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更新日:2017.06.19グルメラボ 連載

各地で名声を博した、あの美食店が東京へ from「ヒトサラSpecial」

今まで彼の地でしか味わうことのできなかったあの料理。そんな地方の名店の美味が楽しめる東京進出店をご紹介します。強度の美味と新たなる挑戦、その情熱を感じてみてください。

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【HAL YAMASHITA東京】

和食の可能性を世界に伝える、「新和食」の先駆

 先駆者となるには勇気が必要だろう。ましてや長い伝統に培われた日本料理の世界で、新しいことに挑むには相応の逆風が吹く。だからこそ、それに耐え得る覚悟が必要なのだ。
 自らのスタイルに「新和食」という言葉を掲げ、今や世界が知る【HAL YAMASHITA東京】山下春幸氏は勇気と覚悟を持って和食の新境地を開拓してきた料理人。原点は生まれ育った神戸にある。

    日本の心を料理に込める山下春幸エグゼクティブシェフ。新しい料理にも貪欲で、赤味噌のデミグラスに続き、最近は「米粉と擂り白胡麻でベシャメルを作っています」。ここに白出汁で炊いた野菜を合わせれば“和”が香るクリームシチューに。

 「神戸にいると日常がフュージョンで世界各国の料理が揃っていた」そんな街で氏が自身の店を開いたのは13年前。当時はまだ「ワイングラスで飲む日本酒にも世間では反発があった」と笑うが、「何より、海もあって山もある、食材に恵まれた土地であることは私にとって非常に大きかった」と言う。
 神戸時代から氏は食材にこだわり、生産者とも密に繋がってきた。それは今も同様。素材の持ち味を最大限、引き出し、魅力を真っ直ぐに伝える。それが氏の目指すところで、そのために今一度、和食を見詰め直し、あらゆる技法、調味料を駆使して再構築する。そうして広がる和食の可能性こそが氏の言う新和食なのだ。

  • 『瞬間スモークサーモンと貝柱のタルタル 土佐酢ジュレとキャビア』。仕上げにリンゴの木のスモークで香り付け

  • 『特選神戸牛の生雲丹巻き スモークアブリューガキャビアを添えて』。年間8万皿が出る、山下氏のスペシャリテ

  • 【HAL YAMASHITA】オリジナル日本酒は灘で特別吟醸した生もとづくりの1本。アルコール控えめで食中酒に最適

  • スタイリッシュな店内。和紙を使った壁など、和食に合う設えを細部までシェフ自らがこだわって演出した

 「古典落語と同じです。食材同士の取り合わせや器の使い方などは私流ですが、根本は和食。創作落語のように全く新しいことをしているわけじゃない。言ってしまえば、日常の食卓に味噌汁とハンバーグが並ぶこともある、家庭料理の究極型が私の料理かもしれません」
 先駆者は和食の多様性を発信する伝道師でもある。

【東京 青柳】

ひと品ひと品に込められた、一流の技が恍惚の味を生む

 小山裕久氏といえば、徳島にある明治時代創業の日本料理店【青柳】の3代目であり、言わずと知れた日本料理界の重鎮だ。和食の真髄を日本のみならず世界に広めてきた伝道師としても名を馳せ、とりわけフランスでの活躍は顕著。2004年にフランス共和国農事功労章シュヴァリエ、2010年には同じくオフィシエを日本人としては唯一受章するなど、絶大なる功績を残し、今なお日本料理の普及に尽力する料理人である。

    その確かな技術と食材使いで、斬新な日本料理を数多く生み出してきた小山氏。包丁使いに限らず、小山氏の一挙手一投足には一流の料理人の技と矜恃が込められている

 そんな小山氏が、ここ東京で【青柳】の看板を背負い、標榜するもの。それが、自分にしかつくれない、ここでしか味わえない日本料理の在り方だ。「包丁使いひとつで、違いを生み出せるのが真の料理人。ツマの大根だって、一流の料理人が切れば立派な刺身になる」。そんな確固たる信念を集約した料理に、名物の『鯛の淡々』がある。原型は故郷の郷土料理「鯛のあら炊き」。昆布出汁と酒だけで鯛の頭を炊き、味付けは僅かな白醤油のみを加えた料理だが、その味わいは感動的ですらある。

  • 試行錯誤すること約5年。苦心の末、完成した『鯛の淡々』は食材の持ち味を最大限に引き出した逸品

  • この日のお造りには、故郷から直送される鳴門の鯛のほか、大間のマグロ、アオリイカが供された

  • 『イカ このわた』は食材を見極め、1週間ほどかけて塩漬けに。『大根 唐墨』は得も言われぬ濃厚な旨みを凝縮

  • 杉の一枚板のカウンターなど、店主の小山氏が設計した店内は趣の異なる4つの個室からなる

 目の前に差し出された時に立ち上る香りは余りに芳醇で、口へ運べば力強くも上品な味わいと、鯛の旨みから引き出される酸の立った風味が食べ手を圧倒する。しかも、鯛の状態を見極め、数滴の白醤油と数秒の火入れの加減だけで、それを引き出すのである。一流の料理人の極意が込められた、まさに究極のひと皿。決して大げさではなく、この一品を味わうためだけに、【青柳】へ訪れる価値があると断言できる。

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ヒトサラ編集部

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