《座談会》訪日観光客向けの飲食店ビジネスのヒントが満載! 日本在住の外国人だからこそわかる、「日本の飲食店・飲食店サービスに求めること」(後編)
飲食店がインバウンド需要を取りこぼさないために、何をすべきか――。グルメサイト「ヒトサラ」および訪日外国人向けサイト「SAVOR JAPAN」を運営する株式会社USENでは、日本在住の中国・台湾・韓国出身の方々に集まっていただき、「日本のメニュー表で困ったこと」や日本特有の文化「お通し」、「日本での食体験」や「食文化の違い」について、各国の特徴を踏まえてお話を伺いました。
Topics
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日本の飲食店で体験した「よかったこと」「感動したこと」
日本の飲食店で体験した「困ったこと」「不満に思ったこと」
「お通し」について
「お冷」について
メニュー表で「困ったこと」「改善してほしいこと」
「人気の日本食」は?
日本特有の食感・成分・食材で「好きなもの」「苦手なもの」
「お座敷」「テーブル席」「掘りこたつ席」の座席タイプについて
「べジタリアン」「ビーガン」「ハラール」で望むこと
前編では、日本での「飲食店の予約方法」、「お店の選び方」、「予約手数料に対する印象」などについてお伺いしました。後編では、日本の飲食店で体験した「よかったこと」や「不満に思ったこと」に加えて、日本特有の文化「お通し」に対して思うことや「メニュー表で困ったこと」などについてお話を伺います。
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名前:Wynn Qi(ウィン チー)さん/ウィン
所属:株式会社U-NEXT CX本部所属
出身:中国
来日:2014年~
大学院在学中に結婚。その後パートナーが日本で就職することになり、ウィンさん自身も2014年に就職のため来日。
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名前:Tzuwei Lin(リン ズーウェイ)さん/リン
所属:株式会社U-NEXT 人事部所属
出身:台湾
来日:2017年~
日本のアイドルグループが好きで日本語を学びはじめたリンさん。大学生の頃に交換留学で日本に1年間留学。就職のため2017年に再び来日。
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名前:權 秀晶(クォン スジョン)さん/クォン
所属:株式会社U-NEXT IP事業所属
出身:韓国
来日:2019年~
日本に興味があり、来日前から日本語を学んでいたクォンさん。2019年に就職のため来日し、当初はホテル業に勤務。
日本の飲食店で体験したこと
――日本の飲食店を訪れた際、「よかったこと」「感動したこと」はありますか?
クォンさん (韓国)
日本の飲食店は、どのお店に行っても接客はそこまで悪くない、という印象です。

リンさん (台湾)
台湾から友人が遊びに来たときに有名な牛タンのお店に行ったのですが、そのお店は観光客向けで、「店員さんが全員英語ペラペラ」だったんです。いままで英語でコミュニケーションをとれる機会がほとんどなかったので、料理の説明をしっかりしてもらえて、友人も楽しそうにしていました。

ウィンさん (中国)
中国と比べると、店員さんの笑顔と優しさが印象に残りますね。また、「食品の安全性」や「お店の清潔感」も非常に安心できます。料理の盛り付けも美しく、メニュー表の写真と同じレベルの料理が提供されるのは好印象です。
ほかにもサービス料が発生するような高級レストランで、スタッフの方が料理の説明を丁寧にしてくれたり、「おいしいですか?」「大丈夫ですか?」とこまめに声がけしてくれたのは、確かにお金はかかりますが、とても感動しました。
全員:いらないですね(笑)。
海外の方にとって、注文をしていないのに運ばれ、料金が発生する日本独自の文化「お通し」に対する理解は難しいとのこと

クォンさん (韓国)
韓国は(キムチやナムルなどの)お通しが無料で、量もたくさん出てくるので、少し抵抗を感じることがありますね。

ウィンさん (中国)
中国人は食事中に冷たい飲み物を飲む習慣がないので、「冬に冷たい水しか出てこない」のはちょっと気になります。いろんなサービスよりも“温かいお茶”が欲しいです(笑)。
あと、自分のスマートフォンで注文をする「モバイルオーダー」のお店に行ったのですが、お店にWi-Fiがなくて困ったこともありましたね。

ウィンさん (中国)
お酒に氷が入っていても違和感はないですが、氷が入ったいわゆる“お冷”と呼ばれる冷たい水が苦手だと思います。中国では、食前に緑茶や麦茶、ウーロン茶などの温かい飲み物を飲みながら談笑する習慣があるので、日本の飲食店でも「最初に温かいお茶」が出てくるとうれしいです。特に寿司店では、“寿司自体が冷たい”ので、温かい飲み物が出てくるととても喜ばれると思います。

リンさん (台湾)
冷たいというより、台湾では一般的に食事中にお酒を飲む習慣がなくて、食事とお酒を分けて楽しむ文化があります。もちろん、個人の好みや状況によって異なる場合もありますが、全体的な傾向としてそのような文化が見られますね。
中国では氷水を飲むがなく、ビールも常温で飲むのが一般的と言われている

