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更新日:2017.12.20旅グルメ 連載

富山の恵み、伝統工芸、そして料理人の感性が融合する【レヴォ】の世界へ fromおいしいニッポン物語(第8回)

日本の豊かな食文化の魅力を伝える「おいしいニッポン物語」から、富山の魅力をご紹介。第8回は、富山県を代表するフレンチレストラン【レヴォ】のシェフと生産者と二人三脚でつくる、美味の成り立ちについてご紹介します。

富山の恵み、伝統工芸、そして料理人の感性が融合する【レヴォ】の世界へ fromおいしいニッポン物語(第8回)

生産者と二人三脚で作る、富山にしかない美味

 谷口シェフの毎日は、野菜、魚、ジビエ…、生産者のところへマメに足を運ぶことから始まる。車で5分のところにある、河上めぐみさんが経営する、【土遊野】という自然派の農場は最も頻繁に訪れる場所。畑では、富山の土のよさを生かしたいからと根菜を主に栽培している。さまざまな草の花が咲く、自然栽培に近い畑では、谷口シェフの大のお気に入りでもある、五色の人参が植えられている。「肥料はときどきだけあげて、そのほかはあまり手をかけないんです。植物の力を信じて任せる。それがいいと思っています」と河上さん。畝ごとに植えている人参の色が分かれていて、今日使う分を二人で収穫する。小さい人参を見つけた谷口シェフが「こういうの、そのまま皿に盛りつけたい」といえば「そんなサイズばかりたくさんとれないから無理です」と笑う河上さん。畑の上でのやりとりでも料理へのインスピレーションは沸いてくるようだ。

    土遊野で育てている5色の人参のうち、一番甘いオレンジそして黄色と、白。丸いのは大根

    土遊野で育てている5色の人参のうち、一番甘いオレンジそして黄色と、白。丸いのは大根

    生産者と料理人。双方の視点からこれから何を育てていこうと、話は尽きない

    生産者と料理人。双方の視点からこれから何を育てていこうと、話は尽きない

 また、なだらかな山の上には河上さんの養鶏場がある。両親の代には鶏卵のみを育てていたが、谷口シェフの助言で食肉の養鶏を始めた。自然交配させた元気に自分の足で歩きまわる鶏たち。品種は肉の美味しさには定評のある、名古屋種とプリマスロックを掛け合わせたものだ。このひな鳥が、レヴォ鶏になる。「生育段階ごとにケージに入れて肥育していますが、45日くらいのひな鳥を見て、これを食べてみたいと谷口さんが言い出したんですね。私自身は規格サイズで出荷することしか頭になかったのですが、そういう考え方もあるのかと、目を開かされました。可哀そうなのではなく、美味しく食べてあげること、そのために丁寧に育ててあげること、それこそ愛情なのですから」と河上さんは言う。命をいただくという人間の食の基本がそこにある。

    生まれて1週間ほどのひな。発酵した餌を与えることで、薬を与えずとも、健康に育つ。生まれてくるひなには黄色と黒と両方が。黒のほうがより肉に旨みがあると、谷口シェフ

    生まれて1週間ほどのひな。発酵した餌を与えることで、薬を与えずとも、健康に育つ。生まれてくるひなには黄色と黒と両方が。黒のほうがより肉に旨みがあると、谷口シェフ

美しい料理を支える器は、職人との信頼関係から生まれる

    使用した感想を事細かに伝える谷口さん。使い手からの意見を真摯に受け止め、作品に反映させる【下尾デザイン】の下尾和彦さん

    使用した感想を事細かに伝える谷口さん。使い手からの意見を真摯に受け止め、作品に反映させる【下尾デザイン】の下尾和彦さん

 谷口シェフが、器ありきで店の成り立ちを考えたのが【下尾デザイン】の木工芸だ。
「店をやるなら、下尾さんに器をオーダーしようとずっと思っていました。なぜ? と問われても、うまく言えないのですが、最初に工房を訪れたときから、求めているものはこれだと、心に響いたのです。」と谷口シェフが言えば、「谷口さんの“レストラン全体から、富山を発信する”という考え方に心を打たれました。それならぜひ、協力させてほしいと思いました。1か月前にダイニングテーブルも全部と言われたときには驚きましたけれど。必至の想いで間に合わせました。」と下尾さんも笑う。

    「塗料を塗っては削ってという工程を5〜6回は繰り返すんですね。いわば、漆器のような感覚です」とサンドペーパーで丁寧に磨きをかける下尾さん

    「塗料を塗っては削ってという工程を5〜6回は繰り返すんですね。いわば、漆器のような感覚です」とサンドペーパーで丁寧に磨きをかける下尾さん

    磨きこんで塗装を重ねて風合いを出しているので、水をのせてもしみこまずに弾く。料理のソースをのせてもシミにならずに使える才色兼備の器だ

    磨きこんで塗装を重ねて風合いを出しているので、水をのせてもしみこまずに弾く。料理のソースをのせてもシミにならずに使える才色兼備の器だ

 二人の信頼関係の強さは、こんなエピソードからも垣間見える。

「オーダーするときには、ほとんどおまかせです。色や形にあれこれ注文を出すと言うことはないですね。言うのはサイズくらいです。出来上がってきた皿の、下尾さんの世界観に触発されて何を盛り付けるかを考えたほうが、自分の中の新しいものを引き出すことができるんです」と谷口シェフ。お互いつくり手としてリスペクトし合う関係が、次々とレヴォリューションを生んできたのだ。
 
