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更新日:2020.08.29グルメラボ

名店が教える「スペシャリテの秘密」|【四川料理 趙楊】の『麻婆豆腐』

一度食べたら忘れられない。何度食べても驚くほどおいしい。そう思わせるあの店のスペシャリテには、きっとつくり方に秘密があるはず。そうだ。その秘密、直接シェフに聞いてみよう。

【四川料理 趙楊】の『麻婆豆腐』

美味なる『麻婆豆腐』の秘密は
火の扱い方にあり

「火の中の宝物を取り出す」。四川料理に伝わる古いことわざだと趙楊さんは言う。この言葉が教えてくれるのは、四川料理における火の扱い方の大切さ。それは『麻婆豆腐』においても例外ではない。趙楊さんいわく、仕上がりの色が白っぽかったり、黒くなっては失敗だという。味、香り、そして色。それらの鍵を握るのが、火の扱い、というわけである。

    主役は、大豆の旨みと香りを大切にした趙楊さんの手づくり豆腐。ほか、甜麺醤、山椒オイル、豆豉は自家製で、豆板醤と花椒は本場・四川のものを使用

    主役は、大豆の旨みと香りを大切にした趙楊さんの手づくり豆腐。ほか、甜麺醤、山椒オイル、豆豉は自家製で、豆板醤と花椒は本場・四川のものを使用

「やや強火ではあるが、強すぎてはいけない」と趙楊さんは言う。火を調整する場合は鍋自体を持ち上げ、火との距離で微調整。この肌感覚とも呼べる妙技が、豆腐の食感を変え、調味料の香りを引き出していく。「大事なのは豆腐の食感と味。芯まで熱くすることで食感はやわらかくなる。あとは豆板醤の炒め方。赤色と香りを出すことを意識する」

豆腐を鍋に入れたあとも、仕上げまでは一度も火を止めない。そうすることで各食材、調味料からいろいろな味と香りが出てくるのだそうだ。「一口目に大豆の旨みと調味料の香りを感じて、そのあとにしびれと辛さがやってくる。これがすごく大事」火にかかった鍋の中でさまざまな食材が合わさり一つの〝宝物〞になる。火の扱いを丁寧にイメージしながら、ぜひつくってみてほしい。

趙楊さん

趙楊さん

「同じ食材、同じ料理でも火の使い方一つで、できあがりは、まったく変わってきます」

『麻婆豆腐』のつくり方

これが“趙流”『麻婆豆腐』の味の決め手!

主役は、大豆の旨みと香りを大切にした趙楊さんの手づくり豆腐。ほか、甜麺醤、山椒オイル、豆豉は自家製で、豆板醤と花椒は本場・四川のものを使用。

材料(6人分)

・木綿豆腐 1丁(300g)
・豆豉 小さじ0.5
・葉にんにく 20g
・合びき肉(牛5:豚5) 80g
・紹興酒、醤油、甜麺醤 各小さじ1
・豆板醤 大さじ1.5
・一味唐辛子 小さじ1
・中華スープ 400cc、適量
・水溶き片栗粉 大さじ1
・山椒オイル 大さじ1
・花椒 小さじ1

つくり方

❶豆腐は2~3cm角に切り、豆豉はみじん切り、葉にんにくは1.5cmほどの長さに切りそろえておく。

❷塩大さじ1とスープ(分量外、適量)を入れたボウルに、豆腐を入れて温めておく。

❸中華鍋に油を引き、強火で合びき肉を炒める。肉の赤みが消えて透明の肉汁が出てきたら紹興酒、醤油、甜麺醤を入れ、全体を混ぜ合わせたら一度、鍋から取り出す。

❹再び中華鍋に多めの油を引き、強火で豆板醤を炒める。豆板醤が赤くなり、香りが立ってきたら一味唐辛子を入れる。

❺熱湯で温めておいた豆腐を入れ、少量の水を入れる。豆腐全体が温まったら、葉にんにくを入れて軽く炒める。火は強火のまま。

❻スープ(400cc)、豆豉、3 で取り出したひき肉を入れ、豆腐が崩れないように注意しながら全体を混ぜ合わせ、豆腐が揺れるくらいまで煮込む。

❼水溶き片栗粉を、3回に分けて入れる。このとき、火を止めずに鍋を火から少し浮かすようにして火力を調整する。

❽山椒オイルを入れて混ぜ合わせたら火を止め、最後にひいた花椒をまぶして全体を軽く混ぜ、お皿に盛る。

『麻婆豆腐』3つのポイント

Point①

豆腐は塩を入れた中華スープで温めておく

  • 豆腐を温めるばかりでなく、【趙楊】のように自家製豆腐を使う場合、豆腐の表面に残ったにがりを流してくれるため、豆腐から大豆の旨みがより感じやすくなる。

Point②

豆板醤はたっぷりの油でよく炒める

  • 仕上がりの赤みと香りを左右する大事な工程。「炒めすぎて仕上がりが黒くなってしまったら失敗」と趙楊さん。ここに四川料理における火の扱いの大切さがうかがえる。

Point③

豆腐は揺れるまで火を通し3回に分けてとろみをつける

  • フルフルと揺れてきたら豆腐に火が通った証拠。豆腐が崩れないように鍋の中を回しながら、水溶き片栗粉は3回に分けて入れることでしっかりととろみが付く。

いかがでしたでしょうか。【四川料理 趙楊】の麻婆豆腐を、ぜひご自宅で再現してみてください。

教えてくれたのは 趙楊さん

  • 1961年、中国四川省生まれ。22歳にして、四川省成都の迎賓館【金牛賓館】の総料理長になる。現在は、予約のみの不定期営業だが、四川料理の本質を伝える技は健在。

この記事を作った人

撮影/三木 麻奈 取材・文/郡司 周(ヒトサラ編集部)

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