第二章開幕! 炭火焼きはもちろん、旬の食材を最もおいしく昇華させる腕前に感服|【ひまわり食堂2(ツー)】富山
2013年の開業から約10年。富山の旬食材の持ち味を生かしつつ、想像を超えるおいしい料理に変身させる田中シェフの腕前。そしてその温かく朗らかな人柄に魅了され、県内外問わず食通が通い詰める名店【ひまわり食堂】。建物の老朽化に伴い2023年末に一度幕を閉じ、2024年4月に、富山駅からほど近い場所へと移転。店名も新たに【ひまわり食堂2(ツー)】として、新たな歴史を刻み始めました。
左手にあるキッチンを見渡せる造りに変貌。カウンター席はもちろん、テーブル席からもシェフの手仕事を見ることができる
新たな移転先は富山駅から約7分と、充分に徒歩圏内です。もともと金庫として使われていた2階建ての1軒家で、以前より広々と感じられる店内。田中シェフが腕を振るう様子も見やすくなり、食事を待つ時間がより楽しくなりました。
入り口から見た店内奥には、金庫を思わせる分厚い金属の扉。なんと2階へと繋がるドアになっています
階段で2階に上がると、1階の扉と同じ位置にあったであろう部分を抜いた設計に。移転前の店舗をデザインされた方に依頼されたとのこと
2階の一室は丸ごと個室に。窓からは外の景色も見られ、ワインセラーもあり、いろんな使い方ができそうです
より洗練された印象ですが、「大人のための食堂」のイメージはそのまま、肩肘張らずに落ち着く雰囲気が魅力的。初めての来店でも、まるで友達の家に招かれたかのようにリラックスして過ごすことができます。
『ゼッポリーネ』
それでは、コース料理のスタートです。春の富山といえば白エビが食べたいですが、その欲望を最初に満たしてくれるお料理から……! 一番上に生ハム、間に白エビ、一番下にはホワイトアスパラガスのゼッポリーネです。濃厚な白エビの旨みと、シャキシャキのアスパラ。そこに生ハムの柔らかい塩味とやさしい脂がとろけます。ベルベンヌ(レモンバーベナ)も爽やか。
『うどと水タコの前菜』。うどのコリコリ食感と、水タコのつるっむちっとした食感が楽しい。炭で炙られているのか、口に入れた瞬間炭の香ばしい香りが鼻を抜けます
『いわしのマリネ』
つい歓声を上げてしまうような美しい佇まいのお料理。こんなに鮮やかなイワシは、なかなかお目にかかれるものではありません。一口食べてたまねぎの甘みにびっくり! さらにカリフラワーの強い旨みをまろやかなヨーグルトがまとめています。そしてとっても肉厚なイワシ、イワシをここまで大躍進させる田中シェフの腕前に、頭が下がる思いです。
『ウイキョウのスープ』。ウイキョウとはフェンネルのことで、根っこの部分を使用したスープです
Ricchi(リッキ)の「Meridiano Chardonnay(シャルドネ “メリディアーノ”)2022」
ワインペアリング(12,000円)も可能ですが、バイザグラスでももちろんOK。料理や好みに合わせてオーダーできます。この辺りでもう一杯と、シャルドネをいただきました。陰干しされた干しブドウからつくられた辛口で、口当たりは軽やかで華やかな香り。時折現れるフルーティで柔らかい甘みが至福です。
『ホタルイカのクレープ』
春の富山にもう一つ欠かせない存在のホタルイカ。見るからにピチピチのホタルイカが鎮座したお料理に胸が高まります。少量をそのままで、残りは大和芋のクレープに巻いていただきます。ホタルイカのミソも入ることでより旨みが感じられ、山菜の青々とした味わいとも相性ばっちり。交互に訪れるプリプリとシャキシャキ、クレープの食べ応え、総じて満足度の高い一皿です。
『アンコウのポワレ』
魚料理はアンコウです。まず、ナイフを入れた瞬間の弾力に驚きます。ソースはアンコウのだしをベースに、フレッシュトマト、オリーブオイルとケッパー。下のシャキシャキの白菜は塩だけでグリルしたもので、旨みや甘みがよく染み出しています。
田中シェフの炭火使いを眺めながら、いい香りとともにメインを待つ時間の幸福たるや……
『富山県産のジャージー牛 サーロイン炭火焼き』
お待ちかね、炭火焼きのメインディッシュ。シンプルだからこそ、火入れの素晴らしさに田中シェフの神技を実感します。ギュッと閉じ込められた旨みが口の中で広がり、しっとりジューシーな味わいは噛むほどに増して、香り高さもすごい! 付け合わせのカブそのものの甘さまでが幸せです。
これまた春を感じる『新たまねぎのスパゲティ』。トロトロのたまねぎはとても甘く、これだけ食べたのにペロリと平らげてしまえるのが不思議
デザートには『自家製アイスクリームとクレープ』を
料理はおまかせコース(18,000円)のみ。富山の春をふんだんに噛み締めることのできるコース構成に心から満足し、最高の食後感です。遠方からでも、季節ごとに訪れたいと強く感動しました。
1月の能登半島地震ではここ富山市も大きく揺れ、震度5強を観測しています。シェフにお話を伺うと、「とにかくすごい揺れでした。自宅で過ごしていましたが、すぐに心配になってお店に駆けつけたところ、お店もワインも無事でした。スタッフも皆無事で、被害はお皿数枚と壁の損傷程度でした」とのこと。
普段よりも北陸に目を向け、自分自身が楽しんで訪れるのが一番なのかもしれないと感じた夜でした。
撮影・取材・文/宿坊アカリ(ヒトサラ編集部)
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