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更新日:2017.06.09グルメラボ

東京・大衆酒場。ひとり酒デビューは不朽の名酒場へ!

大衆酒場でひとり酒。ただ、不慣れな人が知らない店にひとりで暖簾を潜るのは、ややハードルが高い!? 確かに酒場によっては独自のルールがあるのは事実。だからこそひとり酒のデビューは名店へ。百戦錬磨の飲ん兵衛が集う店で、まずは大衆酒場の魅力を肌で感じとりたい。

大衆酒場でひとり酒デビューを飾るに相応しい、2つの名店

昭和初期建築の建物で、いぶし銀の雰囲気に酔いしれる【みますや】

 神田は外堀通りから一本入った路地裏。神田司町のオフィス街に、東京最古といわれる居酒屋があります。ここ【みますや】が創業したのは今から110年以上前、明治38年のこと。緑青が吹き出た建物は昭和3年に建てられた看板建築で、その佇まいからして風格が伝わってくるの名店です。

 ただし、ここは決して畏まった店ではありません。今でこそ予約がなければ入店が難しい店となりましたが 、ここはあくまで大衆酒場です。3代目の店主も「昔の客はお酒を1、2杯飲んでサッと帰る人が多かった。この神田は職人の町でしたからね」といい、幼い頃は店の土間が遊び場だったと笑います。

    関東大震災後の復興のシンボルといえる看板建築の建物

 それを裏付けるように、店にはこんなエピソードが残っています。それは先の大戦中のこと、空爆による火の粉がこの店にも襲ってきたといいます。しかし、当時は統制中で酒はおろか食べ物さえろくに手に入らない時代。近所に住む男衆たちは「ここがなくなっては、酒が飲めなくなってしまう」と、バケツリレーによる水かけで、この店を火の粉から守ったというのです。そのかいあって店は類焼を免れました。それを物語る、黒く焼けた柱の一部が今も店の一部に残っています。

 そう、大衆酒場とは何も特別なものではなく、日々の暮らしの中に息づくものなのです。火消しに奔走した男衆たちも、きっと毎日のささやかな楽しみの一部を守ろうとしただけに違いありません。

    『こはだ酢』や『牛にこみ』など、昔ながらの酒場メニューが揃う

 肴は、3代目が自ら筆をとった短冊に、『こはだ酢』『ぬた』『柳川鍋』『牛にこみ』など、昔ながらの品書きが並びます。奇をてらった料理は何ひとつありませんが、どれも酒飲みの勘所を押さえたものばかりで、お酒も全国の名酒がずらり。いぶし銀の空間をじっくりと楽しみ、名酒肴に舌鼓。大衆酒場の魅力を知るにはまさにうってつけの一軒です。

魚が安く、旨い。元魚屋の気骨を感じる門前仲町の名店【魚三酒場】

 門前仲町の名店として有名な【魚三酒場】。“せんべろ”なる言葉が登場して久しいですが、メディアで特集が組まれれば、必ずといっていいほどその名が登場する酒場です。

    見るからに色艶のいい中トロ。分厚い切り身は赤身と脂のバランスが秀逸

 その理由はもちろん、名物である魚料理が安く、旨いから。壁一面に120種ほどの短冊が並ぶメニューのほとんどは300円台が中心で、なかには『あら煮』50円というメニューまであり、日本酒もコップ酒が180円で楽しめるという驚くべき価格です。それを実現できるのは何と言っても、この店の前身が魚屋だから。毎朝築地に足を運び、値切って、納得のいくものだけを仕入れてくる魚がメニューに並ぶのです。

    1階はコの字カウンターをふたつ繋いだような造り。開店と同時に1階はほぼ満席に

 そんな店だからこそ、ここではひとつの掟のようなものがあります。料理は必ず魚からのオーダーが鉄則。それは、この店の根底に「美味しい魚を、少しでも安く味わって」という魚屋時代からの想いがあるから。

 客同士が肩を寄せ合うように座るカウンターは決してくつろぐ雰囲気ではありません。開店前の行列もこの店ではいつものことです。ただ、そうまでして人々がここを目指す理由が、この店にはあるのです。

この記事を作った人

取材・文/吉田 慎治

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