更新日:2019.12.29旅グルメ
世界No.1シェフ【ミラズール】マウロ・コラグレコ氏インタビュー/国境を越えた料理がつなぐゲストの笑顔
4月末から始まった、COOK JAPAN PROJECTのハイライトともいえる、世界のベストレストラン50の1位に今年輝いた【ミラズール】マウロ・コラグレコシェフの来日。12月6日~11日までの6日間、華麗なるディナーの宴が開かれた。この機に、ぜひ、マウロシェフの料理を食べたい、そんな熱い思いで瞬く間に席は売り切れた。ディナーの準備はもとより、さまざまなメディアの取材で分刻みの忙しいスケジュールのさなか、快く、インタビューに応じてくれた。
【ミラズール】マウロ・コラグレコシェフ プロフィール
南仏マントンにある【ミラズール】を牽引するアルゼンチン出身のマウロ・コラグレコ氏。【ベルナール・ロワゾー】やフランスの名シェフの元で修業をし、2006年に自身のお店【ミラズール】をオープン。わずか6か月で、フランスのレストランガイドから「Revelation of the Year」を受賞し、1年を待たずに1ツ星を獲得。 2009年には、Gault&Millauで非フランス人シェフとして初めて「Chef of the Year」を受賞。2012年にミシュラン2ツ星、2019年版で三ツ星獲得。2019年『世界のベストレストラン』でNo.1シェフとなる。
マントンのミラズールのテラス席。穏やかな地中海を臨みながらの食事はまさに至福
マウロ氏:私は、ミシュランの星のために、また、数々のガイドブックのために働いているわけではありません。ゴールは、レストランで食事をしていただいたお客様一人一人が幸せを感じるということ。そのための情熱は星を取る前もあとも、まったく変わりません。とはいえ、【ミラズール】は12テーブル35席しかないので、予約はますますとりにくくなっています。インターネットの予約を通じて、24時間世界各国からの予約がひっきりなしに入ってきます。いらっしゃるお客様の期待値は、いやがうえにも高くなります。それに応え続けなければいけない。つまり、現状維持ではダメ。進化し続けていかなければ、その期待値に応えることはできないのです。
小高い丘の下に広がる、自然農法の菜園。四季折々に多彩な野菜が実り、店で使用する野菜の役半分をまかなう
マウロ氏:確かに、曾祖父はイタリアの出身ですし、祖母はポルトガル系、妻はブラジル、息子はモナコで生まれました(笑)。その昔は、厳然として、フランス料理、イタリア料理という枠はありましたが、世界が狭くなった今、料理に国境はなくなったと思っています。それも、私のように多重なルーツを持っているからこそ、柔軟に考えられるのかもしれません。けれど、幼少期に、祖父の畑でできた野菜を祖母が料理をしてくれたり、祖父のために作った素晴らしいパスタなどはかけがえのない想い出となって、私の料理の中核を支えています。誕生日は塊肉を焼いて、家族親戚皆で分け合う、そんな原体験が、ポジティブに自分のクリエーションの中に生かされています。たとえば、現在、“シェアブレッド”として、店で出しているスタイルがそれです。分かち合うことによる、幸せの共有です。
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アミューズ3種の中の一つ、ジャガイモのミルフィーユ、クミン。薄切りにしたじゃがいもをミルフィーユのように重ねてクミンを効かせて焼き上げた
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同じく、アミューズ3種の中の一つ、スカモルツァの黒いベニエ。スカモルツァチーズのボールに炭の粉をつけて揚げたもの
マウロ氏:アルゼンチンから、料理を学びにパリにきました。当初は4年くらいで戻ろうと思っていたのですが、気づいたら20年になります。パリではアラン・パッサール、アラン・デュカス、故ベルナール・ロワゾ-、ギー・マルタンの4人に偉大なシェフに師事しました。それぞれからまったく異なる料理哲学を学びました。
