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更新日:2018.11.16旅グルメ 連載

“ワインを旅する”新しいスタイルを、聖地ボルドー・メドックから①

ワイナリーを訪ねて造り手と直にふれあい、地元の郷土料理とワインのペアリングを楽しみ、ぶどう畑の只中のシャトーで眠る──そんな「ワイン・ツーリズム」は、ワイン好きにとって最高に贅沢な休暇の過ごし方。一度産地の風景の中に身を置けば、あなたはどこにいてもグラスの中で旅をすることができる。世界最高峰の銘醸地フランス・ボルドーのメドックで、ワイン・ツーリズムの醍醐味を体験しよう。

 “ワインを旅する”新しいスタイルを、聖地ボルドー・メドックから①

さまざまな「トリック」を楽しみながらワインの知識を深める。

シャトー・ラモット・ベルジェロン(オーメドック地区)

    1773年に博学の学者がこのエステートを手に入れたことから、シャトーとワインの歴史が始まった。

    1773年に博学の学者がこのエステートを手に入れたことから、シャトーとワインの歴史が始まった。

ワインと観光は蜜月の間柄

    映画のスクリーンに見立てた窓からぶどうを育むテロワールを眺める。

    映画のスクリーンに見立てた窓からぶどうを育むテロワールを眺める。

 欧米では週末やバカンスにワイン産地を旅するのはとてもポピュラーなこと。ぶどう畑が広がる田園地帯のドライブ、歴史あるシャトーや名建築家の建てたアーティスティックな醸造所、シャトー・ホテルのテラスでグラスを傾けるひととき‥‥。ワインと旅はもともと相性が良いのだ。

 世界最高峰の銘醸地と称されるボルドーでも10年ほど前からワイン・ツーリズムへの取り組みが盛んになっている。ワイナリーにとってワイン・ツーリズムは、自分たちのワインをよく知ってもらい、愛着を持ってもらうチャンスなのだ。オー・メドック地区にあるシャトー・ラモット・ベルジュロンは先端的な取り組みで訪れる者を楽しませてくれる。

    収穫を終えたばかりのぶどう畑。砂に小石の混じった土壌を踏みしめて歩くのも掛け替えのない体験になる。

    収穫を終えたばかりのぶどう畑。砂に小石の混じった土壌を踏みしめて歩くのも掛け替えのない体験になる。

熟成庫でプロジェクションマッピング?

 ワイナリー訪問ツアーのプログラムは19世紀に建てられたシャトーの迎賓室からスタートする。壁に掛けられた鏡に突然、ホログラムが浮かび上がる。歓迎の言葉を述べるのは、創業者で科学者のジャック・ド・ベルジュロン博士だ。

 シャトーの裏に広がる広大な庭を通ってぶどう畑に向かう。畑に隅に立つ小屋には映画館のスクリーン様に窓が開けられ、オー・メドックの豊かなテロワール(ぶどうが育つ環境のこと)を劇場的に望むことができる仕組みだ。

  • 試飲室に立つローレン・メリー氏。彼の指揮下、シャトーはワイン・ツーリズムに注力している。

    試飲室に立つローレン・メリー氏。彼の指揮下、シャトーはワイン・ツーリズムに注力している。

  • 異なるヴィンテージ(収穫年)のワインの色合いを比べる。

    異なるヴィンテージ(収穫年)のワインの色合いを比べる。

 ツアーはシェと呼ばれるワイン貯蔵庫へと続く。整然と並べられたオーク樽の前のガラスにプロジェクションマッピングの映像が流れる。支配人のローレン・メリー氏と有名醸造コンサルタントのユベール・ド・ブアール氏(シャトー・アンジェリュスのオーナー、同シャトーをサンテミリオンの格付けの最上位に押し上げた快挙で知られる)が、ボルドーのワイン造りの「秘術」とも言えるアッサンブラージュ(ブレンド)についておもしろおかしく解説したものだ。

    プロジェクションマッピングでアッサンブラージュについて説明する二人。

    プロジェクションマッピングでアッサンブラージュについて説明する二人。

 宇宙船を思わせる試飲室でのテイスティングでツアーは終了する。グラスをぐるぐると回し、目を閉じてアロマを嗅げば、気分はソムリエだ。と、ここまでが基本的なプログラム「ディスカヴァリー・ツアー」(8ユーロ、所用45分)の内容。これに、簡単なテイスティング教室が付いたもの、5つのヴィンテージ(収穫年)の比較試飲ができるもの、ガーデンでのランチや昼寝(!)が付いたものなど多様なプログラムが用意されている。いずれもワインの知識がない人でも、また下戸の人や子供たちでさえ大いに楽しめる工夫が凝らされている。

予約をすれば、貴族気分のランチも可能

    クラシックとモダンが融合したインテリア。ランチやディナーはここで。

    クラシックとモダンが融合したインテリア。ランチやディナーはここで。

 最も贅沢なプランはシャトーのダイニングルームで食事をすることだろう。

 アーシーな風味があり、クラシックなメドック・ワインの面影があるこのシャトーのワイン。料理(ケータリング)はもちろんワインとの相性を意識したものが出される。取材時のシェフは妻が日本人とのことで、味噌をソースに使うなど、和食からインスピレーションを受けた料理もあり、それがまたワインと良く合っていて面白かった。10人以上が集まれば催行が可能だ(カクテル・ランチ/ディナー:65ユーロ〜、着席ディナー:125ユーロ〜)。

  • シャトー・ラモット・ベルジュロン2012。カシスとハーブの香りに土っぽいトーンが複雑味を与える。

    シャトー・ラモット・ベルジュロン2012。カシスとハーブの香りに土っぽいトーンが複雑味を与える。

  • ランチ・メニューから、子羊のソテ。メドックは子羊の産地としても知られる。

    ランチ・メニューから、子羊のソテ。メドックは子羊の産地としても知られる。

 2回目は、タブレット端末が案内してくれるシャトー訪問についてご紹介しよう。

メドック豆知識:メドックの8つのアペラシオンとは

 アペラシオン(Appellation)とは、フランスのワイン法に基づいたワインの産地を示す呼称のこと。世界有数のワイン産地ボルドー。ガロンヌ川とドルドーニュ川が交わってジロンド川と名前を変える辺り、ボルドー市の北から河口までを占めるメドック地方は「5大シャトー」始め、名だたる有名シャトーがひしめく。メドックはまず南北にざっくり2つに分かれる。南半分がオー・メドック、北半分がバ・メドックだ。オー・メドック地区には6つの村名を冠した有力産地──南からマルゴー、ムーリス、リストラック・メドック、サン・ジュリアン、ポイヤック、サン・テステフ──がある。ワインは南のマルゴーは優美で女性的、北のサン・テステフは厳格で男性的と言われる。

動画で訪ねる、『メドックで巡るワインの旅』 

写真・動画制作/永田忠彦 取材・文/浮田泰幸

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