創作中華料理と“逆ペアリング”、至高の味覚体験を。1チームで掴む、新たなステージ|【ワイノログ】広尾
繊細、余韻を感じる旨み、そして伝統を守りながら生み出される革新的なアレンジに驚く、記憶に残る存在感。これが、【ワイノログ】へ初めて訪れた際に感じた印象です。新たなペアリングとともに楽しむ創作中華とは。お店の軸となる3人と、注目の味覚体験の一部をご紹介いたします。
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上質と心地よさを兼ね備えた大人の一軒
新たな挑戦、その想いと出会い
創作中華と逆ペアリング
上質と心地よさを兼ね備えた大人の一軒
優しい灯りに誘われる、和モダンな一軒
広尾駅から徒歩3分。ふいに現れる、瓦屋根の和モダンな一軒。街の中に静かに佇むその場所が、2024年3月にオープンした【ワイノログ】です。引き戸を開けて中へ足を踏み入れると、そこには艶やかに黒く光るカウンター席をはじめ、上品な設えが至る所に施された大人空間が広がっています。
カウンター席。そっと灯りをともした金のテーブルライトが寄り添い、落ち着いた雰囲気にホッと一息つきたくなります
その中、快活な声で出迎えてくださったのは、同店のオーナーシェフ皆川浩正さん。気付けば店内には勢いよく鍋を振る音が響き始め、食欲をそそる香りが辺りを包み、楽しく話す人々の声が絶えません。外から見た時の静寂そうなイメージとは一変、上質でありながら肩肘張らずに会話を楽しみ、リラックスした状態で食事を楽しむことができるその空間に、いつまでも居続けたくなるような居心地の良さを感じます。
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グループとの利用にも使いやすいテーブル席
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“円卓”へのオマージュを思わせるテーブル席も
新たな挑戦、その想いと出会い
皆川さんは弱冠23歳の時より料理人の道へと進み、ザ・ペニンシュラ香港など、約10年に渡り本場の地で広東料理を極めていらした実力派。帰国後は【赤坂櫻花亭】で総料理長としてご自身の料理と更に向き合い、巷でも本格的な広東料理が味わえるお店として人気を博していらっしゃいました。
香港のホテルやや国内レストランの総料理長として、約30年間中華料理を作り続けてきた皆川浩正さん
そうした30年以上にわたるプロとしてのご経験を持ちながら、新店という“新たな挑戦”を始められることになったきっかけには、ある2人との出会いがあったと言います。それが、まさに【ワイノログ】の構想を練っていた2人のオーナー。経済誌Forbesの「アジアを代表する30歳未満の30人」にも選ばれた起業家・エンジニアの塩浜龍志さんと、海外でのご経験も長く海外投資ファンドで数々の企業に投資をされてきた仲田真さんです。学生時代より仲を深め、ワインも大好きと語るこのお2人がお店を実現させようとする中、巡り合った皆川さんのお料理は「本当においしい」と思われたそう。
ベテラン料理人でありながらも、若手の知識や新しいものを柔軟に取り入れていくことに「全く抵抗が無いんです」と笑顔で、むしろワクワクと話す皆川さん。その持ち前の探求心と、伝統の技法を守りながらも新しいものを作り出し、これまでにないお店を作りたいという気持ちがオーナー2人の想いとも重なったご様子です。
創作中華と逆ペアリング
ワインのおいしさを引き出すのに“ぴったり”な、アレンジの効いた創作中華の数々
新たなペアリング体験ができるとしても話題になりつつある、同店の“逆ペアリング”。通常、ペアリングと言えばお料理に合わせワインをセレクトしていくものですが、ここで行っているのは選び抜かれたワインに合わせて料理を提供するというもの。
そして特筆すべきポイントは、単にワインに味を合わせていくような方法ではなく、皆川シェフの「中華料理の伝統と革新を融合させたワインにピッタリと合う料理をお出しする」という、熟練の技から成るアレンジの効いたお料理が並んでいくところにあります。小籠包や水餃子など名前こそ中華の定番的なお料理であっても、出てくる上品な見た目のそれは、口にすると繊細な味わいと細やかな手仕事に驚くものばかり。ソムリエによるワインとの相性を聞く時間も楽しみながら、ゆったりとマリアージュを堪能します。
