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今、話題の“日本フレンチ”に行こう!(連載)/北海道【ロワゾー・パー・マツナガ】

今、日本のフランス料理がアツい。都心のみならず、地方都市にも世界を見て志高く自分の料理を作っている料理人がいる。第1回はフランスの名だたるレストランで活躍した料理人が北海道という地を選んで開店し、全国から人が集まる店となったレストランの魅力に迫る。

今、話題の“日本フレンチ”に行こう!(連載)/北海道【ロワゾー・パー・マツナガ】

CHEF'S EYE

本格的なフレンチレストランを地方にも作るという夢

    シェフの松永和之氏

    シェフの松永和之氏

 東京・南青山のレストラン【ラ・ロシェル南青山】で坂井宏行氏や石井義昭氏のもとで、7年半の修行をした後、渡仏した松永和之氏。フランスでは【ミシェル・トラマ】で肉部門のシェフ、【レジス・エ・ジャック・マルコン】で魚部門のシェフ、【ル・ヌヴィエム・アール】でスーシェフを任されるなど、名だたるレストランで活躍。そして帰国後、東京ではなく函館の地を選びレストランをオープンさせた。

「僕はパリではなく、ずっと地方で修行していたんです。そこで驚いたのがフランスには地方でも二ツ星、三ツ星のレストランが存在するんだということ。特に【レジス・エ・ジャック・マルコン】のあるサンボネ・ル・フロワ村は人口が僅か250人しかいないような小さな村。それなのに、昼夜合わせて約150席が毎日ほぼ満席になるんです。そんなレストランを日本でも作りたいと思い、妻の実家がある函館に店をオープンしました」。

    フォアグラを四季に合わせた素材と共に『フォアグラ・ア・ラ・ヴァニーユ 四季をあわせて…』

    フォアグラを四季に合わせた素材と共に『フォアグラ・ア・ラ・ヴァニーユ 四季をあわせて…』

 函館の地に店を構え、この地でしか味わえない新鮮な北海道の食材をふんだんに使う。さらにその土地の恵みの味だけに頼らず、フランス料理の基本でもあるソースに並々ならぬこだわりを持つのが松永流。見た目の繊細さに加え、芯のある料理でゲストの舌を驚かせている。

「最近はソースの少ないフランス料理が多くなってきました。でも僕は、フランス料理ならではの複雑な味を表現したい。だから一皿に2種、3種とソースを重ねます。ひとつで味わってもおいしいし、合わせてもおいしい。素材とソースの相乗効果を楽しんでほしいと思っています」とシェフの松永氏。

 例えばこのスペシャリテの一皿『フォアグラ・ア・ラ・ヴァニーユ 四季をあわせて…』。フォアグラのムースにバニラビーンズを加え、秋なら秋トリュフのソースとパースニップのソースを添える。冬は洋ナシ、春はイチゴ、夏はアプリコットや南高梅のジャムなど、季節ごとにソースを変えて供される。

「同じ一皿でもソースが変わるとこんなにも違うんだという驚きも感じてほしいんです。如何にソースでオリジナリティを出していくかが大切だと思っています」。

四季の色彩が彩る野菜が主役の料理

    フランスの香りを感じる『天然ブリ(函館近海産)の燻製 蕪とコンバヴァの香り』

    フランスの香りを感じる『天然ブリ(函館近海産)の燻製 蕪とコンバヴァの香り』

 ソースとともに食す、スッと芯の通った松永氏の料理は、野菜をたっぷりと使い、絵画のような美しい色彩にあふれているのが印象的だ。『天然ブリ(函館近海産)の燻製 蕪とコンバヴァの香り』は、さくらのチップで燻製にしたブリに蕪とラディッシュ、紅しぐれを合わせ、菊の花びらやワサビのような味のナスタチウムの葉を散らした彩りよい一皿に。仕上げにコンバヴァの皮を削り、エスニックな香り漂う逸品に仕上げた。

    目でも楽しめる『タルトタタン パイナップルのソルベを添えて…』

    目でも楽しめる『タルトタタン パイナップルのソルベを添えて…』

「フランスにいるときにもっとも感じたのが、その地、その場で採れたものを使うこと。季節を感じてその土地のものを使う重要性を教わりました。日本は特に四季がはっきりとしている。北海道の食材をなるべく使い、デザートに至るまで四季を明確に表現したいと思うようになりました」。

こだわりぬいたパンは、もう一つの名品!

    北海道産小麦「ゆめちから」で作ったパン

    北海道産小麦「ゆめちから」で作ったパン

 北海道の素材の力は、コースに登場するパンにも見て取れる。こだわりぬいた素材を使い毎朝レストランで焼くパンは、皮はパリパリ、中はもちもちで香りが高く、パン屋さんのパンよりもおいしいと評判だ。

「超強力小麦「ゆめちから」のほかに、「十勝ラ・リュンヌ」や十勝産全粒粉をブレンドして作っています。北海道の小麦の香りを存分に味わってほしいです」。

 バターも函館のトラピストバターをベースにもう一種類のバターと北海道産の塩をブレンドしたオリジナル。ひとつずつ食材を吟味する姿勢は料理を支えるパンひとつからも感じられるだろう。

非日常でありながらもリラックスして食事を楽しめるレストランに

    大切な時間をゆったりと過ごせる店内

    大切な時間をゆったりと過ごせる店内

 本格的な料理とともにファンを魅了しているのが、住宅街に佇む一軒家レストランという環境だ。額縁のように切り取られた窓からは庭が見え、季節の移ろいを感じさせてくれる。
「レストランは非日常ではあるけれど、心をほぐしてリラックスして料理を味わってほしいんです」という松永氏。個室もあるので未就学児の利用も可能だ。

 決して便利がいい場所にあるわけではないにもかかわらず、この店で食事を楽しもうと遠方から通うゲストも多いという。かつて、松永氏が感動したフランスの郊外のレストランのように、“この店を訪れるためだけに旅をする”客でにぎわう光景が現実となりつつある。

日本のテロワールをテーマにした
「ダイナーズクラブ フランス レストランウィーク 2017」が開催!

 松永氏はフォーカスシェフとして参加。函館産昆布と塩昆布、椎茸を使った料理などを提供する。「日常で気軽に使う昆布や椎茸が、フランス料理だとこんな風になるという驚きを与えたい。秋の北海道を堪能できる料理で、皆様をお待ちしています」。

電話:0138-84-1858
住所:北海道函館市柏木町4-5
アクセス:市電「柏木町」駅から徒歩5分、JR「函館」駅・函館空港から車で15分
営業時間:12:00~15:00(L.O.14:00)、18:00~23:00(L.O.21:00)
定休日:火曜、月曜のディナー、水曜のランチ

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この記事を作った人

取材・文/楠井祐介(フリーライター)

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