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更新日:2018.10.26デート・会食 連載

極上の頂湯が染み込んだ贅沢な味『フカヒレの煮込み』/【赤坂璃宮 銀座】森脇慶子の今月の気になるヒトサラVol.10

そろそろ肌寒くなってあったかいものが食べたくなる季節。年に一度のご褒美、にはちょっと早いけれど、森脇さんが奮発して食べたくなるというのが、こちらのたっぷりとしたフカヒレの煮込み。見てください、これ、春雨ではありません。フカヒレです。絶品の頂湯を吸い込んだ太いフカヒレは歯ざわりも風味もここでしか出会えない!

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今月のヒトサラは・・・・・・銀座【赤坂璃宮 銀座店】
頂湯が染み込んだ、フカヒレの味と香りと歯ざわりの三重奏に、箸が止まらない!『フカヒレの煮込み』

 中華料理で何が一番好き?

 そう聞かれたら、まずスープ(特に上湯)。続けて“フカヒレ”と答えるだろう。この二つ、別物のようでいて実は表裏一体。密接な関係がある。なぜなら、ゼラチン質自体の隠れた旨味はあっても、無味に近いフカヒレの味を決めるのは、上質なスープに他ならないからだ。

 極上のスープとピンのフカヒレ。この二つが出会った時、まさに無敵の美味が生まれるー。
 
 その事実を初めて体感したのは20代。確か香港の「福臨門」だったと記憶している。黄金色のスープにしっとりと沈むフカヒレを、麺のように食べた時の感動は、私の中での、一つのフカヒレレボリューションだったかもしれない。

    乾燥した状態のフカヒレ。どちらも青鮫で、130g(手前)と100g(奥)

 そして、往時のおいしさを想起させる逸品がご覧のヒトサラ。銀座「赤坂璃宮」の“フカヒレの姿煮込み”である。

「今、うちで扱っているフカヒレは、香港で買い付けた首目鮫なども
あるけれど、気仙沼産が多いね。青鮫、毛鹿、吉切の3種類がメインかな。」とは、譚彦彬総料理長。

 最近は、手間を省くため、既に戻した状態や干さずに生のままのフカヒレを用いる料理店が増えつつあるが、「赤坂璃宮」では、昔のままのやり方を踏襲。乾貨専門の戻しの達人が、乾燥のフカヒレを、一からきちんと戻している。

譚シェフ曰く「生と天日干しにしたフカヒレとでは旨味が全然違う」そうで、「『福臨門』で、ずっと戻し専門にやってきた黄維志(ウォン ウェイ チィー)さんが、長年の勘と手間をかけ、フカヒレを始め干し鮑や魚の浮き袋といった乾貨を、絶妙のタイミングで戻しています」とのこと。

    煮て3日目のフカヒレ。竹ザルをフカヒレとフカヒレの間に敷き、形が崩れるのを防ぐと共に、フカヒレ同士がくっつくのを防いでいる

 フカヒレの戻し方は次の通り。

まず、40度のぬるま湯に一晩浸けてふやかしたら、次に、ネギ、生姜、紹興酒をいれた真水でフツフツと煮立つ程度の火加減で炊いていく。3時間ほど経ったら火を止めそのまま冷まし、軽く汚れを取り除き、翌日、再度、同じ作業を繰り返す。単純作業のようだが、この時の茹で加減、一回めと二回目でどこまで掃除をするか、で戻した後の状態が微妙に変わってくるそうだ。

「フカヒレに残っている軟骨や小骨、にかわなどの汚れを取り除かないと匂いが残る。けれども、一度に軟骨をとってしまうと、今度は、形が崩れてしまう。散翅になってしまうんです。それを、どのタイミングでどこまで掃除するか、が熟練の技ですね」とは、譚シェフ。こうして汚れをきれいに取り除いたら、いよいよ本番! と思いきやさにあらず。まだ、“蒸し”の作業が残っていた。老鷄と豚赤身肉でとったスープ(ニ湯という)”で約1時間弱じんわり蒸すことで、フカヒレに下味をつけていくのだ。

