ミシュランの星を得て新天地でも輝く焼鳥の名店 【おみ乃】小美野氏が選ぶ日本酒5選|SAKENOMY
全国1300軒を超える酒蔵や数万を超える日本酒情報をお届けしている、日本酒ソムリエアプリ「SAKENOMY」。日本酒をよりおいしく、楽しんで欲しいと、飲食店のプロが日本酒と料理の合わせ方のコツを提案しています。今回は、焼鳥と鶏を使った季節の一品料理を織り交ぜたコースで飛ぶ鳥を落とす勢いの躍進ぶりを見せている【おみ乃 神谷町】の小美野氏が登場。どんな日本酒と串のペアリングで魅了してくれるのでしょうか。さっそくご覧ください。
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『伊達鶏の冷しゃぶ』 ×「Colors カラーズ Viridian ヴィリジアン -天鷲絨」
『季節の食材をはさんだ手羽先揚げ』 × 「龍力 奥吉川 生酛 純米大吟醸」
『せせり』 × 「醸し人九平次 human 純米大吟醸」
『かしわ』 × 「久礼 花火を見ながら晩酌する河童 特別純米 生酒」
『レバー(血肝)』× 「十四代 超特選」
【おみ乃 神谷町】
店主の小美野正良さんは、焼鳥の名店【鳥しき】で修業を積んだ後に独立。押上にオープンした自身の店は、たちまち予約困難店となり、2019年には念願のミシュランの星を獲得した。
白木のカウンターが清々しい神谷町の新店舗には【銀座小十】などで日本料理の腕を磨いた荒巻将司さんを新たに迎え、焼鳥と和食を融合させたコースで、さらなる高みを目指す。「押上とは違うアプローチで焼鳥店の可能性を探求したい」と語る小美野さんと若き和食の雄、荒巻さんが推す日本酒ペアリングの極意とは?
小美野さんが“新天地”でスタートをきったのは、2021年の3月のこと。押上の店に対して新たにオープンした神谷町は2号店と表現されることもあるが、小美野さんは「焼鳥と和食の二本柱で、押上とは違うテーマにチャレンジしたかった」と話す。
押上は焼鳥のみのおまかせコースで、お客がストップというまで串を供するスタイルだが、神谷町は日本料理と焼鳥を織り交ぜた1万3,000円のコースで季節ごとに移ろう“旬”を楽しませる。
修業時代から扱っていた伊達鶏は身質が弾力に富み、味わいが豊か。近火の強火でしっかり火を入れる技術が食べ手を唸らせる焼鳥に加え、和食をコースに取りいれたのは「季節感を表現しづらい焼鳥の世界をもっと広げたい」という思いから。
その小美野さんの意思を汲み、旬味を盛りこんだ鳥料理を作る荒巻さんに日本酒のペアリングで意識したいことは? と訊ねると「料理に合わせてお酒を飲んでみてイメージを膨らませることを大切にしています」という答えが。
場所柄もあって、最初はワインの需要が高いと予想していたが、コースの流れに合わせて日本酒を楽しむ人も多く「タレに合うお酒は?」と、アドバイスを求められることも。旬の食材と鶏を組み合わせた料理が5~6品登場するのも日本酒好きの心をくすぐる理由のひとつで、最近は日本酒のバリエーションもいっそう強化中だ。
小美野さんと荒巻さんがさまざまな銘柄を飲み比べたなかでも「自信をもっておすすめできる組み合わせ」という内容も気になるところ。コースに登場する料理と焼鳥の中からペアリングの一例を見てみよう。
1.『伊達鶏の冷しゃぶ』 ×「Colors カラーズ Viridian ヴィリジアン -天鷲絨」
「伊達鶏の旨みとフルーツトマトの爽やかさを合わせたひと皿。2種のトマトをジュレ仕立てにしたことで、より涼感を楽しんでいただけるようにしました。すっきりしたタイプというよりは“酸”でつながるお酒が合うと思ったので、新政の『Colors カラーズ Viridian ヴィリジアン -天鷲絨』を。単体で飲むとレモンのような甘い“酸”を感じますが、料理に合わせるとそれがぐっとやさしくまろやかに。料理とお酒の味が自然に重なり合い、最後に爽快な余韻を残してすっと消えるペアリングを楽しんでいただきたいです」(荒巻さん)
