石川県・小松市【Auberge “eaufeu”(オーベルジュ オーフ)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第50回
美食を観光の柱にすることを掲げる石川県・小松市のイベント「小松SAKETRONOMY」に参加するため【オーベルジュ オーフ】に出かけてきました。小松駅から車で30分ほどの美しい田園のなかに建つオーフは、地元の廃校をリノベしたオーベルジュで、隣には農口尚彦研究所があります。農口杜氏は酒造りの神様とも言われる大御所。そのお酒に合わせて、有名シェフが地元の食材をふんだんに使い料理をするという企画は今回で7回目を迎えます。
今回はオーベルジュ・オーフの糸井章太シェフ、それと隣の富山県で独自の世界観が世界の注目を集めているレヴォの谷口英司シェフが、料理を振舞ってくれました。
田園風景のなかでランチ
大きな窓からは光が注ぎ、外には田園風景が広がります。近くの石切り場も有名な場所で、その日華石の皿にアミューズが乗せられて登場しました。
トマト麹につけた猪のハム、サバの糠漬け、焼酎に漬けたドジョウのフリット、クマの手のクロケット、毛ガニと根セロリ、そして有機純米の酒米をすっぽんのコンソメで炊いたもの。どれも地元感のある、伝統的かつ斬新なものです。
合わせるお酒は「Limited Edition NOGUCHI NAOHIKO 01 2018」。農口さんが酒造り70年を記念して、自ら選りすぐった限定酒だそうで、この土地ならではのペアリングにテンションが上がります。
2品目は、ふぐの茶わん蒸しです。岩のりがアクセントで、白子の泡のソースと近くの山で採れた黒文字の新芽の香りを移した熊の脂。「Honjozo 2019」が出されます。原酒を火入れせずに冷蔵したまろやかな定番酒ですが、それをひれ酒で頂くと旨みが広がり、体が少し暖かくなります。
3品目は、生姜などでマリネされた新鮮な鰯。同じお酒を5度という温度で提供されます。この温度では吟醸の趣となります。ソーヴィニオン・ブランのような果実感を感じます。酸が引き締まり、脂の乗った青魚によく合います。
提供されたココナツオイルのバターも薫り高く、パンに塗って魚の酢漬けなどと合わせると、それだけで食事が完結してしまいそう。
4品目は、ボタンエビを塩麹でマリネしたものと、甘いビーツ、レフォールを液体窒素にしたもの。「Junmai 2021」を合わせます。これは地元小松産の五百万石の酒米でつくるもので、滑らかです。麹が料理とお酒をうまくつないでくれている感じがします。
5品目はモッツアレラです。生ハムのジュレ、ニラオイル。マスタード、わさび菜。「Yamahai Aiyama 2018」が10度で出されます。お酒の甘酸っぱい乳酸感とチーズまわりの酸味と苦みのアクセントが面白い。
6品目は、新鮮な鹿のハムを炭焼きにしたレンコンでサンドしたもの。炭火であぶった柚子の皮の香りがおいしさを引き立てます。「Junmai Daiginjo 2018」。これはワイングラスでいただきたい感じです。香りがよく立つように常温で提供されます。
お酒と料理の見せる表情の豊かさ
7品目は、クマのしゃぶしゃぶ。菊芋やシイタケが包まれています。熊肉を口に含むと口の中で甘い脂が広がります。それにあわせるのは「Yamahai Gohyakumangoku 2018」。熱燗です。これも五百万石をつかったお酒ですが、クマの脂とうまく混ざり合って見事なペアリングになっています。
8品目は、素麺です。いわゆるレヴォ鶏のスープにヤギのチーズを溶いたスープがおいしい。「Yamahai Miyamanishiki 2018」が人肌で提供されます。フルーティで喉越しも爽やかなお酒で、すっきりした口直しになります。
9品目は、エイの炭火焼。白山のなめこ。発酵白菜ソースにラー油などを加えた、サンラータンのような味わいになっています。合わせる「Junmai Ginjo 2019」は地元の有機の五百万石をつかった未発売のもの。フレッシュ感とまろやか感が余韻として残ります。
10品目は、仔羊です。白山で実験的に育てられているものだそうで、香ばしく薪焼にされ、ソーセージのタコスが添えられています。癖のない優しいおいしさを湛えています。
お酒は2種出されます。「Yamahai Aiyama 2018」は上燗で。酸味がより引き立ちます。そしてもうひとつは「Sakekasu Shochu 2020」。焼酎です。酒粕を蒸留したものでしっかり味わいを残しながら切れ味がすばらしく脂を切ってくれます。
そしてデザートは2種。苺のデザートには「Junmai 2021」、チョコレートには「Yamahai Gohyakumangoku2018」が合わされました。
最後に農口杜氏、谷口シェフ、糸井シェフが、それぞれこの土地への思いやポテンシャルについて話をされました。
日本酒だけで、これだけの表情が見れることにまず驚くわけですが、それらの温度帯を変えながら、料理にどう寄り添わせていくか、ソムリエが試行錯誤を繰り返されたのもよく分かります。
目の前に広がる田んぼを眺めながら、テロワールを満喫できる空間こそ、こういった地方のオーベルジュの魅力なんだと再認識した次第です。
【Auberge “eaufeu”】
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電話:0761-41-7080
住所:小松市観音下町ロ48
アクセス:店舗詳細はこちら >
この記事を作った人
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。
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