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更新日:2025.05.02食トレンド

名店「青空」で研鑽を積み、「鮨祥」で店主を務めた真摯な鮨職人・三井 祥さんの新たな挑戦|麻布十番【みつい】

東京屈指の美食エリア・麻布十番に、2025年5月1日に誕生した鮨店【みつい】。名店【青空】で8年半腕を磨き、西麻布の【鮨祥】で店主を務めた三井 祥さんが、満を持して新たに開く舞台です。プレオープンに一足先に訪れ、渾身のつまみと握りを味わってきました。研ぎ澄まされた技と誠実な人柄が織りなす、いま注目のお店です。

麻布十番のみつい

日本の鮨文化を継承し、次代を切り拓く気鋭の新店

麻布十番に誕生した【みつい】は、鮨職人・三井 祥さんが店主を務める注目の新店。幼い頃からモノづくりに親しみ、日本の伝統文化に深い憧れを抱いてきた三井さんは、自然と鮨職人の道を志すように。高校卒業後、地元・長野県から上京し、ホテルで和食を学びながらふぐ調理師免許も取得。その後、銀座の名店【青空】で高橋青空さんに師事し、8年半にわたって技術を磨き、西麻布の【鮨祥】では店主を任され、確かな腕を磨き上げてきました。

    「お客様に一期一会の時間をゆっくりとお楽しみいただきたい」。そんな店主の思いを汲んだ、白木の変形カウンター(9席)

    「お客様に一期一会の時間をゆっくりとお楽しみいただきたい」。そんな店主の思いを汲んだ、白木の変形カウンター(9席)

  • 店の入り口に掲げられた木札は、師匠である【青空】の高橋青空さんが書いたもの

    店の入り口に掲げられた木札は、師匠である【青空】の高橋青空さんが書いたもの

  • メインカウンターとは別に、4 名まで利用可能なカウンター個室も完備

    メインカウンターとは別に、4 名まで利用可能なカウンター個室も完備

また、女将・美紀さんによるペアリングも見逃せません。沖縄県出身の美紀さんがセレクトした甕出し古酒や泡盛をアクセントに、日本酒を主軸とした「アルコールペアリング」(7杯/7,700円 サ5%別)を提案。羽釜で50~60度に温める「蒸し燗」など、温度帯にも細やかな工夫を凝らします。シャンパーニュやブルゴーニュ中心のワインもラインアップし、料理との相乗効果を一層高めています。

    店主の三井 祥さんと、女将の三井 美紀さん

    店主の三井 祥さんと、女将の三井 美紀さん

コースはつまみと握りで構成、炭火焼きの演出にも注目

【みつい】では、旬の素材をふんだんに使ったつまみ5〜6品と、握り12〜13貫で構成されるおまかせコース(27,500円)を用意。高騰する鮨業界にあって、誠実さと良心が感じられる価格設定です。江戸前の伝統技法を大切にしつつも、出身地・長野や全国各地から厳選した食材も巧みに取り入れ、つまみや握りに独自の個性を加えています。なかでも注目は、炭火で香ばしく焼き上げた魚を合わせた焼き鮨。炭火の香りとともに、コースに豊かな変化と余韻をもたらしています。

    シャリには、羽釜で丁寧に炊き上げた長野県産コシヒカリを中心とした高地米を使用。口の中でほどけるような繊細な仕立てにより、ネタと絶妙な一体感を生み出しています

    シャリには、羽釜で丁寧に炊き上げた長野県産コシヒカリを中心とした高地米を使用。口の中でほどけるような繊細な仕立てにより、ネタと絶妙な一体感を生み出しています

さらに、店内奥の炭台では、三井さんの旧友でイタリアンの【トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ】で研鑽を積んだ君波真吾さんが、炭火料理を担当。コースに新たな表情を加えています。

    炭火焼きを担当するのは、【トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ】で腕を振るっていた君波真吾さん

    炭火焼きを担当するのは、【トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ】で腕を振るっていた君波真吾さん

実食──素材と技がひとつになった、流れのある鮨体験

店主こだわりの変形カウンターは、実際に腰掛けてみて初めて、その設えの妙に気づきます。カウンターの端同士が顔を合わせる設計により、店主・三井氏を中心にゲスト同士の会話が自然と生まれ、店内には温かな一体感が広がります。

つまみ

コースはつまみからスタート。「真鯛」や「ホタルイカ」「あん肝ポン酢」など、早くもお酒が進むつまみが並びます。店主と女将によるペアリングは、スパークリング日本酒で華やかに幕を開けました。

    米の甘みがほんのりと漂うスパークリング日本酒「七本槍 awaibuki」。爽やかな泡とともに、コースへの期待感を高めてくれます

    米の甘みがほんのりと漂うスパークリング日本酒「七本槍 awaibuki」。爽やかな泡とともに、コースへの期待感を高めてくれます

    1皿目:神経締めの『真鯛』。ふっくらとした身に、岡山産の花山椒が香りを添え、透明感あるあさりのだしとともに味わう一品

    1皿目:神経締めの『真鯛』。ふっくらとした身に、岡山産の花山椒が香りを添え、透明感あるあさりのだしとともに味わう一品

    2皿目:串打ちされた『ホタルイカ』。肝のクリアな旨みが際立ち、ここでも日本酒がよく進みます

    2皿目:串打ちされた『ホタルイカ』。肝のクリアな旨みが際立ち、ここでも日本酒がよく進みます

    前割りされた「泡盛」。香り豊かで、食材の風味を一層引き立てます

    前割りされた「泡盛」。香り豊かで、食材の風味を一層引き立てます

    3皿目:『とらふぐの刺身と自家製あん肝ポン酢、甘エビのクース(泡盛)と塩麹漬け』。8.5kg超の江戸前とらふぐを用いた刺身は、濃厚な旨みが凝縮。泡盛との相性も抜群です

