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更新日:2022.02.09グルメラボ

トップソムリエ【An Com(アンコム)】大越基裕さんが選ぶ日本酒5選|SAKENOMY

全国1300軒を超える酒蔵や数万を超える日本酒情報をお届けしている、日本酒ソムリエアプリ「SAKENOMY」。日本酒をよりおいしく、楽しんで欲しいと、飲食店のプロが日本酒と料理の合わせ方のコツを提案。今回はモダンべトナミーズと日本酒の新しい組み合わせを楽しむことができる広尾の【An Com】のオーナーの大越基裕さんが登場。豊かな人生経験による圧倒的知識と絶対舌感があみ出す個性あふれるペアリングとは?

トップソムリエ【An Com(アンコム)】大越基裕さんが選ぶ日本酒5選|SAKENOMY

【An Com】の大越基裕さん発・「日本酒×ベトナム料理のペアリング」

【An Com】

オーナーの大越基裕さんは、ワインの栽培や醸造を学ぶべく渡仏。グランメゾンのソムリエを経て、日本初のワインテイスターとして世界中を旅するなかで、日本の晩酌文化は、いずれ食中にお酒を楽しむスタイルに変化していくという確信を持つように。そして、欧米やアメリカのトップレストランがそうであるようにやがて、日本でもオーガニックかつヘルシーなレストランが求められるようになるという実感もあった。

そのなかで2017年に外苑前に立ち上げた【An Di】は、それまでローカル色が強いイメージだったベトナム料理をモダンに昇華したコースとボーダレスのアルコールペアリングが話題を呼び、連日満席の大繁店に。2020年には広尾に日本酒に特化したカジュアル業態の【An Com】をオープン。

フランス料理が身近にあった大越さんがベトナム料理の店をオープンしたのは、いささか意外な展開だったかもしれない。フレンチはもちろん、世界中の食と密接に関わるなかで大越さんは、旨みという概念を持ち、かつヘルシーなベトナム料理の可能性を追求してみたくなったという。

「たとえば、ベトナム料理に欠かすことのできない調味料のひとつにナンプラーがあります。旨みと甘み、酸味がキーとなっているベトナム料理はある意味、日本酒にも共通していて、美味しさのポイントもまた、味のバランス感にある。僕にとってワインとおなじくらい日本酒は思い入れが深いもので、この素晴らしい伝統酒をもっと多くの人に楽しんでもらいたいという思いは常にありました。料理の世界がどんどん多様化してボーダレス化が進んでいるいま、日本酒の“アテ”がかならずしも和食でなくてもいいと思ったのが【An Di】のペアリングで日本酒を出した理由です。僕がペアリングでとくに大切にしているのは、料理と合わせたときの味の着地点。ワインで口内調理はできないけれど、日本酒はできるという面白さも日本酒に惹かれる理由のひとつです。」

「油分とのバランスの取り方はすべてのペアリングにおいて重要な作業です。ワインはタンニンが油を切るのに対して、日本酒は甘味・旨味で重さを合わせるか、温度が油を切る。また旨みが深い日本酒は40度くらいの温度帯が一番味わいが広がります。ベトナム料理の生春巻きなどは、ソースの存在感が大きいので、ソースの味わいのトーンに寄せますが、メインの素材は野菜なので、日本酒が重くなりすぎないように注意します。ワインには無い日本酒だけの味覚の世界があります。料理やコースの流れによっては、その日本酒だけの味覚の世界の方が良いこともあるので、固定観念を捨てて、ペアリングの楽しさ、日本酒の奥深さを、ぜひ体感してみてください。」

1.『パパイヤサラダ』 × 「七本鎗 スパークリング日本酒 awaibuki」

「前菜として注文される方が多いパパイヤサラダには、「七本鎗 スパークリング日本酒 awaibuki」をおすすめします。米の豊かな旨みが際立ちながら、低アルコールで味わいはかなりドライ。シュワッとした発泡感があり、心地よい濁りによる爽やかな旨みが印象的。冷蔵庫で4度くらいに冷やしてから味わうと、完熟パパイヤ、グリーンパパイヤとそのぬか漬けに柑橘のドレッシングを合わせたサラダの風味もいっそう引き立ち、低アルコールでフレッシュな味わいの日本酒だからこそ、このサラダの爽やかさとよりマッチします。【An Com】では七本槍の冨田さんにオリジナルで作っていただいている「七本鎗 awaibuki x An Com」もご提供しています。一般流通しているawaibukiに比べて、オリジナルは発酵をやや長めに引っ張っていただき、糖を落としてもらったことで甘みがけずれて、フレッシュな飲み口になっています」

