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更新日:2018.02.28食トレンド グルメラボ

仏・米のミシュラン星付きトップシェフによる「味覚の授業」® って?

フランスで26年以上の歴史を誇る、国民的食育活動「味覚の一週間」® が日本でも毎年開催されているのはご存知ですか? 当時の子ども達を取り巻く食文化の乱れが深刻な問題となり、ジャーナリストで料理評論家のジャン=リュック・プティルノー氏が発起人となって、パリのシェフたちとともに活動を開始したのがきっかけ。その後、フランス全土へ広がった活動です。日本では2011年からスタートし8年目を迎えます。今回は、活動の柱である、シェフによる「味覚の授業」® を潜入取材しました。

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有名シェフが味覚について講義する「味覚の授業」®

今回訪れたのは、閑静な住宅街の中にあるモダンな建物が特徴的な、新宿区四谷小学校の5年1組/2組の授業。本場フランスのパリにてわずか1年3ヶ月でミシュランの一ツ星に輝いた【Sola】の吉武広樹シェフと、シェフの友人でもあり、アメリカの三ツ星店【ジャン-ジョルジュ】でスーシェフとなり、現【ジャン-ジョルジュ東京】料理長である米澤文雄シェフの両名が教壇に立ちました。フランスやアメリカの文化をよく知る二人のシェフならではの、グローバルな視点で講義がはじまります。

    写真左:米澤シェフ、右:吉武シェフ

味覚をあらわす、“五味”とは?

「世界では、“四味“といわれる4つの要素が基本。塩=しょっぱい、酸=すっぱい、苦=にがい、甘=あまい、を表し、英語やフランス語に翻訳すると、塩味=英Salty、仏Sel、酸味=英Acidity、仏Acidité、苦味=英Bitter、仏Amertume、甘味=英Sweetness、仏Douceurとそれぞれ単語が存在しますが、もう一つ、日本特有の旨味という要素があります。これは世界共通、旨味=英・仏“Umami”なんです。」と吉武シェフ。

    世界地図と各言語で、味覚を紐解いていくシェフ達

19世紀以前は、旨味の存在が科学的に立証されていなかったそうですが、最初に発見したのはなんと日本人。その最初に発見された旨味成分が、昆布だしからとれる「グルタミン酸」であることから、日本では古くから旨味という味覚が認識されるようになったそうです。

続いて味わいを表すのに重要な、食感のお話。とろとろ、ふわふわ、サクサクなどたくさんの食感を表す日本語がありますが、海外ではここまで表現豊かに表す語彙が少ないのです。日本では当たり前の食感である、ネバネバは海外の方は特に苦手。さらには世界の食習慣まで話は広がります。海外では日常の朝食に納豆という光景はほぼないに等しく、フランスではクロワッサンなど甘いものを食べる習慣があり、アメリカではマフィンにベーコンエッグが定番。このような食習慣がそれぞれの国の“味覚”を育てていく一つでもあるそうです。

人種や文化によって「味覚」は変わってくる?!

一方で、同じ人間なのになぜ外国人と日本人では味覚が異なるのかは人種の違いもあるといいます。これは、味覚を感じるための器官である、「味蕾(みらい)」の数が違うから。人間の舌には約10,000個の味蕾がありますが、肌や目の色が違うように、人種によって舌の厚さや長さ、形が違うことから、味蕾の数も違うため、国や文化によって味覚の違いが起こるそうです。このことからも、日本人が外国の地で世界の美食家の舌をうならすことがどれだけ大変なことか、想像しただけでも難しいことがわかります。二人のシェフが生み出す料理、一体どんな味わいなのでしょう。子ども達も「シェフ」という職業に興味が沸いてきた様子…。

ここで五味を体験!楽しい実験がはじまります

「では、みんなで五味を食べてみましょう。」―生徒の目の前には、砂糖などが入った容器が置かれ、目をつぶってチョコレートを食べるとどうなる?鼻をつまんでグミを食べると何味がする?など面白い実験がスタート。

    左上から、砂糖、チョコレート、グミ、牛乳、出汁が生徒たちの机へ配られる

目をつぶってチョコレートを食べた後に砂糖を食べてみると…
甘いはずのチョコレートが、苦く感じたのか、「苦い?」との声が。その後しばらくしてから「甘さがやってきた!」と驚く子ども達。その後、目をあけて砂糖を食べると、「苦味が消えた!」など、さまざまな反応が返ってきます。

    視覚や食べる順番によっても味覚が変化することを知った子ども達

鼻をつまんでグミを食べると…
甘いのはわかるけど、何味かわからない。。。鼻を開放するとたちまち「ブドウ!」と声があがりました。
甘さは舌で、香りは鼻で感じるので、人間は知らないうちに五感をつかって味を見分けているんですね。

