ハーモニーを生み出す。
――いまや、日本とフランスだけではなく、世界中でジャンルを超えた食のグローバル化が進んでいることについてどう思われますか?それも同じことです。国を超えて、相互の好奇心が料理のレベルを高めている。お互いがお互いの料理に興味を持ち、料理の個性が生まれてくる。私は料理人個人の食材の組み合わせや発想に興味を惹かれます。グローバル化は進化しているということ。新しいものが生まれる、ポジティブなできごとだと思います。
(C)Pierre Monetta
【アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ】の店内
シンプルで、自分のレストランとは異なった魅力があるところ。または、自分のレストランとは異なった傾向があるところ、とも言えるでしょうか。パリでは私が選んだ好きなレストランのガイドブック『J’aime Paris アラン・デュカスのおいしいパリ』(朝日新聞出版)もあるんですよ。
――デュカス氏がオススメする東京のレストランはどこですか?様々なカテゴリーがあるから東京は選ぶのが難しいですね。そうですね、【オテル・ドゥ・ミクニ】は好きです。古典的な基礎がしっかりありながら、コンテンポラリーな料理。フランスに行かなくても、フランスらしい料理が食べられますね。
アラン・デュカス氏がプロデュースする東京のお店撮影/角田進(ポートレート) 取材/山路美佐(ヒトサラ編集部)
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