リンさん (台湾)
私が気になっているのは、スタッフさんの対応ですかね。「外国人だとわかった途端に態度が変わる」ことが何度かあって、ほかの日本人の方には料理の説明をしているのに、私にはしてくれなかった……。言葉が通じないからなのか、他にどんな問題があるのかわからないですが、他の方と同じサービスを受けられないのはちょっと……、って思ってしまいます。

クォンさん (韓国)
韓国ではあまり失礼だと思わないので、抵抗はないですね。逆にちょっとせっかちな人が多いので、早く呼んでしまいたいくらいです(笑)。

ウィンさん (中国)
いま中国では、店員さんがいないお店が増えています。高級店や電子化が進んでいないお店には店員さんがいるのですが、2023年頃に上海に帰国した際、どのお店にも店員さんがいなくなっていたんです。さらに、上海以外でもそういう傾向が進んでいると聞きました。
店員さんがいないので、注文はタブレットやQRコードで行い、料理を提供するときだけ店員さんが運んでくれます。支払いもスマホ決済で、注文したときに自動で決済されるシステムになっていましたね。

クォンさん (韓国)
困るのは、「黒板に自筆でメニューが書かれているお店」ですかね。時々、読めない場合がありまして(笑)。
一方で、あってよかったと思うのは、最近増えている「モバイルオーダー」ですね。手書きではない分、読みやすいので外国人にとっては便利だなと思います。あと、日本語表記だけだったとしても、料理写真があればどんな料理かが予想できるので、写真も大切だと思いますね。

リンさん (台湾)
カタカナのメニューだと、何が書いてあるのかわからないことが多いです。あと、写真がない場合は、一つ一つGoogle検索をして調べたりしています。便利だなと思うのは、ファミリーレストランみたいにタブレットで注文できるところです。写真もあってわかりやすいですし、店員さんに話しかけなくて済みますしね。

ウィンさん (中国)
お二人がお話しした以外のことで思いつくのは、たまに外国語のメニューに載っているメニュー数が、日本語のメニュー表に載っている数より少ないこと。それに気づいたときから、「外国語メニューは要らないです」と断るようにしています。

ウィンさん (中国)
翻訳機能を使ったことはありますが、一般的なメニュー名ではなく、お店のオリジナルメニュー(例:チキンのかあさん煮)の場合は翻訳がうまくできなかったりしますね(笑)。
ウィンさん(中国)
「日本食」について、「日本との食文化の違い」について
――いろいろな日本食がある中で、特に人気の日本食ってありますか?
リンさん (台湾)
「和牛」ですね。日本旅行から帰ってくると、みんな「和牛を食べたよ!」と嬉しそうに話す方が多いです。日本の牛肉は台湾の牛肉と全然違います。みんな牛肉を食べるとしたら、アメリカ産か日本産の牛肉を食べますね。
訪日外国人を魅了している「和牛」。特に有名なのが「神戸牛」「松阪牛」「近江牛」。また、海外では“WAGYU”としてブランド化もされている

ウィンさん (中国)
中国でも「和牛」が1番人気ですね。あと、最近ブームになってるのは、「おまかせコース」。これ、中国でも英語表記になりますが、「OMAKASE」で通じるようになっています。中国にある高級日本料理店に行くと、OMAKASEならハズレがない、がっかりしないと人気ですね。

クォンさん (韓国)
韓国でも、実際に2023年くらいまで日本食だけでなく、韓国料理のお店でも「おまかせ」というネーミングでメニューを出していたお店が多かったですね。だいたいいいお値段でした(笑)。でも、2023年までですね。韓国は流行の流れが早くて……(笑)。

リンさん (台湾)
最近SNSでよく見かけるのは、観光地ならば「富士山」。初めて日本を訪れた人は絶対に行く!という方が多いですね。あと、冬になると新潟の「越後湯沢」にスキーやスノボ目的で行くことが多いです。
食べ物だと、飲食店というよりは「コンビニスイーツ」が人気で、SNSでも“絶対に食べなければいけないコンビニスイーツ”を紹介している方が多いですね。コンビニだとセブン-イレブンが一番人気だと思います。

クォンさん (韓国)
韓国と日本は近いので、何度か日本に来たことがある方が多くて、最近では日本で有名な観光地や大都市を避けて、あまり知られていない小さな町や小さな都市に行くことが若者の間では流行しています。エリアであれば、東京や大阪よりも、「大分」や「熊本」に行ってそこのご当地グルメを食べるのが最近のトレンドですね。
あと、ほかにも「ウイスキー」や「ハイボール」を飲む人が増えていて、日本のウイスキーへの注目度がとても高くなっていると思います。
クォンさん(韓国)

