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絶品!魚介の炭焼きと真っ黒なスープを食べにバスクの名店へ/【エルカノ】スペイン・ゲタリア

「世界中の食いしん坊は、みな一度はバスクを目指す」。そんな噂があながち嘘ではない、美食の町スペインバスク。中でも、今シェフやフーディたちがこぞって訪れるのが、ゲタリアという海辺の町にある一軒のレストラン【エルカノ】。1964年の創業から地元の人にも愛される、とびきり美味しい魚がいただけると評判の店だ。名物魚の炭火焼きから、絶品スープまで、取材班が悶絶した料理の数々を一挙ご紹介!

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冒険家・エルカノの名前を冠した店で出会った、絶品の魚介の炭焼き&スープ

    ゲタリアは、風光明媚な港町。【エルカノ】での食事の前後に散歩を楽しみたい。

 バスク地方の小さな港町、ゲタリア。この町の名前を聞いて、バレンシアガを思い浮かべるあなたはきっとファッション通、レストラン【エルカノ】を思い浮かべるあなたはきっと食通だろう。

ファッション通に、”バレンシアガの出生地”として有名なゲタリアは、我々食いしん坊にとっては、レストラン【エルカノ】の町。世界一の炭火焼魚を食べさせてくれる、とフーディーたちに囁かれる、魚介料理の名門店だ。

    女性スタッフの制服は、バレンシアガ。シンプルかつエレガントなフォルムが美しい。店の近くにあるバレンシアガ美術館にも立ち寄りたい。

 【エルカノ】は1964年、ペドロ・アルレギ氏がオープンしたレストラン。ゲタリアの前に広がる広大なビスケー湾に生息する、極上のヒラメやメルルーサ、ヒメジやスズキなどを、丸ごと炭火で焼いたものが、昔から変わらないこの店のスペシャリテだ。

 料理人の取材をするとき、多くの、いやほぼ全ての料理人が、“素材を厳選する”と言う。しかし、言うは易し、行うは難し。本気で極上素材を手にいれるのは、至難の技だ。ペドロはもちろん、息子で現オーナーのアイトール・アルレギ氏は、極上の海の幸を育むビスケー湾の傍で生まれ育ち、この海を知り尽くした漁師たちとも子供の頃からの友人だ。そんな彼らだからこそ、文字通り“厳選素材”の仕入れが可能なのだ。

    バスク名物ココチャ。この店では、シンプルな炭火焼きのほか、ピカタ風、ピルピルソース添えの3種を楽しめる。魚のスープとヒラメの間につまむのがおすすめ。

「素材を深く理解することが、なによりも大切なんだ」とアイトール氏は言う。

「素材選びで大切なポイントは、3つある。まずは、当たり前のことだけれど、とびきり鮮度がいいこと。次に、魚に一番脂がのった時期を知ること。例えば、アンチョビの旬は4月〜7月。でも、4月5月にビスケー湾に来るアンチョビはより脂が乗って柔らか。6月以降になると鮮度は同じだけれど、筋肉がつき始めて身がいくらか硬くなる。僕なら、4月〜5月のアンチョビを食べたいね。そして最後は、魚がどこで餌を食べたか、だ。浜に近い岩礁にいる魚は、甲殻類を多く食べて身が筋肉質。同じ魚でも、深海に潜って餌を食べているものはもっと柔らかな身質だ。シャルドネという同じブドウを使っていても、ブルゴーニュとアルメリアでは全く違ったワインになるのと同じこと。海洋にもテロワールがあるんだよ」。

    創業者ペドロが考案した、ヒラメを丸ごと焼くための網で挟んで、じっくり時間をかけて炭火焼にする。左はヒメダイ、右奥はオマールエビ。

 昼過ぎ、熱い炭が敷き詰められた【エルカノ】の炭焼き台に次々と、とびきり上質な魚が乗る。どれもが、その魚に合わせて作られた専用の網に挟まれている。

 この土地には、以前から炭火焼料理の伝統があり、魚介ももちろん炭火で焼いていた。が、初めて、ヒラメを一尾そのまま炭火台に乗せたのは、創業者のペドロ。丸ごと焼くために、独特の形の焼き網を考案したのも彼だ。

 絶妙な火加減にこんがりかつジューシーに焼き上げられた丸ごとヒラメがテーブルに乗ると、必ず歓声が湧き上がる。さあ食べよう!各自、適当につつこうか?

    絶妙な焦げ加減に焼かれたヒラメがテーブルに登場!腹や背肉は、もちろん、眼の周りや頭も絶品。

「いえいえ、ちょっと待って。それだと、ヒラメの美味しさを最大限楽しめめないよ」

 正しい食べ方を、アイトールが指南してくれる。

「例えば牛肉なら、肩、背、腰、腿と、部位によって美味しさが違うだろう?魚だって同じこと。腹側の身と背側の身は、食感も味も違う。頭の部分ももちろんそうだし、エンガワもまた違った魅力がある。それぞれの部位を少しずつ食べるのが、ヒラメを満喫するコツだよ」。

    黒々とした色から想像できない、繊細で芳しい香りと、芳醇かつ清らかな味わい。“最高”という言葉を使うのはあまり好きではないが、こればかりは、“世界最高の魚のスープ”と呼びたい。

【エルカノ】のスーパースターは、このヒラメの丸焼きだが、この店にはもう一つ、“これを食べずしてエルカノを語るべからず!“の料理がある。イカスミスープかと見まごうような、黒い魚のスープだ。

 アンコウとアナゴがベース。そこに、“ソパコ”というこんがり焦げたパンを加えることで、この色が生まれる。数年前に初めてこの店を訪ねた時、ヒラメに感動し、この魚のスープには衝撃を受けた。あまりの旨さに仰け反り、この先二度と、この店以外で魚のスープを口にするまい、と思った。

    店からすぐのところにある旧市街。ここを抜けると、目の前に海と港が広がる。

 鮮度抜群で旨味がたっぷり乗った魚の、ありとあらゆる風味がぎゅっと濃縮した、かといって決して重たくない味わい。喉を通る時に鼻に抜ける強烈な美香は、魚の精髄の塊だ。五臓六腑に染み渡る美味しさに、“お代わり!”と叫ばずにいられない。

“美味しい”の概念を覆す、【エルカノ】のヒラメの炭火焼と魚のスープ。死ぬまでに一度は食べたい(いや、一度と言わず何十回でも食べたい)、味覚が覚醒する極上料理だ。

    ゲタリアの街を抱くような丘陵地には、一面、地元の名物ワイン、チャコリのブドウ畑。
    絶品魚介料理のお供にぴったり。

ELKANO

  • 住所:Herrerieta Kalea 2 – 20808 Getaria
    電話:+34 943 140 024
    営業:13時~15時15分、 20時30分~22時15分
    定休:日曜夜、月曜夜、火曜日

この記事を作った人

撮影/小野祐次 取材・文/加納雪乃

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