 こうして、やっと“戻し”が完成。なんと4日がかりの手間のかけようだ。

    朝から6時間かけて煮込んだ頂湯。金華ハムもたっぷり入っている。もう、このスープだけで立派な一品。

 そして、いよいよ真打ち登場。

譚シェフ自慢のスープ“頂湯”の出番となる。“頂湯”とは、老鶏と豚赤身肉に金華ハムを加えて作る、広東料理の極上スープ。乾貨を用いる料理には欠かせないスープで、私的には、このスープの良し悪しで、店の格、実力が決まるとも思っている。

 和食におけるお椀的な要素があるかもしれない。同店のそれも、材料は上記と変わらない。だが、使う量がハンパではない。聞けば、老鷄15Kg、豚赤身肉7.5Kg、金華ハム3Kgを20ℓの水で炊き始め、半量になるまで6時間かけて煮詰めていくという贅沢さ!

 出来上がったスープは、まさに黄金色。透明感も素晴らしい。
このスープで、フカヒレを煮込むのだが、その煮込み方がまたダイナミックだ。

    スープにフカヒレを入れたら一気呵成。鷄油、紹興酒、塩、醤油で味付け。フカヒレが飴色になってきたら出来上がりだ。

 カンカンに熱した楽の土鍋(意外にもすっぽん鍋)に鷄油を垂らし頂湯を投入。ジュワッという快音と共に立ち上る香気にうっとりするヒマもなくフカヒレが鍋に滑り込む。約250gの青鮫のヒレだ。続けて調味料を加えたら、鍋を軽く回しつつスープが鍋肌を焦がすギリギリのタイミングで味をフカヒレに入れていく。

 火は終始強火。焙ばしい香り立ちこめ、食欲を刺激する。この作業、煮込みというには、かなりアクティブだ。

    「強火でフカヒレのにかわのコクを出す」とは譚シェフ。テーブルに運ばれてきてもなおフツフツと滾るフカヒレ。これで250g。上に添えているのは黄ニラ、金華ハム、広東白菜


「スピード感が大切。強火で一気に味を凝縮させる。そんなイメージだね」との譚シェフの言葉通り、フツフツと煮えたぎるフカヒレとスープから香り立つ艶やかな香りは、もうそれだけで充分美味。

 その一片を口にすれば、ざくりと歯が入る食感がたまらない。

 厚みのある青鮫のフカヒレなればこその快感だろう。ゆっくりと噛み締めながら味わえば、太いフカヒレの繊維一つ一つまで頂湯の旨味が染み込んでいる。スープのコクとフカヒレの滋味が渾然となって舌の奥底にまで沁み渡っていくこのおいしさこそ、まさに広東料理の真骨頂。そう思うのは、私だけだろうか?

譚彦彬シェフからひと言

    繊維が太くザクッとした歯ざわりを楽しむ青鮫のフカヒレのほか、ゼラチン質のもっちりした味わいが持ち味の吉切、肉厚な毛鹿など3種類の中から好みのフカヒレを味わってください。

赤坂璃宮 銀座店

  • 住所:東京都中央区銀座6丁目8-7 交詢ビル 5F
    電話: 03-3569-2882
    営業時間:11:30~15:00(LO)、17:30~22:00(LO) 月曜~土曜
         11:30~16:00(LO)、16:00~20:30(LO) 日曜・祝日
    定休日:無休(12月31日、1月1日除く)
    要予約

    撮影/岡本裕介

著者プロフィール

  • 森脇慶子
    「dancyu」や女性誌などで活躍するフードライター。綿密な取材と豊富な経験に基づく記事は、読者のみならずシェフたちからも絶大な信頼を得ている。日々おいしいものを探求すべく新旧問わず様々な店を訪問。選者を務める「東京最高のレストラン」(ぴあ)も好評発売中。

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