2.『揚げ春巻き』 × 「Nechi 根知谷産越淡麗壱等米 17」

「まず“揚げ”の香ばしさにどうやって日本酒を合わせようと考えたときに、穀物様のアロマがあるタイプが面白いのではないかと思いました。また多少の苦みも油を切るので、オイリーな料理に合わせるなら多少そのニュアンスがあってもいい。「Nechi 根知谷産越淡麗壱等米 17」に使われている越淡麗は酒米としては軽い味わいに仕上がる傾向がありますが、旨みをぐっと引き上げ、美しい熟成感を出しているのが根知男山のすごさです。蔵元、渡辺さんの米作りから醸造まで一貫して行う“ドメーヌ•スタイル”に感銘を受け、ワイン同様に醸造年の個性があらわれるお酒を飲んでから日本酒をもっと学びたいと思うように。この「Nechi 根知谷産越淡麗壱等米 17」は、16度くらいで飲むと穀物様のアロマが揚げ春巻きの香ばしさとのハーモニーを奏で、35-40度のぬる燗にすると揚げ春巻きの油脂分とバランスが良く楽しめます」

3.『蒸し鶏 レモングラス辣油』 × 「ALPHA 風の森 TYPE 1」

「レモングラスを使った自家製辣油で食べる蒸し鶏の油分と辛さをバックアップできるのは、味に厚みがあり、凝縮感と旨みがあるお酒。鶏胸肉が淡白なので、ピュアでフレッシュな味わいの「ALPHA 風の森 TYPE 1」を選びました。無濾過、無加水ならではの微量なガス感も心地よく、甘みもおだやか。口のなかに広がるジューシィさとレモングラスの爽やかな風味にゆっくりと重なる感覚を楽しむなら5度くらいに冷やして飲むのがおすすめです」

4.『An Comソーセージのラープ』 × 「超王祿 本生」

「いろいろなタイプの日本酒がありますが、僕は基本的に辛い料理と日本酒の相性はあまりよくないと思っています。しかしAn Comのラープは様々なハーブやフルーツを使い、自家製ソーセージにもスパイスでやや辛さを出しているので、味にしっかりとしたパンチと風味があります。そこに素晴らしく合うと思ったのが「超王祿 本生」です。もともと骨格がしっかりしていて旨みが強い“ザ•男酒”というイメージがありますが、-5度まで冷やしても旨みがもれてくる日本酒はそうそうない。単体で飲むならもう少し温度が高くてもいいと思いますが、スパイシーな料理と一緒に食べたとき、冷やした「超王祿 本生」を合わせると、一瞬辛さが飛んで旨みと辛みが交互に行き来するのがやみつきになります」

5.『エビの生春巻き』 × 「仙禽 オーガニック ナチュール」

「ベトナム料理と聞いてまずエビの生春巻きを思い浮かべる方も多いと思いますが、An Comでは、具材にオクラやパイナップル、柴漬けを入れたりして、味わいを風味豊かにしています。つけだれにはナンプラーのほかに黒糖や柚子胡椒を使っているので、同じくらい旨みが深い日本酒と相性がいい。「仙禽 オーガニック ナチュール」はキレイに整った旨みというより、ポジティブに感じられる僅かな生ヒネのニュアンスと旨味のバランスが良く、フレッシュな味わい。この風味とバランスが魚醤など個性の立った調味料を使った料理にピタッとハマるんです。生春巻きに合わせるときの温度は5度~7度くらいが理想。生野菜のカリッとした食感やフレッシュさ、エビの旨み、調味料の塩味をやさしく包みこむ日本酒のポテンシャルの高さを感じていただきたいです」

「料理に合わせる日本酒を選ぶ場合、ロジカルにアプローチしていき、最後にフィーリングで微調整を行います。なので、いろいろなお酒との出会いが想像力をふくらませてくれているのです。僕が日本酒を学びたいと思ったきっかけのひとつに根知男山の蔵元、渡辺さんとの出会いがありますが、知れば知るほど伝統産業の素晴らしさに感銘を受けています。自然のなかで人の手によってつくられるということ、おなじつくり手でも醸造年や熟成度によって味が変わることはワインと共通していますが、食中酒としてのポテンシャルの高さもすばらしく、An Comのペアリングに日本酒を組み込んだときに、ワインという味の世界観だけでは表現しきれない部分もあると実感しました。これからも日本が世界に誇る伝統を、大切に広めていけたらと思います」

日本酒情報サイト「Sakenomy」では、「日本酒×料理」のフードペアリング情報を随時発信しております。その他にも、酒蔵おすすめの逸品おつまみや、酒蔵がSakenomyだけに教えてくれたおすすめの飲食店情報など、"食好き日本酒好き"の方必見の情報満載です!

この記事を作った人

取材・文・撮影:小寺慶子

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