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更新日:2019.11.08食トレンド

日本では36年ぶり!M.O.F受章料理人【トゥールダルジャン 東京】シェフ、ルノー・オージエ氏が語る受章までの道のり

先日、『内閣総理大臣夫妻主催晩餐会』が行われ、話題になったホテルニューオータニ東京。そのホテルにある、【トゥールダルジャン東京】のエグゼクティブシェフ、ルノー・オージエ氏が、日本在住シェフとしては37年ぶりにM.O.F.(フランス国家最優秀職人章)受章という快挙を成し遂げたことでも今年話題となった。二度目の挑戦で受章を叶えたオージエ氏が想像を超える難易度の高いM,O.F.実施試験の裏側と、そして受章したからこそ思うこれからを、じっくり語ってくれた。

伝統を守りながらも、華やかで繊細な料理を生み出すルノー・オージエ氏

1981年生 38歳 。 フランス、グルノーブル出身。『オテル ドゥ フランス』、『ミッシェル トラマ』『ルイ・キャーンズ』『レクイエール』などで研鑽を積んだ後、 2013年春に【トゥールダルジャン東京】のエグゼクティブシェフに就任。

2回目の挑戦で1%の難関突破の快挙

――M.O.F.受章おめでとうございます。受章されたお気持ちは?

 2日にわたる第四次試験の最終日、試験後の発表でした。受章者はアルファベット順に名前を呼ばれるので、最初に呼ばれなかったらダメだということが明白。名前を呼ばれたときには喜びが爆発しました。

――M.O.F.は料理人にとってどのように感じられる章なのですか?

 M.O.F.は182種類の職業から選ばれます。ホテル・レストラン部門では料理人、サービス、ソムリエ、レセプショニストなどが対象で、国籍は問われず、23歳以上が条件。私はM.O.F.を持つシェフとの仕事を通じ、心の奥底にいつかそこに到達しなければならないという意識がありました。今、栄誉ある章をいただいて、ここがゴールではなく、さらにこのタイトルに見合う仕事をし、価値を与えることが仕事だと思っています。

――受章はとても難しいと思います。今回は2回目の挑戦でした。

 753人のなかで今回受章ができたのは7人。つまり1%の狭き門だといえます。試験は20人のM .O .F.を持つシェフたちがじっと見ているなかで行われます。2週間前にテーマを与えられ、各自そのテーマに沿ったレシピを考案し、試験でつくるのですが時間調整がとても難しい。

私は1週間をレシピづくりにあて、1週間は実践して時間調整に集中しました。試験は魚料理に4時間30分、肉料理に5時間、デザートに5時間30分与えられ、同時進行で合計5時間30分と時間が決められているのですが、ぴったりと終わらせなければならないのです。1分早くても遅くてもダメ。しかも、1台のオーブンを3人で共有、アシスタントは調理師学校から選ばれた素人同然の2名。料理は温かいもの、冷たいものがあり、それぞれ適温で食べてもらわなければならない……。だから、1回目の挑戦はどんなものか体験し、2回目で受章を目指すくらいの余裕がないと難しいと思います。

    厨房でのチーム力を大切にするシェフ、ルノー・オージエ氏

――聞くだけで気が遠くなります。お題も当然難しいわけですよね。

 はい。例えば〝魚料理のソースはオマールで〞と指示があるのですが、使っていいオマールは1尾。そのみそを使って8人分250gのソースをつくらなければならない。デザートのテーマの一つ『パイナップルを含む生のトロピカルフルーツをつかったゼリー』も難題。パイナップルの酵素でゼラチンが固まらないので、どうするかという知識が必要です。

――知識、技術、柔軟性すべてにおいて最高のレベルが要求される。受章者が賞賛される理由ですね。

 今回の挑戦は東京店の総支配人、クリスチャン・ボラー氏が背中を押してくれて実現したものです。テーマ食材が野ウサギや仔牛の脳みそなど日本で手に入りにくいものもあり、パリ本店に協力をしてもらってパリで準備しました。途中、日本在住シェフとして初めてM.O.F.を受章されたジャック・ボリー氏も試食してくれました。自分のいない間は日本チームが厨房を守ってくれたことも感謝しています。

――当日、材料を運ぶトラックも2台用意して準備されたとか。

 オーナーのアンドレ・テライユ氏が、万が一の渋滞や、車が故障したりした場合にと用意してくれました。準備中、朝早くから夜遅くまでスタッフもついてくれました。まさにチーム・トゥールダルジャンで取ったM.O.F.なのです。

――【トゥールダルジャン 東京】で働いたのは何がきっかけでしたか?

 日本にバカンスに来ているときに総支配人のボラーさんと出会ったのがきっかけです。2013年春にシェフになりました。

過去から未来へ。約400年続く歴史の1ページを綴れる幸せ

    『トゥールダルジャン オリジナルブイヤベース』

――その前はモナコ【ルイ・キャーンズ】でも働いていらっしゃいました。影響を受けたシェフはいますか?

 それぞれ違うことを教えてもらいました。最初の【オテル ドゥフランス】で基礎を築きました。ミッシェル・トラマ氏からは家族的な温かさを、デュカス氏からはビジネスセンスを、フィリップ・ミル氏からは社会的な視点を学びました。いろんな教えが自分のなかで熟成しています。

――【トゥールダルジャン】400年の歴史。それを守りながら、今の時代性をどう融合させていますか?

 【トゥールダルジャン】は私にとって大きな本のような存在です。ここにかかわった人がそれぞれのページを書き足していく。皆で書き足していくことで美しい本ができあがっていくのだと思います。私のページには、日本だからこその四季や、現代の人の好みを反映させていく。5年前の東京店30周年のときは、スペシャリテ、『幼鴨のロースト マルコポーロ』のソースを少し変えました。【トゥールダルジャン】という大きな幹から延びていく枝が変化のイメージです。時代にあわせたライトさ、華やかさは意識的に考えます。

――これからの目標は?

 私が今後やらなければいけないのは、フランス料理のアンバサダーになること。フランス国旗を背負い、日本という地で伝えるのもそうですし、若い人が、私を超えて未来に向かって進んでいけるように伝えることもそう。同じ日はないですから、毎日が挑戦なのは変わりません。

【トゥールダルジャン 東京】

  • 住所:東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ 東京 ロビィ階
    電話:03-3239-3111
    営業:17:30~(最終入店 .20:30)
    定休日:月曜日

 
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この記事を作った人

撮影/石井宏明 取材・文/山路美佐(ヒトサラ副編集長)

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