~この日の11品の広東料理とペアリングコース、一部をご紹介~
『叉焼、皮蛋』
2日かけて焼いた豚叉焼と、青島皮蛋。特に皮蛋は、そのクセのある定番の味わいを想像しながら口にすると……衝撃です。表面を天ぷらのように揚げて衣をまとわせるなどアレンジを加えていることで、驚くほどにマイルドな仕上がりに。ツンと尖った感覚はなくむしろミルキーな味わいに変化しており、中にはここに来たことをきっかけに皮蛋が好きになった、という方もいる程だそうです。あえてにごりをいれた、酸味と相性の良い微発砲ロゼと共に。
『魚の小籠包』
小籠包の中身としては珍しく、鯛を使用しているという一品。ワインとの相性を考え、チーズとバターでソテーし、酸味や魚独特の臭みを飛ばすことでマイルドに食べやすく仕上げられています。
『蒸ホタテ』
香港の代表的なホタテ料理を基にアレンジをしたもの。ホタテをただ蒸すのではなく、間に海老のすり身や擦ったリンゴを入れることでふわっとした食感に。上から乗せた白髪ねぎは、事前に白ワインにつけるなどの工程を踏むことで味が馴染みやすくされており、伝統的な手法に皆川さんならではの工夫が詰まっています。ガーリックがアクセントのこちらの一品は、樽感のある甘いワインとともに。
『鶏の水餃子』
お店の代表メニューでもあるトムヤム坦々スープの水餃子。トマトが添えられたこちらのスープと、みずみずしいオレンジワインの相性は抜群で、長く続く余韵とともに楽しみます。
『春巻きと蜂蜜』
皮にチーズを加えることでホワっと香り立つ春巻き。中には鱈が入っていることで重くならずに食べやすく、パリパリと軽やかな食感の上から好みで蜂蜜をかけていただきます。
『牛肉と黒胡椒』
とても柔らかく焼かれた、黒胡椒と赤ワインのソースをかけた盛り付けも美しい牛のフィレ肉です。肉まんの生地にあたる部分でつくられた甘みのあるパンが添えられ、最後の一滴まで一緒に食べたくなります。なおお肉にかかっている黒胡椒のアクセントは、ブラックチェリーを思わせる赤ワインとの相性もピッタリ。また時間が経ちワインが開いてくると合わせるソースや黒胡椒との印象も変わり、食べ進める中でよりわかりやすく変化するマリアージュを楽しむことができる一皿です。
『おこげ』
先ほどの赤ワインから変化を付けて軽やかなワインを、という流れに乗って楽しむ料理が、こちらの香ばしい『おこげ』です。1組ずつ、石焼きの器で出していただけるのも嬉しいところ。グツグツと音のする焼き立ての餡には、9種の具材が入っています。メニューを考案していた当初、チャーハンにすることも考えられたそうですが、コースの〆として重くならないようにとおこげにすることに辿りついたのだそう。なおワインは、ダージリンのような香りのフルーティで華やかな白ワイン。おこげの熱さとワインの冷たさが絶妙です。
中華という言葉から連想される“こってり”という言葉からは真逆の位置にあるような、皆川さんの繊細な味わいと細やかな創作から成る中華料理。伝統的な調理方に、日本のだしや素材、漢方の知識などを盛り込んだお料理は、自然体ながら印象に残る存在感があるものばかりです。
希望によってはオプションで、優しい味わいの玉子麵に甘みのあるネギが乗った香港式中華そば「ミニ葱そば」(+800円)を付けることも可能。ラストのデザートにはドバイでパティシエをされているというオーナーの妹さん監修の、クリームブリュレの製法で仕上げた濃厚な杏仁豆腐にティーペアリングが付き、最後まで味の楽しみが尽きません。
ワイン+ログ(記録する)が店名【ワイノログ】の由来となっており、今後は飲んだワインを記録するシステムを開発し、より良い提案ができるようにすることも考えているそう。3人の見据える先は、まだまだ進化し続けています
思わず“相思相愛”という言葉が浮かんでしまう3人、1チームが主軸となった、おいしさに満ち溢れた【ワイノログ】。繊細で余韻を感じる旨みの口福がフワッと続き、お店をあとにしてからも幸せな気持ちで包んでくれます。
鈴アヤ(ヒトサラ編集部)
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