【レヴォ】があるTV番組で取り上げられるなどして全国区になり、各地の料理人が訪れるようになるにつれ、下尾さんのもとに全国から注文が入るようになった。谷口シェフの料理が核となって、富山の魅力が全国に、いや、全世界に波及するという波が確実に大きくなっている。

富山からのさらなる発信のために、進化を続ける【レヴォ】の料理

    四方でとれたアオリイカを、薪の熾火で軽く表面を焙ったもの。【土遊野】の5色の人参を貝類のだしでからめて敷き、炭火で深煎りにした八尾のごまを散らしてアクセントに。器は内田鋼一氏のもの

    四方でとれたアオリイカを、薪の熾火で軽く表面を焙ったもの。【土遊野】の5色の人参を貝類のだしでからめて敷き、炭火で深煎りにした八尾のごまを散らしてアクセントに。器は内田鋼一氏のもの

 取材から戻り、【土遊野】で収穫した新鮮な人参を使って、何か一品を作ってほしいという取材陣のリクエストに応えて披露してくれたのが、アオリイカと合わせたこの料理だ。薪の熾火で軽く焙ったアオリイカと貝類の泡のソースの下には、貝類のまろやかなソースをまとった5色の人参の細切りが隠れている。白い世界の中から、色とりどりの人参が姿を現すさまはとても印象的だ。地中から掘り起こした人参の鮮やかな色に驚かされる、そんな感覚を再現したのかもしれない。5色の人参が、土の香りと力強い甘みをほどよく主張しながら、イカの甘みやテクスチャーを引き立たせている。まるで富山の土の恵みが海に流れ込み、海がより豊かになる、そんな富山の自然そのものを表してもいるようだ。

 谷口シェフの料理の進化は、素材によるものだけではもちろんない。技術的においても富山でやる意味のある手法の模索を続けている。このイカの料理では、熾火で薫香をつけるという新しい試みを取り入れた。炭火に比べて火のあたりが柔らかく、急速に熱を入れたくないものに向くのだという。穏やかに火が入るから、薫香もやわらかい。アオリイカの表面だけをごく軽く焙って香りをつけ、火を入れることで食感が軽やかになり、甘みも増す。「毎日、駐車場で盛大に薪を燃して熾火を作り、厨房に運んでいます。幸い、薪は自由に手に入りますから、炭に比べて、光熱費も1/10くらいなんですよ。将来的には熱源をほとんど薪火にしたいくらいです」。
 
 知るほどに、魅力あふれる富山の素材、そして、それを生かすべく、進化を続ける谷口シェフの料理。その世界観は、富山から発信する唯一無二の料理として、大きな吸引力となっている。

とやまの匠味キャンペーン【レヴォ】の特典

【レヴォ】で富山ガストロノミーの特別な体験ができる「とやまの匠味キャンペーン」開催中。1日1組限定、農場【土遊野】の見学にご招待します。

  • (お申込み方法)
    ヒトサラ店舗ページ【レヴォ】にアクセスし、お電話にて「とやまの匠味キャンペーンの予約です」と申し込みください。

とやまの匠キャンペーン

「富山グルメ旅」のおすすめホテル【リバーリトリート雅樂倶】

 ご紹介した【レヴォ】が入っているホテルは、神通川のほとりに佇む大人のための隠れ家。天井が高い館内には、いたるところに素晴らしいアートピースが飾られ、ゆったりとした時間が流れている。敷地内の散歩道を歩けば、季節ごとの花や野鳥に出会うことができ、ときにはニホンカモシカやサルも現れるそう。夜は【レヴォ】で「富山ガストロノミー」を楽しんだ後は、滑らかな温泉にゆっくりと浸かり、寝心地のよいベッドでぐっすりと休むことができる。おすすめは、2017年4月にリニューアルオープンした「本館ラグジュアリースイート」。140m²を誇る広さの部屋には、イタリアのデザイン家具をセンス良く配したリビングを挟んで、2ベッドルーム、2バス・トイレが配されている。4人家族や、女子旅、友人夫婦同士での旅にぴったり。早朝、川を眺めながら入るジェットバスは、気持ちよさ格別だ。

  • 本館ラグジュアリースイート「301」のリビング

    本館ラグジュアリースイート「301」のリビング

  • 「301」号室のジェットバス。このほかにヒノキのお風呂も

    「301」号室のジェットバス。このほかにヒノキのお風呂も

この記事を作った人

写真/伊藤 信 取材・文/小松 宏子

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