<Day1>日本の魅力が詰まった街、新城。自然や温泉、食を堪能するローカル旅を|新城市ウェルネスツアー
愛知県新城市。名古屋から1時間強というアクセスでありながら、まだその魅力を知る人は少ない小さな街。しかし、そこは豊かで広大な自然と、それに育まれた和牛をはじめとした食材の宝庫で、文化や歴史が深く根付いており、日本の魅力がギュッと凝縮された素晴らしい街だったのです。
11:00 湯谷温泉駅に集合
湯谷温泉が開墾されたのは奈良時代。1300年以上もの長い歴史を持つ、知る人ぞ知る名湯です。鳳来峡の板敷川沿いに昔ながらの旅館が立ち並び、宿泊はもちろん日帰り入浴や無料の足湯など、好きな形で温泉を楽しむことができます。今夜の温泉を楽しみに、まずは餅つき体験へと向かいます。
11:30 旧門谷小学校で餅つき体験
大正時代に建てられた木造校舎が美しい、旧門谷小学校
餅つきの舞台となるのは旧門谷小学校。大正時代に建設された平屋の校舎が魅力的ですが、昭和45年に廃校。現在はこの山々と青空に囲まれた美しい風景を愛する地元の方々によって、イベントなど多目的な場として大切に使われています。
ガイドを務めるボールソン祐子さん
丁寧に説明をしてくれるのはボールソン祐子さん。長年オーストラリアで生活を送り、現在はオーストラリア人のパートナーと日本に戻り、地域おこし協力隊として英語による観光ガイドを中心に活躍。今回のツアースケジュールは全て、祐子さんによる英語ガイドを受けることができます。
「田舎にはきらびやかなご馳走はないけれど、皆で集まった時につきたてのお餅をいただくことが最大のご馳走です」
今回餅つきのレクチャーをしてくれるのは旧門谷小学校を管理する山下修一さんをはじめ、地元の皆さん。彼らにとって餅つきは年末の風物詩で、毎年12月29日にこの場所で餅つき大会を行なっているのだそう。
昔から使われている木臼を今も大切に扱っています
皆で持ち寄った餅米を薪火でじっくり1時間蒸したら準備完了。石臼が中心となった今、貴重な木製の臼に餅米を入れて、5kgほどはある重い杵でゆっくりと餅米を潰していきます。全体が丁寧に潰せたら、ついに餅つきです!
ポイントは「力を抜いて、持ち上げた杵の重さを利用してそのまま落とすようにつくこと」だそう。合いの手のリズムと共にお餅をつきます。パチパチという焚き火の音や炭の香り、ほかほかの餅米の湯気まで、全てが新鮮。
できたてのお餅を一口サイズに整えたら、好みの味付けをして完成です
普段スーパーで買うお餅と、このつきたてのお餅はまるで別物! ギュッと詰まったお米の密度や、お米そのものの甘みや風味が濃く、むっちりとした食感の強さも別格。青い空の下、皆でいただくお餅はまさに「ご馳走」でした。
今回の味付けは磯部(焼き海苔と醤油)、粒あん、きな粉、大根おろし
13:30 鳳来寺山へ
さて、お腹が満たされたら食後の運動です。ここ鳳来寺山は、山の中腹に「鳳来寺」を構える標高695mの山で、1425段の石段が続いています。
木漏れ日が美しい鳳来寺山の入り口
鳳来寺は、西暦703年に「利修仙人」が開山したとされ、当時、王位についていた文武天皇の病気を、利修仙人が7日間の祈祷で治したことの褒美として与えられたことが始まりとされています。
道中に現れる利修仙人像
山全体が国の天然記念物にも指定される雄大な自然を誇る鳳来寺山ですが、秋には紅葉の名所としても名高く、「仏法僧」と鳴くことで知られるコノハズクの生息地とも言われています。
石段を1/4ほど登ったところにある「仁王門」
長く続く石段の表参道は見どころも豊富。この「仁王門」は江戸幕府の第3代将軍、徳川家光によって1651年に建立され、国の重要文化財となっています。
仁王門の両脇で目を光らせるのは「仁王像」。新城市の指定文化財になっています
一段一段石段を登りながら、広大な自然にも耳を傾けます。奥三河の自然が生み出す鳥の声や木々のざわめきは、疲れた心を鎮め、身も心も癒されていくのを感じます。
