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更新日:2018.11.02食トレンド

深夜のカウンター飯は蜜の味 | 「オクシブ」の隠れた名店 フランス料理【プティバトー】

今宵目指す一人飯は、薪木がうず高く積まれている【プティバトー】。食材や料理を通じてあなたをもてなすことだろう。カウンターならではの臨場感を楽しんでいただきたい。

プティバトー

スマホに登録したレストランの中には、あまり人には教えたくないという店がいくつかある。渋谷・神山町の商店街にある小さなフレンチ・レストラン【プティバトー】は、そんなとっておきの一軒になるだろう。

渋谷・フレンチ【プティバトー】L.O.24:00

 渋谷の東急百貨店の脇道を北上し、しばらく歩くと現れるのが神山町の商店街。昔からある通りだが、カフェやギャラリー、セレクトショップなど、洒落た店が少しずつ増え、近頃では「奥渋谷」(通称オクシブ)と呼ばれる人気エリアとなっている。そんな懐かしさと新しさをあわせもつこの界隈に、すっかり馴染んだ様子で佇む【プティバトー】。

 目印は、うず高く積まれた薪木と鮮やかな青色に塗られた木製のドア。そのドアを開くと、カウンターの向こうで迎えてくれるのは、オーナーシェフの笹川幸治さん。そう、【プティバトー】は笹川シェフがひとりで切り盛りする8席だけの小さな店なのだ。 

臨場感あふれる店内カウンター

    8席の椅子が並ぶカウンターだけの小さなレストラン。

    8席の椅子が並ぶカウンターだけの小さなレストラン。

 背もたれのついた趣のあるアンティーク風の椅子が8つ並ぶカウンター。店のオープンに当たって笹川シェフがとくにこだわって選んだのが、この椅子。それは、カウンターだけの店だが、短時間で帰るのではなく、料理をゆっくりと味わって欲しい、という真摯な思いからだった。

 その椅子に座ると目に入るのが、黒板にぎっしりと書かれたメニュー。手元に出されるメニューはなく、この黒板のメニューを見ながら客が料理を選ぶのかと思いきや、実際には、笹川シェフがそれぞれの客に食材を説明するところから始まる。しかも、今日、一番状態がいいという魚や肉、野菜などを素材のまま目の前に出してくれ、おすすめの調理方法をいくつか挙げてくれる。そうしてオーダーした自分好みの料理が目の前に出てくるのだから、期待が高まる。

 都内の結婚式場で料理人のキャリアをスタートさせた笹川シェフが、本格的にフランス料理の世界に入ったのは、伝説の【タイユバン・ロブション】(恵比寿)のオープニング・スタッフとして採用されたことがきっかけ。同店での2年間が大きな刺激となり、その後、フランスに渡る。意欲的に各地をまわるうちに、それぞれの土地に根付いたレストランのあり方に共感を覚えたという笹川シェフ。旬の食材、しかも、その日一番いい状態の素材を提供するという【プティバトー】の料理の基本は、このとき学んだものなのだ。

 帰国後、いくつかの高級フレンチ・レストランでのシェフを経た後、2002年に独立、代々木上原にレストラン【プティバトー】をオープン。ここはテーブル席がメインの店だったが、2010年2月に神山町に移転。現在のカウンター席だけのスタイルにして8年目を迎えようとしている。

 地元の馴染みのお客さんはもちろん、評判を聞きつけて遠方から訪れる客、そして、遅めの時間には、ひとりカウンター飯を楽しむ男性客も多く訪れる。だから、ラストオーダーは24時、閉店は成り行き、というのがありがたい。

シェフが目の前にいるカウンターの店ならではの嬉しいやりとり

    目の前に生の素材を出して、調理法も説明してくれる。12月から年を越した1月までのおすすめ食材は「きのこ」。

    目の前に生の素材を出して、調理法も説明してくれる。12月から年を越した1月までのおすすめ食材は「きのこ」。

見た目も美しいオードブルとワイン

    オードブル盛り合わせ(一人前)¥2,500。パテやカルパッチョをはじめ、一番いい状態の食材をつかったオードブルが5種。12月は三重産の牡蠣やクエ、下仁田ネギなど、この時期ならではの美味がいただける。グラスワインは¥800~。

    オードブル盛り合わせ(一人前)¥2,500。パテやカルパッチョをはじめ、一番いい状態の食材をつかったオードブルが5種。12月は三重産の牡蠣やクエ、下仁田ネギなど、この時期ならではの美味がいただける。グラスワインは¥800~。

    今夜の温かな前菜ひと皿目は、今が旬のカマスをつかった料理。左/ホタテと魚のすり身を巻いたカマスを蒸し煮にしたものを、エビの香りのスープとともにいただく。右/仕上げは輝きの美しいトビコをのせ、マイクリーフのあしらい。味はもちろんのこと、目にも美しいひと皿を提供するために、ドレザージュ(盛り付け)も手を抜かない。

    今夜の温かな前菜ひと皿目は、今が旬のカマスをつかった料理。左/ホタテと魚のすり身を巻いたカマスを蒸し煮にしたものを、エビの香りのスープとともにいただく。右/仕上げは輝きの美しいトビコをのせ、マイクリーフのあしらい。味はもちろんのこと、目にも美しいひと皿を提供するために、ドレザージュ(盛り付け)も手を抜かない。

    温かな前菜2皿目。今夜は、里芋とさつまいもを使った焼きテリーヌの上に、フォアグラのソテーをのせた料理。香ばしさとほのかな甘み、ほくほくの食感がたまらない。前菜とはいえ、食べ応えのある一品だ。

    温かな前菜2皿目。今夜は、里芋とさつまいもを使った焼きテリーヌの上に、フォアグラのソテーをのせた料理。香ばしさとほのかな甘み、ほくほくの食感がたまらない。前菜とはいえ、食べ応えのある一品だ。

 深夜に訪れ、男ひとりのカウンター飯のオーダーに迷ったら、笹川シェフが薦めるオードブルの盛り合わせと温かい前菜2皿の組み合わせを選んでみるといい。彩りも美しいオードブルは、パテやカルパッチョをはじめとする5種類の盛り合わせ。温かい前菜2種も、もちろん、その日一番、状態のいい食材をシェフのおすすめの調理法で仕上げたもの。どちらもコース料理のサイズのため程よい量で、ワインを楽しみながらゆっくりといただくことができる。

 最寄りの駅は代々木八幡と代々木公園だが、オーチャードホールなどがあるBunnkamuraから徒歩数分のため、劇場が終わったあとに食事とワインを楽しみにくる人と隣り合わせになる、なんてこともある。ひとりの時間を満喫しつつ、楽しい人間関係も生まれるかもしれない。そんな大人の店なのだ。

    うず高く積まれた薪木に目を奪われる「プティバトー」の外観。

    うず高く積まれた薪木に目を奪われる「プティバトー」の外観。

※価格はすべて税抜き表記です。

【お問い合わせ】
プティバトー
住所:東京都渋谷区神山町4-20 金丸ビル1F
電話:03-3485-9928
営業:18:00~24:00(L.O.)、祝日18:00~22:00
定休:日曜日
アクセス:代々木八幡駅、代々木公園駅から徒歩8分/東急百貨店本店から徒歩6分

この記事を作った人

堀 けい子(ライター)

音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。

記事元:Men's Precious

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