2.『季節の食材をはさんだ手羽先揚げ』 × 「龍力 奥吉川 生酛 純米大吟醸」
「季節によって詰める食材が変わるスペシャリテの手羽先揚げ。焼きもろこしともち米の風味、鶏の香ばしさ、とろみのある餡との相性を考えていたときに『龍力 奥吉川 生酛 純米大吟醸』と出合い、ひと目惚れならぬひと口惚れをしました(笑)。お酒だけで飲むと、骨格がしっかりしていて豊かなコクを感じますが、料理と合わせるとそれぞれの芳醇な旨みだけが重なりながら続いていくような感覚が。うすはりのグラスに注いで、その驚くべき味わい深さを楽しみたいです」(荒巻さん)
3.『せせり』 × 「醸し人九平次 human 純米大吟醸」
「日本酒を新たなステージに、という蔵の思いに共感をすると同時に、自社の田んぼで酒米を育て、酒づくりの根本にアプローチをしていることなど信念の強さに胸を打たれます。旨みと酸味、甘みのバランスのよさが突き抜けている『醸し人九平次 human 純米大吟醸』には、味わいは淡泊ながら噛むほどに力強い旨みの存在を感じるせせりを合わせたいです。伊達鶏のせせりは弾力があり、脂の質がなめらかなので、ふくよかで奥行きのあるタイプの日本酒にぴったり。最初のとろりとしたテクスチャーがさらりとした舌触りに変わるのが伊達鶏の脂質に通じるものがあり、果物のような甘さはあるけれど、もったりした重さがないので鶏の旨みをきれいに引きたててくれます。僕が目指す、毎日でも食べたくなる焼鳥を体現するような飽きの来ない理想的なペアリングだと思います」(小美野さん)
4.『かしわ』 × 「久礼 花火を見ながら晩酌する河童 特別純米 生酒」
「串物としては4~5本目にお出しするかしわ。脂ノリがよく、旨みが口のなかでぐんぐん膨らむのに合わせて「久礼」のお酒を選びました。飲んだ瞬間に花火がドンと打ち上がるように豊かな味わいが広がり、インパクトが強いのに引き際がとてもすっきりとしている。コースでお料理をお出ししているので、次にどうつなげるかを考えるのも大切。かしわはちょうど前半から後半に切り替わるタイミングでお出しすることが多いので、お酒もしっかりとした旨みがありながら、キレ感を併せ持っているのがいい。よく冷やすことで果実のような風味が爽やかに広がり、鶏のハツラツとした旨みに寄り添います」(小美野さん)
5.『レバー(血肝)』× 「十四代 超特選」
「レバーに限らず、ハツや砂肝など内臓類には部位ごとに味の個性があるので、どんなタイプの日本酒に合わせるかで、それぞれの味の印象はまるで違うものになると思っています。コース終盤にお出しするレバーはコクがあり、炭の薫香もしっかりと感じられるので、甘さひかえめでサラッとしたタレを合わせています。淡麗系のお酒と好相性ですが、『十四代 超特選』を飲んでみたら、あまりの美味しさに“度肝”を抜かれました(笑)。レバーのとろりとした食感に日本酒の上品な旨みが絡み合い、部位の個性が最高の形で楽しめるペアリングだと、ただただ感動」(小美野さん)
「自分が飽きずに飲み続けられる日本酒が好きなこともあって、焼鳥の風味を楽しむには香りが立ちすぎず、味に透明感のあるタイプが合うと思っていたのですが、実際に試してみると、お互いのいい部分を引きたてる組み合わせがあるなかで、別々に食べたり飲んだりしたときは感じなかった要素が際立ってしまうことも。焼鳥は動物性脂肪なので、酸が豊かなお酒と好相性と言われますが、固定観念にとらわれることなく、日本酒の新しい楽しみや美味しさをご提案できたらと思います。レバーと『十四代 超特選』のような運命的ともいえる組み合わせに出合えたときは、大袈裟ではなく幸せを感じます。カウンターでお客様との距離も近いので、ご意見をお伺いしながら美味しくて新しい日本酒の組み合わせをご提案させていただきたいです」
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取材・文・撮影/小寺慶子
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