名木「傘杉」は最大の見どころ
現在、日本で第2位とされる高さ60.8mを誇る「傘杉」は推定樹齢800年! 空に向かって大きく手を拡げ、傘を差したようにも見えるその姿は圧巻。新日本名木百選にも選ばれ、最高級とされる美しさです。
昔は、鳳来寺のほかにも16ものお寺があったとされ、その跡が分かる場所が多く残っています。歴史を体感しながら長い石段をゆっくりと登ること1時間、ようやく鳳来寺に到着です。
本尊には薬師如来を祀る鳳来寺
鳳来寺の絵馬には、必ず鏡がついています
古くから、鳳来寺の薬師如来に祈る際は「願い事を写し叶える」とされる鏡を奉納する習わしがあり、現在では鏡がついた「鏡絵馬」が奉納されています。
薬師如来の側には、十二神将(じゅうにしんしょう)という薬師如来の世界とそれを拝む人々を守る大将がいます。十二の方角を守っていることから、干支(十二支)の守護神としても信仰され、頭の上には干支の動物が乗っているのもユニークです。自身の干支を拝むことでご利益があるのだそう。
また鳳来寺には、かの有名な徳川家康の生誕に関する重要な逸話が残されています。家康の父「松平広忠」とその妻である「於大の方」は、世継ぎ、つまり男児を授からないことを憂いて鳳来寺に籠って祈願し、それが実を結んで家康を授かりました。家康が誕生したのは、1542年12月26日午前4時、まさに寅の年、寅の日、寅の刻だったのです。
この時、鳳来寺にある十二神将のうち「寅」の守護者である「真達羅大将(しんだらたいしょう)」が消え去ったことから、家康は真達羅大将の化身だと言われ、 さらに家康が死去した後、真達羅大将はもとの位置に戻ったというエピソードも残るほど、家康に縁のあるお寺なのです。
山頂からの眺めも絶景。「ハートマークが見える」とフォトスポットにもなっています
18:00 インストラクターによる「スマートバーベキュー」
バーベキューインストラクターの藤田さん
山登りで身体を動かした後はバーベキューです。「バーベキューインストラクター」の資格を有する藤田さんが地元の食材を料理してくれます。通常「バーベキュー」と聞くと、“屋外で炭を起こして食材を焼くこと”を想像しますが、インストラクターの藤田さんが実践するのは「スマートバーベキュー」です。
ピーマンは切らずに丸ごと焼くのも藤田流。切らないことで野菜の旨みや水分が保たれジューシーに仕上がる
「スマートバーベキュー」とは、自分だけでなくゲストや、その土地の環境や社会にも気を配った優しいバーベキューを目指したもので、おもてなしの心を説いた日本の茶道の「利休七則」を元に作った「バーベ九則」を守り、全方位に優しく、その上でおいしいバーベキューを楽しもう、という考え方です。
ただ焼くだけではなく、グリルの温度やお肉の内部温度、時間まで管理することで、食材を最もおいしい状態に引き上げるといいます
藤田さんの「スマートバーベキュー」では、使用する食材をすべて下準備しています。野菜はオリーブオイルでコーティングしたり、シカ肉は塩麹とガーリックで下味をつけるなどの工夫がされ、また焼き方も食材によって丁寧に調整しています。その姿はさながら料理人のよう……!
名古屋にある専門店「ミートガイ」のチキンとポークのソーセージ。お肉の旨みが詰まっています
アンガスビーフの肩ロースは、強火で一気に火入れすることで柔らかくジューシーに
2018年からバーベキューインストラクターとして本格的に活動を始めた藤田さん。昨年だけでも40回の実績を持ち、食材や環境を愛する藤田さんに信頼を寄せる人が多くいることが伝わってきます。気持ちよく、楽しく、おいしい夜はあっという間に過ぎてしまいました。
地元の野菜からステーキまで、バーベキューの概念が変わる料理の数々に歓声が上がります
撮影/板橋 史裕 取材・文/宿坊 アカリ
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