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伝説の樽生ビールが味わえるお店、神保町の老舗ビアホール【ランチョン】

日本人が大好きなビール。最近では健康志向のビールやアルコール度数の高いストロング系など多彩な商品が充実している。そんな中、これまで一般販売してこなかった幻の樽生をご存じだろうか。東京・神田神保町の老舗洋食店で噂の樽生ビールの魅力に迫った。

伝説の樽生ビールが味わえるお店、神保町の老舗ビアホール【ランチョン】

作り置きはしない、注文を受けてから手作りが基本

 創業明治42(1909)年。世界有数の古書店街として知られる神田神保町にある「ランチョン」は、“美味しいビールが飲める洋食屋”として愛されてきた。

    具たっぷりのホワイトソースがかかるふわとろのオムレツ(1,000円)

    具たっぷりのホワイトソースがかかるふわとろのオムレツ(1,000円)

 赤レンガ仕立ての内壁にところどころレトロなポスターを配して、どこか懐かしい昭和の洋食屋さんの雰囲気に包まれている。そんな上品でモダンな香りが漂う店内でいただく洋食は、創業以来受け継がれた伝統の味。
「作り置きはしないで注文を受けてから手作りするのが基本です。いつお越しになっても“変わらぬ美味しさ”を味わっていただくために、昔ながらのスタイルを引き継いでいます」と、4代目店主の鈴木寛さん。
なかでも濃厚なバターと卵で旨味を包み込んだ「オムレツ」はビールのおともにおすすめ。シワひとつない滑らかなオムレツに、コクがあってまろやかなホワイトソースが添えられる。スプーンを入れるととろりと溶け出すところは見せ場。テンションアップの瞬間だ。
 ほかにもお皿からはみ出るほどの大きな天然エビをサクサクの衣で揚げた「エビフライ」(2600円)、じっくり煮込んだデミグラスソースを絡めていただく肉汁たっぷりの「自慢メンチカツ」(1100円)など、ボリューム満点のメニューがそろう。

王道にとらわれない新しい味を求めて

 また、洋食の王道メニューの枠にとらわれることなく、新しいチャレンジも続けている。作家の吉田健一氏から「話しながら手づかみで食べられるものはないものか」と、リクエストに応えて考案したという「ビーフパイ」(1400円)はランチョンのオリジナルメニュー。読書をしながら、歓談しながら食すなどシーンはさまざま。気分に応じて味わいたい。

    全110席の開放感溢れる明るい店内から歴史ある本の街が見渡せる

    全110席の開放感溢れる明るい店内から歴史ある本の街が見渡せる

 ランチメニューは2種類。お肉とお魚料理の盛り合わせの「日替わりランチ」(1000円)と、150gのサーロインステーキをメインとした「ステーキランチ」(1550円)が15時まで提供されている。小さなサイズのランチビール(460円)とともにいただきたい。
 常連客の多くは、買ってきたばかりの古書をめくりながら、洋食を口に運び、昼間っからビールで喉を潤す。なんともうらやましい至福の時間の過ごし方だ。

    ランチョン4代目・鈴木寛さんの職人技で、極上の泡の旨みとコクを堪能

    ランチョン4代目・鈴木寛さんの職人技で、極上の泡の旨みとコクを堪能

 ランチョンのもうひとつの主役であるビールは、複数の銘柄を用意。そのなかでビール愛好家を魅了し続けているレギュラービールが、幻といわれるアサヒ生ビール樽詰、通称マルエフと呼ばれるビールだ。マルエフの魅力について鈴木さんが解説する。
「爽やかなキレだけでなく、深みのあるコクも感じられる。ちゃんとしたビールの味わいを楽しめます。何杯飲んでも飽きがこないのも魅力ですね。いろんなビールがあるけど、ダントツにマルエフがうまいと思います」。
 マルエフは業務用樽詰のみの取り扱いで、一部のこだわりのある飲食店に愛されてきた。東京都内でも味わえるのはわずか数店(5月15日から期間限定で缶商品が発売)。ハイクオリティのテイストはもちろんのこと、希少性も手伝って、噂が伝説となって広がり、幻のビールを求める愛好家が増加している。ランチョンには、マルエフを目当てに訪れる人が後を絶たない。

アサヒ生ビールをおいしくする3つのこだわり

 そんな幻のビールをよりおいしく飲んでもらうためにお客様に対して3つのこだわりがある。

  • ドイツでは常識的な設備だという珍しい機械を発見。グラスの内側に冷水をかけて水の膜をはる専用マシーン(写真左)。

    ドイツでは常識的な設備だという珍しい機械を発見。グラスの内側に冷水をかけて水の膜をはる専用マシーン(写真左)。

  • サーバーの注ぎ方も一工夫。最初は乱暴に注いでビールのガスを抜き、次の注ぎで泡を仕上げる(写真右)

    サーバーの注ぎ方も一工夫。最初は乱暴に注いでビールのガスを抜き、次の注ぎで泡を仕上げる(写真右)

「まずグラスとディスペンサーを徹底的に洗浄することです。当然、料理の皿とグラス類を一緒に洗うなんて、グラスに油がついてしまうのでありえません。次に泡のフタ。ビールと空気が直接触れると酸化、つまり劣化してしまうので、こんもりとした泡はうちの命です。最後に毎日ビールの温度を変えることです。うちはキンキンに冷えたビールは提供していません。冷やしすぎると、ビール本来の味が感じられないからです。気温によって7~10℃に調整して、テーブルに運ぶ時にはプラス2℃になることを目安にビールを注いでいます」。
 ビールを注ぐことができるのは歴代店主だけ。店主自らビールの質を保っているからこそ、いつ訪れても安定したおいしさが楽しめる。
 昔ながらのこだわりの洋食に、おいしさを追求したアサヒの生ビール。ランチョンを味わうと、ちょっと自慢気に大切な人を連れて行きたくなる。

【ランチョン】

電話:03-3233-0866
住所:東京都千代田区神田神保町1-6
アクセス:東京メトロ・都営地下鉄神保町駅から徒歩1分
営業:月~金 11:30-21:30(LO 21:00)、土 11:30-20:30
定休:日、祝

【取材協力】 アサヒビール株式会社

この記事を作った人

取材・文/内山賢一 写真/佐藤顕子

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