《座談会》訪日観光客向けの飲食店ビジネスのヒントが満載! 日本在住の外国人だからこそわかる、「日本の飲食店・飲食店サービスに求めること」(前編)
2024年の訪日観光客数は年間約3,687万人と過去最多、さらに2025年は4,000万人を見込んでおり、旅行消費額も過去最高の8兆1,395億円にまで達したいま、飲食店の訪日観光客の集客・対応は必要不可欠となりました。そこでグルメサイト「ヒトサラ」と訪日外国人向けサイト「SAVOR JAPAN」を運営する株式会社USENでは、日本在住の中国・台湾・韓国出身の方に「訪日観光客がどのように日本の飲食店を選び、予約し、利用しているのか」について、各国の特徴を踏まえてお話を伺いました。インバウンド需要を取り込むため、飲食店が準備しておくべき対策とは。
Topics
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初来日の際、どのように飲食店を探したのか
日本に住んでみて、飲食店の探し方は変わったのか
母国から来日した客をもてなす際の、レストランの選び方とは
訪日観光客に効果的だと思う集客方法とは
飲食店は事前に予約する派? ウォークイン派?
日本で飲食店を探す・予約をする際に「便利」「不便」と思うこと
飲食店で「キャンセル料」が取られることについて
事前予約の際にクレジットカード情報を登録する心理的ハードルについて
コロナ禍の規制がなくなり、徐々に回復していた訪日観光客数は、2024年には約3,687万人と過去最多、2023年通期の約2,507万人の47.1%増と大幅に上回りました。そんな中で、観光事業者や飲食店経営者の中には、「急激に外国人が増えて、どのような対策を取ればよいのかわからない」「訪日観光客の集客方法がわからない」「文化的な違いで、求められていること・求められていないことがわからない」などの声が上がっています。
出典:日本政府観光客(JNTO)
そこで、今回は動画配信サービス「U-NEXT」に所属する、中国・台湾・韓国出身の3名に集まっていただき、座談会を開催。日本へ初めて旅行した際に感じたこと、日本に住んでいるからこそ見えてくる日本と自国の違いをポイントに、さまざまな質問にお答えいただきました。
※各国の傾向と個人的な意見をもとにお話しいただいております。ご了承ください。
座談会 参加メンバー
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名前:Wynn Qi(ウィン チー)さん/ウィン
所属:株式会社U-NEXT CX本部所属
出身:中国
来日:2014年~
大学院在学中に結婚。その後パートナーが日本で就職することになり、ウィンさん自身も2014年に就職のため来日。
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名前:Tzuwei Lin(リン ズーウェイ)さん/リン
所属:株式会社U-NEXT 人事部所属
出身:台湾
来日:2017年~
日本のアイドルグループが好きで日本語を学びはじめたリンさん。大学生の頃に交換留学で日本に1年間留学。就職のため2017年に再び来日。
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名前:權 秀晶(クォン スジョン)さん/クォン
所属:株式会社U-NEXT IP事業所属
出身:韓国
来日:2019年~
日本に興味があり、来日前から日本語を学んでいたクォンさん。2019年に就職のため来日し、当初はホテル業に勤務。
訪日観光客の「飲食店の探し方」とは
――みなさんが初めて来日した際、どのように飲食店を探しましたか?
クォンさん (韓国)
初めて日本へ来たときは、「ガイドブック」で飲食店を探していました。高評価を得ているお店をインターネットで検索して、さらに詳しい情報を調べました。その時に気になったお店は、銀座にあるオムライスが有名な【喫茶you】。行列に並ぶ時間がなくてお店に入れなかったのが残念です。

リンさん (台湾)
私が日本に興味を持ち始めた当時、有名な「YouTuber」「インフルエンサー」「ブロガー」が日本を紹介しているコンテンツがたくさんありました。その中で、何人かが同じお店を紹介していて、クォンさんと同じように気になったお店をGoogleで検索して探していました。

ウィンさん (中国)
中国に住んでいた頃はあまり日本のことを知らなかったのですが、日本に就職してから同僚に飲食店検索サービスの「食べログ」を教えてもらいました。「食べログ」に掲載されているお店の中から、自宅や勤務先から近いお店を探し、口コミとランキングを参考に高評価を得ているお店に行っていました。その時の就職先が東京駅から近かったので、東京駅一番街の地下エリアにある「東京ラーメンストリート」に通っていましたね。
右から、ウィンさん(中国)、リンさん(台湾)、クォンさん(韓国)