    実験に真剣に取り組み、自分の感覚を研ぎ澄ませる

不思議そうな顔を浮かべながら、次々と味覚を試す児童たち

    さまざまな実験を楽しみ、興味を示していく

続いて、牛乳を飲んでみると「生ハム!」「おいしい!」との声があがりました。これは生ハムを漬けておいた、あたたかいミルク。塩味が効いておいしそうです。このように耳で聴いて、目で見て、鼻で嗅いで、舌で触って味・香り・温度を感じる。食事という行為は、まさに五感をフルに使って行うものなのだ、と改めて感じる実験となりました。

ここで触れておきたいのが「辛味」。よく五味に「辛味」が入ると勘違いされている方が多いそうですが、辛いものはあくまでも刺激なので、「味覚」ではなく「痛覚」であり、五味ではないということを頭に入れておきましょう。

多様化する日本の子どもの食事情。いまはラム肉がおうちごはん?

「料理をしたことがある人?」という問いに対し、ほぼ全員の生徒が「ある」と回答。味噌汁や焼きそば、カレーなどを作ったことがあるとのこと。いわゆる家庭の味、おふくろの味が受け継がれているんだなぁとほっこりしたところで、次の質問。「好きな食べ物はなんですか?」という問いに対する回答がこちら。

    シェフの質問に、積極的に答える子ども達

「鶏胸肉」といったヘルシー志向な答えもあれば、「手羽先」や「ローストビーフ」など普段の食卓というより少し特別な献立かな?という答えに加えて、「ラム肉!」「A5ランクのやわらかいお肉!」との声があがり、シェフたちも驚きの表情。都会の小学校という土地柄もあるのか、はたまた時代なのでしょうか。

子ども達の未来=食の未来

授業を終えて、先生役のお二人に感想を伺いました。

「昭和の田舎で育った僕らの時代とは違って“食の欧米化”が進んでいることを再認識したいい機会でした。“味わう”ということは、ただ口の中だけで感じるものではなく、体全体で感じてほしいということ。海、山、川があり、四季がある日本には旬の食材があります。この豊かな環境であることに感謝し、味覚を磨き続けて欲しいと思います。」(吉武シェフ)

「僕は東京育ちですが、それでも好きな食べ物には驚きましたね(笑)。圧倒的に肉でしたけど、A5ランク、とか具体的。より肉への興味が深まっている証拠ですよね。ほとんどの子が料理の経験があるにも関わらず、最初にシェフになりたい人?と聞いたときは少なかったのが、授業の中盤でだんだん興味が沸いてきたのか、後半では半数以上に増えていたのが嬉しかったです。まずは興味を持つことが大事。子どもにとってはとても重要なことかと思います。」(米澤シェフ)

――最後に、子どもを持つご家族にメッセージを。

「父母の影響は大きいと思います。子どもの方が大人よりも味覚が敏感かつナチュラルなので、科学的なものをなるべく避け、季節のものを多く取り入れた食事をして子ども達の食環境をよりよくしていきたいですね。」(吉武シェフ)

一日三回、何気なく摂っている食事が、「味わう」という観点から見直すことで、知識として学べるとともに、どんな味がして、どんな食感なのか、を意識できるようになったのではないでしょうか。それを一緒に食べる相手と会話し、たのしむ。この気づきの積み重ねが「食育」の第一歩なのだと実感しました。次に摂る食事の際は、みなさんも全身で味わってみては?

プロフィール

【Sola】吉武 広樹(よしたけ ひろき)

1980年、佐賀県生まれ。2010年12月、ユーリン・リー氏と共にパリで【Restaurant Sola】をオープン。2012年3月には、開店から1年3ヶ月という短期間でミシュラン一ツ星を獲得。食の都パリで唯一無二の一軒へと成長させる。2014年、若手料理人のコンペティション「RED U-35」でグランプリ受賞。 現在は店を閉め、新たな活動の拠点を模索中。

【ジャン-ジョルジュ東京】米澤 文雄(よねざわ ふみお)

1980年、東京都生まれ。2002年に単身でNYへ渡り、12年連続三ツ星フレンチ【ジャン-ジョルジュ】本店で日本人初のスー・シェフに。帰国後、日本国内の名店で総料理長を務め、【ジャン-ジョルジュ】の日本初進出を機に、レストランのシェフ・ド・キュイジーヌに抜擢され、2013年、【ジャン-ジョルジュ東京】の料理長に就任。オープン9ヵ月で星を獲得。

「味覚の一週間」® 事務局
TEL:03-3402-5616 メール:info@legout.jp

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ヒトサラ編集部

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