名店が教える「スペシャリテの秘密」|【飄香】の『山城口水鶏 四川名物よだれ鶏』
一度食べたら忘れられない。何度食べても驚くほどおいしい。そう思わせるあの店のスペシャリテには、きっとつくり方に秘密があるはず。そうだ。その秘密、直接シェフに聞いてみよう。
丸鶏を丁寧に下ごしらえし、
辣油が決め手のたれで味わう
今でこそ『よだれ鶏』といえば、四川を代表する一品として名高い料理だが、【飄香】がオープンした15年前には、日本でまだ知る人の少ない品だった。オーナーシェフの井桁良樹氏が初めてこの料理に出合ったのは、本場の四川料理を学びたいと、四川に向かう途上の上海の地でのこと。それ以前には味わったことのない麻(しびれ)と辣(辛み)のバランスに衝撃を受けたという。
丸鶏は大分冠地鶏を使用。烏骨鶏との掛け合わせで、締まった肉質が魅力。左下の山クラゲとは茎レタスを乾燥させたもの。しっとりとした肉を際立たせるコリコリとした食感。下味を鶏スープで中までいれて、かけだれで、香りと辛みをまとわせる。
以後、本場四川でも何回となくよだれ鶏を食べ、「私がこの料理を日本に広めるんだ」と、意気込んで帰国したという。すっかりポピュラーになった今でも、【飄香】のそれが圧倒的な支持を受けているのは、丸鶏を使った丁寧な下ごしらえと、自家製辣油がベースの、香りも旨みも強いたれのおいしさに他ならない。
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辛味よりも香りを立たせた自家製辣油がこの味の決め手。大豆油に、クローブ(丁子)、草果、良姜、コリアンダー、ディルシード、レモングラス、ローリエ、草果、フェンネル、排草、ニッキ、砂仁、カルダモン、甘草、陳皮、バンウコン、花椒、八角各少量をいれて1時間程度じっくりと香りを出す。最後は熱く熱して、粉砕した後に湿らせた朝天唐辛子(大豆油6リットルに対して1kg)に3回に分けて注ぎ、その都度混ぜる。まず280℃、次に200℃、最後に130℃とだんだん温度を下げていくのがポイント。かけだれはこの辣油に玉ねぎ、生姜1かけ、長ねぎ10cm、醤油、酒で味をととのえたもの。
烏骨鶏と掛け合わせた大分の地鶏を、旨みが逃げないように、鶏のスープでゆで、余熱でロゼに仕上げ、さらに調味した鶏スープに漬ける。これがジューシーに鶏肉を仕上げるコツ。また、試行錯誤の末に行きついた、20もの香辛料を駆使した辣油の香り高さは、類を見ないほどだ。それをベースにした滋味深いたれをたっぷりかけて、よだれ鶏が完成す
る。手間暇かけた至高の味わいだ。

井桁良樹さん
「鮮度も香りも違うので、香辛料はすべて中国本土で購入しています。鶏肉も日本中を探しました」
『よだれ鶏』のつくり方
使う食材は至ってシンプル。素材の力をテクニックで引き出す
使う材料はたったこれだけ。シンプルだけに鶏肉にはこだわる。皮が薄く味の濃い肉質の鶏を丸ごと使用。かけだれは十数種のスパイスを使った辣油の香りが命。
材料(6人分)
・丸鶏 1羽
・鶏スープ 適量
・山クラゲ 適量
〈つけだれスープ〉※6人分
・鶏スープ 2ℓ
・生姜 1かけ
・ねぎ 1本
・山椒 20粒
・塩 30g
〈かけだれ〉*2人前
・醤油 20ml
・砂糖 35g
・黒酢 40ml
・鶏スープ 100ml
・辣油 100ml
・花椒 適量
つくり方
❶ 寸胴鍋に、たっぷりの鶏スープを沸かし、その中に丸鶏を入れ、弱めの中火で20分ほどゆで、火を止めてふたをして40分おく。取り出して、いったん氷水で冷やして、火が入るのを止める。
❷ ❶をもも、手羽、胸肉の部位にさばき、つけだれスープの材料をすべて合わせたものに漬ける。
❸ 山クラゲは水に戻して筋を取り、ゆでて食べやすい長さに切る。塩(分量外)と胡麻油(分量外)であえる。
❹ ❷を1.5cm厚さに切り分ける。
❺ 器に❸を敷き、❹を盛り、かけだれの材料をすべて合わせたたれをたっぷりかける。
『よだれ鶏』の3つのポイント
Point ①丸鶏を鶏スープでゆで、余熱で火を入れる
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丸鶏を鶏のスープで20分ほどゆで、火を止め、ふたをして40分ほど余熱で火を入れる。骨のまわりが赤いくらいの火入れがベスト。
つけだれスープの中にさばいた鶏を漬ける
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丸鶏を、もも、手羽、胸肉とさばき、鶏スープに香味野菜と塩で調味したつけだれに1時間以上漬け、じっくりと味を含ませる。
香辛料の風味を移した油で辣油をつくる
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24種の生薬と香味野菜の風味と香りをじっくり油に移し、その油で唐辛子の辛味を出した自家製辣油の香りがかけだれの肝。
鶏スープの材料(つくりやすい分量)
老鶏 2.5羽
水 15ℓ
ねぎ 3本
生姜 1かけ
材料を鍋に入れ、ぽこぽこ沸かす程度の火加減で、6時間ほど煮てこす。
いかがでしたでしょうか。【飄香】のよだれ鶏を、ぜひご自宅で再現してみてください。
教えてくれたのは 井桁良樹さん
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上海で1年、四川で1年修業したのち、2005年に代々木上原に自身の店をオープン。2012年に麻布十番に本店を移し、四川料理の継承者にとの思いから伝統四川料理の「松雲門(ソンユンモン)派」に入門。現在は六本木ヒルズ店、銀座三越店の計3店を経営
この記事を作った人
撮影/久間昌史 取材・文/小松宏子
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