薔薇の花、柑橘風味のブイヨン。くえとかぶの薄切りをばらの花のように盛り込んで、和の柑橘類をきかせたブイヨンをたっぷり注いでいただく
アラン・パッサール氏からは、なんといってもまず、肉や魚への繊細な火入れです。そして、素材の旨みやエッセンスだけを引き出した、ピュアなフレーバーに対する真摯な姿勢を学びました。ベルナール・ロワゾー氏からは、ソースにフォーカスした料理哲学です。なかでもイノベーティヴなソースへの展開は影響を受けました。それに対して、アラン・デュカスからは完璧主義ということを学びました。また大きなチームを統率する際の心得や、テクニック。そして、伝統的なソースに対する考え方も、とても参考になりました。ギィ・マルタン氏は、自信を与えてくれました。常に、キッチンには、4人のシェフがいると感じています。
ビーツとクリスタルキャビア。スペシャリテの一つ。ビーツを塩釜で包んで蒸し焼きにし、クリーミーなソースと、クリスタルキャビアをたっぷりと
そうして、いよいよ独立を考えたときに、パリでは家賃が高く店も狭く、決断できずにいるときに、マントンを紹介され、一目惚れしたのです。店を持つなら、庭で野菜を作りたいと。農業に関する本もずいぶんよみました。そして、日本人の福岡正信氏の自然農法に深く感銘を受け、自然農法で野菜を作っています。今では店で使用する約半分の野菜は、自分たちの畑でまかなっていますが、地元の生産者も大切にしたいので、残りは、南仏の素晴らしい生産者から購入しています。
兵庫県赤穂産牡蠣、ぶどう、そばの実。牡蠣に軽く火を入れ、ブールブランソースで。付け合わせはジューシーなシャインマスカット。香ばしいそばの実がアクセントに
マウロ氏:日本を訪れるのは8度目です。また、これまでの職場にも、常に日本人の優秀なスタッフと働いてきましたから、日本のことはよく知っているつもりです。今回は7年の間があいてしまいましたが、自分のメニューを日本の食材におきかえるという作業は、容易にイメージを持つことができました。
真鴨、赤キャベツ、カシス。しなやかな火入れが絶妙の、新潟の網で捕獲した窒息鴨に赤キャベツとカシスの甘酸っぱいソースを合わせて
今回は、キャビア、ファグラ、一部のチーズ以外は全部日本の食材で組み立てています。日本は最も優れた食材に恵まれた国の一つですから。また、海と山をすぐ近くに控えたマントンの地理的条件と、日本は共通点もあります。ですから、海と山の素材を組み合わせるということも容易でした。そして、旨みのベースを、今回はだしにおきました。最初のウェルカムコンソメでも、昆布だしを効かせています。また、マントンは柑橘類の街ですので、日本の柑橘類、柚子、かぼす、すだち・・・など、日本の多彩な柑橘類を使いました。すごくいいアンフュージョンになったと思います。またすぐに、3月の末に、桜を見にくる予定です。また会えるのが楽しみにしています。
ナランホ・エン・フロール。1940年代を代表する、曲の名「花咲くオレンジの木」を冠した、ロマンチックなデセール。濃厚なソルベにオレンジの香りの泡を添えて
【COOK JAPAN PROJECT】とは
2020年1月は有終の美を飾る最後の1ヶ月間となり、世界の美食家から熱い視線を集めている4名のシェフが来日。ロシアを代表するウラジミール・ムヒン氏、スペインのカタルーニャからはアントニオ・ロメロ氏とここで15年間レストランをしていた「サンパウ」カルメ・ルスカイェーダ女史、そして好評を博して再来日するペルーのヴィルヒリオ・マルティネス氏。日本の食材を使った、この日だけの特別メニューをぜひ体験してみて。
【Mirazur(ミラズール)】詳細
住所:30 Avenue Aristide Briand, 06500 Menton, France
電話番号:+33 4 92 41 86 86
取材・文/小松宏子
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