リンさん (台湾)
いまは「食べログ」を使っています。

クォンさん (韓国)
わたしは「Google Map」と「食べログ」の口コミや評価を照らし合わせて、良い評価を得ているお店に行くようにしています。

ウィンさん (中国)
私もクォンさんと同じく、「Google Map」を使っています。高評価のお店を絞り込んでから、料理の種類を追加で選択します。検索結果がすぐに出てくるのでとても便利です。「食べログ」はアプリを開くのが面倒なのと、有料会員じゃないとランキングが見られないので、あまり利用しませんね。
「Google Map」で、調べたいエリアを検索⇒上部の高評価を選択⇒料理の種類から自分が食べたい料理ジャンルを選んでお店を探しているというウィンさん

ウィンさん (中国)
日本でしか食べられない、その土地でしか食べられない「ご当地メニュー」があるお店を選びますね。もしお店を紹介するだけで同行しない場合は、中国語や英語などの外国語対応が可能なお店や、中国語表記のメニューがあるお店を選んで紹介しています。
あと、中国では食事の際に“家族で集まること” “みんなで食べること” が重要という文化が根付いているので、高級レストランを探す際に、12歳以下は入れない年齢制限があるお店は避けるようにしています。

クォンさん (韓国)
日本でしか食べられないものや体験できないことを楽しんでもらいたいので、「和食店」を選びます。
先日、いとこが来日した際に日本酒が飲みたいと言っていたので、「居酒屋」に連れて行きました。日本らしい和の雰囲気が漂うお店で食事をできたことがうれしかったと言っていました。いま韓国では日本食や日本酒が人気なのですが、韓国で飲むことができる日本酒の種類が少ないので、「日本の地酒」はとても喜ばれます。ちなみに、韓国では『がんばれ父ちゃん』という日本酒が有名ですが、日本では見たことがないですね(笑)。
古民家風の造りや畳、座敷など、和の雰囲気が漂う店構えは訪日観光客に人気

リンさん (台湾)
「和牛」や「すき焼き」などお肉系の料理がとても喜ばれるので、そういうお店に連れて行くことが多いですね。
一方で、あまり行かないジャンルは「居酒屋」です。台湾人はあまりお酒を飲まないですし、食事の際にドリンクを合わせて飲む習慣がなくて……。飲むとしたら、お店で出されたお水を飲むくらい。しかも、台湾では飲食店に飲み物を持ち込むことができるので、飲食店でお金をかけて飲み物を注文するという感覚があまりありませんね(笑)。

ウィンさん (中国)
中国在住の友人から聞いたのですが、最近はお店を選ぶ際に中国のSNSを参考にしているそうです。まず、前提として中国ではFacebookやX、Googleはブロックされていて利用ができません。そのため、中国のSNS、例えば「WeChat(微信)」「Weibo(微博)」「RedNote(小紅書)」でお店の公式アカウントを立ち上げて、情報を拡散するのをおすすめします。
ちなみに、個人的な感覚ですが6〜7割の中国人が「RedNote」を使っている印象です。「RedNote」でアップされた写真やショート動画、口コミを多くの人が参考にしているようです。また、少しでもお得になるクーポンも効果的だと思います。
SAVOR JAPAN公式の「RedNote」で外国人の反応を見ていると、最近は「寿司」や「刺身」など生の海鮮料理、「オムレツ」などの卵料理、「手打ちうどん」が人気の傾向がある

リンさん (台湾)
インスタグラマーの動画を見ることが多いですね。あと、最近は「Threads」が人気で、コメントを参考に予約するかを決めているようです。
ただ、訪日観光客向けのお店はある程度予約サービスがあるにもかかわらず、人数の変更や子供の有無の選択など、個人対応がしにくいように感じます。お店に問い合わせメールを送ってもなかなか返信が来ないので、そこは不便だなと思います。

クォンさん (韓国)
韓国も最近はほとんどの人が「Instagram」、特に若い人ほど「Instagram」を使っている印象が強いですね。まぁ、「Instagram」か「YouTube」のどちらかかなって思います。
国別・SNSでお店を探す際に有効的な「#ハッシュタグ」は?
座談会に参加いただいた3名の方々に、各国で有効だと思うグルメハッシュタグを伺いしまいた。
中国と台湾では地名は漢字が有効で、韓国の場合はハングル文字が有効
飲食店の「予約方法」について
――日本では飲食店を予約する方が多いですが、みなさんの国では事前に予約をする方が多いですか?
クォンさん (韓国)
個人的には予約する派です。ただ韓国全体がそうなのかはわからなくて……。多分、半々ではないかと思います。

リンさん (台湾)
個人的にも、台湾全体としても、比較的予約をすると思います。

ウィンさん (中国)
中国はちょっと違っていて、大半が予約をしないですね。ウォークインというか、いまはやってるのは「整理券」です。「整理券」を取って自分の順番が来るまでどこかで時間をつぶし、番号を呼ばれたら入る。行列に並ぶこともほぼしないです。もし予約をするとしたら、高級レストランくらいですかね。
ウィンさん(中国)

