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今、話題の“日本フレンチ”に行こう!(連載)/ 東京【ナベノ-イズム】

今、注目のフレンチシェフ連載第3回は、【ジョエル・ロブション】のエグゼクティブ・シェフを勤めた渡辺雄一郎氏の【ナベノ-イズム】。「これぞフレンチ」という技法を使いつつも、浅草や両国にある老舗、名店の食材を用いる東京固有のフレンチは驚きに満ちあふれている。

今、話題の“日本フレンチ”に行こう!(連載)/ 東京【ナベノ-イズム】

CHEF'S EYE

日本の食材を大切にし、東京・駒形の地に根差した、江戸の香り漂うフレンチ

    シェフの渡辺雄一郎氏

    シェフの渡辺雄一郎氏

 料理上手な母の影響を受け、自身も料理好きになった渡辺雄一郎氏。大阪あべの辻調理師専門学校を卒業後、同フランス校に進学。リヨン【ラ・テラス】、東京【ル・マエストロ・ポール・ボキューズ】を経て恵比寿のシャトーレストラン【タイユヴァン・ロブション】へ。以降、21年間ロブション・グループに勤務し2004年からはエグゼクティブ・シェフとして活躍。2016年【ナベノ-イズム】を開業した。

    天然紅葉鯛、根セロリのピュレとソースアルベールを添えて

    天然紅葉鯛、根セロリのピュレとソースアルベールを添えて

「ある日、ロブション氏からレストランに大切なものは何だと思う? と質問されました。その答えは、“コンセプト・テーマカラー・ロケーション”。新しくお店を出すにあたり、日本人として日本の食材や四季、そして日本料理の定義を大切にしたいと強く思いました」。今も江戸の香りを残し、職人が住み、物作りが根付いている駒形の地に店ができたのも何かの縁だと語るシェフの渡辺氏。

「日本の駒形の風景をすべて取り入れたい。そこにフランスの母なる味でもあるバターを忍ばせる。バターはロブション氏の生まれ故郷の発酵バターを使っています」。

『天然紅葉鯛、根セロリのピュレとソースアルベールを添えて』は、そんなフランスと日本の良さをふんだん取り入れた一皿。トランペット茸の香りをまとった天然鯛に、マキシム・ド・パリのスペシャリテ、ソース・アルベールを純米酒とノイリー酒を融合させアレンジしたもの。添えられた茸、栗、銀杏にも日本の秋の豊かさを感じる。

五味を刺激する、驚きと楽しさに満ち溢れた料理

    浅草・駒形の老舗とのコラボレーション料理が前菜に

    浅草・駒形の老舗とのコラボレーション料理が前菜に

 まず、コースの始まりから驚きの連続だ。【ナベノ-イズム】の顔ともいうべき前菜。ここには【大心堂】の雷おこしや【種亀】最中の皮など浅草駒形らしさを感じさせる食材が使われる。続く一品は、【江戸蕎麦ほそ川】のそば粉を使ったそばがき。見た目は和なのに、バター、水とともにソース・エミュリュッショネの技法で炊き上げたフランス料理だ。

    朝挽きそば粉を使った『ソース・エミュリュッショネの技法で炊き上げたそばがき』

    朝挽きそば粉を使った『ソース・エミュリュッショネの技法で炊き上げたそばがき』

「せっかく駒形に来たんだから、その地の風土を取り入れたい。雷おこしは、フランスで例えるならヌガーやプラリネのようなもの。ここにバターやアンチョビ、青唐辛子を加える。このひと口に五味がすべて入り、舌のセンサーを刺激することからコースが始まるんです」。料理にはストーリーがあり、食べて楽しくないとだめだと語る渡辺氏。「最中の皮はいうなればタルト生地。そば粉はフランス・ブルターニュの名物、ガレットとしてもよく食べられています。新しく、人形焼きにリキュールなどを染み込ませ、フォアグラを合わせたものも作りました。これは、ババ・オ・ラム的な発想かな?」

    赤ワインとスパイスでコンポートしたイチジク

    赤ワインとスパイスでコンポートしたイチジク

 前菜では浅草・駒形という地を意識した独創的な料理が続くが、メインはぐっとフランス料理らしい皿に変わる。デザートも、スパイスをきかせた赤ワインでトロッと炊いた旬のイチジクを。下には、なめらかでコクのある白ゴマのクリームが添えられている。マルドン・ソルトがアクセントの、さっぱりとしたフルーティーな1皿目のデセール。一見オーソドックスなフランス料理に見えても、ゴマの風味が立ち上るなど、最後まで驚かされる。

この地ならではのフランス料理店に!

    夜景を眺めながら過ごす、ロマンティックな時間

    夜景を眺めながら過ごす、ロマンティックな時間

 日本や、浅草・駒形ならではのフランス料理で魅せてくれる【ナベノ-イズム】。そのロケーションもまたこの地ならではのごちそうだ。隅田川に面し、すぐ近くにはスカイツリーがそびえ立つ。エントランスをくぐるとすぐに厨房が見え、いつでもシェフが出迎えてくれる。2階には丸テーブル、ソファ席そしてテラス席があり、3階は長テーブルと隅田川の絶景を望むカウンター席がある。昼に来ても夜に来ても、それぞれの場所で違った風景に出会え、次はあの席へと何度も足を運びたくなってしまう。

「川が見えてテラスがあって、都会なのに非都会的な風景がこの場所の魅力でもあります。テラスでの食事はフランス食文化のひとつでもある。そんな楽しみ方も味わっていただきたいです」。

 日本の食材や四季を大切にし、その場所にあることを楽しめるレストラン。そこから導き出した“コンセプト・テーマカラー・ロケーション”がテロワールとして醸し出される。渡辺氏が30年間培ってきた“イズム”がそこかしこに感じられるレストランだ。

日本のテロワールをテーマにした
「ダイナーズクラブ フランス レストランウィーク 2017」が開催!

 フォーカスシェフとして参加する渡辺氏。そば粉、山葵、すだち、煎餅、和牛、本みりんで驚きをあたえるという。

「ソースに奥行きと深みを出すために、三年熟成本みりんを使います。フランス人が知っている王道のソースの味に和の素晴らしい素材を忍ばせ、新しいフランス料理を生み出していきたいです」。

電話:03-5246-4056
住所:東京都台東区駒形2-1-17
アクセス:都営地下鉄浅草線「浅草駅」A2-b出口から徒歩3分
営業時間:12:00~15:00(L.O.13:30)、18:00~23:00(L.O.21:00)
定休日:月曜、毎月第4火曜(変動あり)、日曜のディナー

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この記事を作った人

楠井祐介(フリーライター)

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