更新日:2017.06.19グルメラボ 連載
多彩なアプローチで追及する美味なるコースを堪能。千葉のトップレストランfrom「ヒトサラspecial」
クラシカルを貫くフレンチ、地場の食材を駆使したイタリアン、野菜をメインにした和食まで、千葉のトップレストランをご紹介します。
【フランス料理 ル・クール】
美味のために、手間は惜しまずフレンチの心意気を皿で表現
シンプルに美しいが、その実、骨太な心意気と丁寧な仕事がいくつも隠されている。【ル・クール】オーナーシェフ・石本省吾氏の料理から得た、率直な感想だ。例えば、この日に供したメインのひとつに、『テット・ド・ポー(豚の頭)』というフランス伝統料理のアレンジ版がある。本来は冷製で、シャルキュトリ(食肉加工品)の一種なのだが、氏はそこからさらにアルザスのリースリングなどで風味付けした豚肉ミンチを巻き込んで成型。これだけでも十分な手間だが、提供直前にはサッとソテーし、香ばしさも加味している。
『猪と牛蒡のパテ・アン・クルート』。この料理は2016年春、日本シャルキュトリ協会が主催する『パテ・アン・クルート世界選手権アジア大会』にも出品した、シェフのスペシャリテ。パイ生地には牛蒡茶も練り込み、香り豊かに
「手間をかけないと美味しくならない」のは当然で、「事前にいろいろと仕込みつつ、仕上げにも、手をかけて“出来立て感”を出す」。これが氏の身上なのだ。
料理のことを尋ねると、「シャルキュトリ、内臓、ジビエが僕は好きで、得意」と即答。嬉々として調理する様にも好感が持て、「僕の料理は素材の持ち味を引き出してから凝縮し、それを素材に戻してやるイメージ」とも。骨からもしっかり持ち味を引き出したいから肉も丸のまま仕入れることが多いのだと言う。
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『テット・ド・ポー』。タンや耳など食感も楽しく、トッピングにフォアグラ。千葉産野菜のグリルも添えた
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『鮎のヴィシソワーズ』。コンソメで煮た鮎ムースに、さらに稚鮎のペースト。ポテトのエスプーマで仕上げた
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一軒家のフレンチで、メインダイニングは2階に。落ち着いた空間で、ほぼフランスものというワインも充実
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2008年、千葉で独立した石本省吾シェフ。現在地に移ったのは2013年。変わらずフレンチの魅力を伝えている
「何から何まで一からつくっていますから」。微笑む石本氏。2013年の移転を機に個々の好みでコースが組み立てられるようプリフィクスを採用したのも、個人の嗜好を大切にする、フランスでは当然の食文化を見倣ったがため。千葉に【ル・クール】あり。そう思わせるに十分な魅力が、この一軒家には充ち満ちている。
【TRATTORIA ALBERO】
革新コースと、伝統コースで実証するイタリア料理の可能性
2005年に誕生して10年超、今や千葉を代表する存在にまで上り詰めた【トラットリア・アルベロ】だが、小山裕之シェフは「まだ道半ばです」とひと言。この店が評判を得たのはまず、和の食材を多用しつつも見事にイタリア料理を昇華させてきた、氏の手腕にある。
『お任せの前菜6種盛り合わせ』。イタリア郷土料理を揃え、パスタとメインが選べるプリフィクスコースより。この日は自家農園のトウモロコシを使った冷製ポタージュ、砂肝とフォアグラのリエット、メヒカリのエスカベッシュなど
地産地消を是とし、野菜は自家農園のほか、県内複数の生産者から直に仕入れ。魚介も肉も千葉県産が中心だ。コースのみを供す料理に相対するのはバイ・ザ・グラスが基本のワイン。ひと皿で一杯というマリアージュがもたらす感動を伝えてきた。道半ばとシェフは謙遜するが、「これからも“ソソる”料理を作り続けていきたい」。己の道を邁進する姿勢は不変なのだ。
その事実を端的に示すのが、数年前から取り組む自家製トスカーナパン。「ほんの少しの塩と、あとは小麦粉と水、天然酵母だけ」という素朴な味わいだが、現地では料理をもっと美味しく食べ、その皿を完結させるために欠かせない代物。練る行程に技術が必要で発酵にも時間がかかるため、1日にわずか2本ほどしかつくれないが、「自分らしさの出せるパン」だから取り組んでいる。昨今ではイタリアの伝統料理をアレンジせず揃えるプリフィクスコースも用意した。
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『美元豚のグリル 粒マスタード添え』。千葉が新たに開発した銘柄豚をシンプルに。付け合わせの野菜も新鮮
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なかなかお目にかかれないトスカーナパン。みっちりした仕上がりに技を実感。パスタソースとの相性も抜群
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最奥部の半個室は落ち着いた雰囲気で人気。ほかに、窓から陽光が差し込むテーブル席など、2つの空間がある
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2006年より腕を揮う小山裕之シェフ。師と仰ぐシェフの「カッコいいでなく、ソソる料理をつくれ」が座右の銘
「体裁は武骨だけど、手間はしっかりかけられ、そのことが食べ手にも伝わる。それが僕の“ソソる”料理」
和の食材を多用した革新的コースと伝統料理のコースが両輪となり、この店はさらに高みを目指す。
ヒトサラ編集部
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