ウィンさん (中国)
旅行に行く国によりますね。旅行前に予約をしないと入れないお店かどうかを調べて、予約が必要であれば予約をします。

クォンさん (韓国)
海外に何度も行ったことがあるわけではないんですが、せっかく時間とお金を使って行くので絶対に予約しますね。

リンさん (台湾)
毎日どこに行くか、お昼は何を食べるか、夜は何を食べるかを事前に決めておいて、そこで予約することが多いですね。
リンさん(台湾)

リンさん (台湾)
日本ではお店のホームページか予約サイト経由で予約をするのですが、予約内容を簡単に変更できないところが不便だなと感じます。予約をしたお店に「予約内容を変更したい」とメールをしてもなかなか返事が来ないですし、お店の営業時間外に電話をしてもなかなかつながらない……。台湾では電話もつながりやすいですし、もし電話がつながらなかった場合、メールの返信が来るのですが、日本では全然メールの返事が来ないです。

クォンさん (韓国)
そうですね、日本だと電話でしか予約ができないお店が多くて、日本語が喋れれば問題ないですが、日本語を喋ることができない人からすると、結構難しいだろうなと思います。

ウィンさん (中国)
いま、主に使っているのが「Google Map」なんですけど、 “席を予約”という項目があるじゃないですか。そこに予約できるサイトが全部並んでいて、どれかを選べば予約ができます。中国だとアプリによりますが、みんな競合しているので、それぞれのアプリを立ち上げなければならない。だから一覧で予約サイトが出てくる「Google Map」が一番便利だなと思っています。
「Google Map」の“席を予約”をクリックすると、さまざまな予約サイトが並ぶ便利な機能

クォンさん (韓国)
韓国でも予約キャンセルに関してはキャンセルポリシーがあって、直前にキャンセルする場合はキャンセル料を取られるのが一般的です。まぁ、実際には請求しないお店もありますけど……。ただ、高級店や仕込みが大変なお店だと一般的にはキャンセル料を支払うことが多いですね。

リンさん (台湾)
台湾ではキャンセル料を取られる印象があまりないですね。ただ、お店からすると直前のキャンセルは嫌がられると思います。そもそも台湾の人って時間通りにお店に到着することが少なくて、30分、40分遅れることが多いんです。さすがに無断で遅刻はせず、事前に電話で遅れる連絡はします。ただ、台湾人が日本に旅行に来た場合、連絡手段がないので、それでキャンセル料を取られるのは受け入れにくいように感じます。

ウィンさん (中国)
正直、中国人はキャンセル料に対して抵抗があると思います。ちょうど来週中国に帰国する予定なので中国のレストランや遊園地を事前に予約しているのですが、どこにもキャンセル料の記載がないですね。事前に買ったクーポンも使わなかったら随時キャンセルできますし、予約をしていても無料でキャンセルできます。
日本でキャンセル料を支払った経験がないのでどのように請求されるかもわからないのですが、事前にカードでいくらか支払っていたら残りをカードで請求されるのですか? もし個人が確定されていなかったら、多くの人は支払わないような気がします。
例えば、みなさんが海外の予約サイトで日本のお店を予約する際、クレジットカードの登録が必要となると、心理的なハードルはどのくらいありますか?

リンさん (台湾)
やっぱりキャンセル料を取られるのってなんだか怖いというか気になるので、もし事前にクレジットカードの登録が必要であれば別のサイトを探すか、私のように日本にいる友人に電話での予約を頼むケースが多いかもしれません。

クォンさん (韓国)
必ず行きたいお店を事前に予約するのであれば、特にそこまで抵抗はないと思います。あと、韓国はクレジットカード社会なので、オンライン決済への抵抗はないですし、そんなに問題なさそうな気はします。

ウィンさん (中国)
中国ではクレジットカードの使用率があまり高くなくて、モバイル決済サービスの「WeChat Pay」や「Alipay」をメインで使っているので何とも言えないですね。
▼後編のTopics
・日本の飲食店で体験した「よかったこと」「感動したこと」
・日本の飲食店で体験した「困ったこと」「不満に思ったこと」
・「お通し」について
・「お冷」について
・メニュー表で「困ったこと」「改善してほしいこと」
・「人気の日本食」は?
・日本特有の食感・成分・食材で「好きなもの」「苦手なもの」
・「お座敷」「テーブル席」「掘りこたつ席」の座席タイプについて
・「べジタリアン」「ビーガン」「ハラール」で望むこと
この記事を作った人
取材・文/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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