ウィンさん (中国)
冬に人気なのは、温かい食べ物の「ラーメン」や「すき焼き」ですね。あと、先月中国の友達が日本に来たのですが、どうやって行きたい場所や食べたいものを調べたかを聞いてみたら、「RedNote(小紅書)」でいま何が人気かというタブを調べると言っていました。
いま実際に検索をしてみたのですが、やはり「OMAKASE」が1番人気ですね。それ以外ですと、日本はアジアで最もミシュランガイドの星を獲得したお店が多いことは有名なので、「今年のミシュラン店のまとめ記事」などを見て、お店を調べて、それぞれのお店のホームページから予約していると思います。
英語翻訳された「ミシュランガイド東京2025」の記事を読み、予約する方が多いのだとか

ウィンさん (中国)
好きなのは、肉や魚を焼いたり揚げたりしたときの「かりかり」とした食感ですね。あと、とろろ芋などの「ねばねば」は、最初に食べたときは珍しくて驚きましたが、いまは大丈夫です。
苦手なものだと、意外と「日本の和菓子やデザートが甘すぎる」ところですね。あんこが入った和菓子や、小さいケーキは小さいのに甘すぎる、みたいな話は聞いたことがあります。ただ、中国のケーキより食感は滑らかなので、そこはポイントが高いですね。あと、日本で激辛といわれているお店でもあまり辛く感じないです。もっと辛くていいと思います。

クォンさん (韓国)
韓国人は 「もちもち」や「とろ~り」は苦手ではないという印象です。ただ、韓国人に向けて「とろ~り」や「もちもち」という食感を全面的に押し出して喜ばれるのか?と言われたら、そうではないような気がします。もし打ち出すとしたら、そういう“オノマトペ”みたいなものよりは、「いかに素材が健康的か」にフォーカスしているほうが韓国人には刺さると思います。

リンさん (台湾)
「とろ~り」や「もちもち」という食感って、中華系ではあまり見かけない気がします。なので、もしかしたらマイナスのイメージに捉える方がいるかもしれません。
一方で、新鮮な海鮮はみんな好きなので、「新鮮」とか「フレッシュ」はウケが良いかもしれないです。あと、台湾には揚げ物が多くて、どちらかというと揚げ物=不健康なイメージのほうが強いので、健康を意識している人には揚げ物は刺さらないかもしれません。
リンさん(台湾)

クォンさん (韓国)
昔は、韓国でもお座敷のお店が多かったのですが、「靴を脱ぐのが嫌」「靴箱に入れるのが面倒」と思う方が増えているようで、最近はお座敷のお店が少なくなっています。いまはどちらかというとテーブル席のほうが増えていますね。

リンさん (台湾)
台湾にはお座敷のお店自体がないので、靴を脱いで正座で食事をするという習慣がありません。なのでちょっと面倒に感じますね。あと、お座敷だとテーブルも低くて、食べにくく感じてしまいます。

ウィンさん (中国)
中国人はあまりお座敷に抵抗はないと思います。むしろ日本らしいスタイルとして楽しめるような気がします。
それよりも、カウンター席のほうが抵抗を感じます。中国では対面で食事をすることが多いので、シェフに向かって食べることに違和感がありますし、一緒に食事をしている相手と会話がしにくいと感じるかもしれません。ただ、寿司店のカウンターなら大丈夫だと思います。

クォンさん (韓国)
周囲にビーガンの方がいるので、お店を選ぶ際は配慮するようにしています。そういうときに選ぶのは、「海鮮のお店」「貝類が出るお店」ですね。ただ、お店側がどこまで対応すべきかと問われると、全体的な割合としては少ないので、例えば「肉抜きで提供できます」などのように、メニューに表記があればビーガンの方も選択ができますし、そうではない方とも一緒に食事が楽しめるのでよいのではと思います。

リンさん (台湾)
台湾は宗教的にビーガンの方が多くて、その方と一緒に食事をしようとお店を探したのですが、東京にはビーガンのお店が少ないと感じました。ビーガンと謳っているメニューでも、実は油がビーガンじゃないなど、完全にビーガンなのかわからないことがあったので、明確にメニューに記載したほうが良いと思いました。

ウィンさん (中国)
一部の少数民族は豚肉がNGですけど、基本的に中国人はみな肉料理が好きで、私の周りでは厳密なビーガンの方は少ないですね。ビーガンとはまた違うかもしれませんが、日本のお寺には精進料理があるじゃないですか。それなら日本らしい体験として食べたいなと思います。
前編・後編にわたってお届けした「日本の飲食店・飲食店サービスに求めること」はいかがでしたでしょうか。今回はアジア圏の中国・台湾・韓国の3名の方に座談会にご参加いただきお話を伺うことができました。同じアジア圏でも異なる点が多く、とても参考になったと思います。この座談会の内容が飲食店の方のお役に立てればと思っています。
▼前編のTopics
・初来日の際、どのように飲食店を探したのか
・日本に住んでみて、飲食店の探し方は変わったのか
・母国から来日した客をもてなす際のレストランの選び方
・訪日観光客に効果的だと思う集客方法とは
・飲食店は事前に予約する派? ウォークイン派?
・日本で飲食店を探す・予約をする際に「便利」「不便」と思うこと
・飲食店で「キャンセル料」が取られることについて
・事前予約の際にクレジットカード情報を登録する心理的ハードルについて
この記事を作った人
取材・文/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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