    3皿目:『とらふぐの刺身と自家製あん肝ポン酢、甘エビのクース(泡盛)と塩麹漬け』。8.5kg超の江戸前とらふぐを用いた刺身は、濃厚な旨みが凝縮。泡盛との相性も抜群です

    血合いの多い魚に合う「宝剣」

    血合いの多い魚に合う「宝剣」

    4皿目:炭火で炙られた『初鰹』。脂がのっていて、厚みもあるので歯ごたえもしっかり。横に添えられているのはお口直しの新玉ねぎの酢漬け

    4皿目:炭火で炙られた『初鰹』。脂がのっていて、厚みもあるので歯ごたえもしっかり。横に添えられているのはお口直しの新玉ねぎの酢漬け

    5皿目:趣向を凝らした焼き寿司『のどぐろの焼き寿司』。ほのかな酸味をまとった酢飯と、餡かけに仕立てたのどぐろの濃厚な旨み。上には、収穫の際に1回しか触れないという「ワンタッチきゅうり」を添えて

    5皿目:趣向を凝らした焼き寿司『のどぐろの焼き寿司』。ほのかな酸味をまとった酢飯と、餡かけに仕立てたのどぐろの濃厚な旨み。上には、収穫の際に1回しか触れないという「ワンタッチきゅうり」を添えて

握り

ここでつまみが締めくくられ、いよいよ握りへ。淡白なイカから始まり、鮪は中トロ・赤身・大トロと三段階で展開。小肌へと続く構成は、味や食感、余韻のバランスが綿密に計算され、心地よいリズムで進んでいきます。

    瑞々しい旨みを持ったネタと相性の良い「narai Kinmon」

    瑞々しい旨みを持ったネタと相性の良い「narai Kinmon」

    1貫目:「さかな人」長谷川大樹さんから届く、神経締めの『アオリイカ』。口に入れた瞬間にとろける、繊細な仕立て

    1貫目:「さかな人」長谷川大樹さんから届く、神経締めの『アオリイカ』。口に入れた瞬間にとろける、繊細な仕立て

    2貫目:小樽産の『じゃこ』。炭火の香りがふわりと立ち上る、香ばしい一貫

    2貫目:小樽産の『じゃこ』。炭火の香りがふわりと立ち上る、香ばしい一貫

    「春霞 純米酒 花ラベル」は羽釡を使って蒸し燗に。フレッシュな旨みがいっそうふくらみ、鮪の脂がよりまろやかに感じられる

    「春霞 純米酒 花ラベル」は羽釡を使って蒸し燗に。フレッシュな旨みがいっそうふくらみ、鮪の脂がよりまろやかに感じられる

    中トロ、赤身、大トロと3貫続けて供する鮪は、長く懇意にしている「やま幸」から。「日本海側の定置網で獲れる鮪は、酸味と旨みのバランスがよく、自身の握りとの相性がいい」と三井さん

    中トロ、赤身、大トロと3貫続けて供する鮪は、長く懇意にしている「やま幸」から。「日本海側の定置網で獲れる鮪は、酸味と旨みのバランスがよく、自身の握りとの相性がいい」と三井さん

    3貫目:能登の藻塩を使った『中トロ』。中トロの濃厚な味わいを、塩の塩味が締めてくれます

    3貫目:能登の藻塩を使った『中トロ』。中トロの濃厚な味わいを、塩の塩味が締めてくれます

    4貫目:とっても艶やかで美しい『漬けマグロ』。1本釣りで釣った=活きがいい鮪を使用しているため、身がきめ細か

    4貫目:とっても艶やかで美しい『漬けマグロ』。1本釣りで釣った=活きがいい鮪を使用しているため、身がきめ細か

    5貫目:濃厚な味わいの『大トロ』。口の中でとろりと蕩けます

    5貫目:濃厚な味わいの『大トロ』。口の中でとろりと蕩けます

    6貫目:天草の投網で捕れた『小肌』。魚の脂の質や量によって3~4段階に分けて塩を当て、溌剌とした酸と脂の旨みがしなやかに重なり合うように酢締めに

    6貫目:天草の投網で捕れた『小肌』。魚の脂の質や量によって3~4段階に分けて塩を当て、溌剌とした酸と脂の旨みがしなやかに重なり合うように酢締めに

    蕎麦の実をおだしで炊いた『蕎麦の実のスープ』。一呼吸おくように、滋味深い温かさが体に沁みわたる一杯です

    蕎麦の実をおだしで炊いた『蕎麦の実のスープ』。一呼吸おくように、滋味深い温かさが体に沁みわたる一杯です

    特別栽培された古代米を使った日本酒「伊根満開 古代米酒」。果実のような甘酸っぱさも。たおやかな旨みや甘みの輪郭がより濃く感じられる

    特別栽培された古代米を使った日本酒「伊根満開 古代米酒」。果実のような甘酸っぱさも。たおやかな旨みや甘みの輪郭がより濃く感じられる

    7貫目:濃厚な味わいの『鯨』。ぎゅっと詰まった赤身の濃厚な旨みと、やわらかい肉質が魅力的

    7貫目:濃厚な味わいの『鯨』。ぎゅっと詰まった赤身の濃厚な旨みと、やわらかい肉質が魅力的

    8貫目:やわらかな食感の『ホッキガイ』。歯ごたえを残しつつも、しっとりとした食感に仕上げられ、噛み締めるごとに磯の香りと甘みが広がります

    8貫目:やわらかな食感の『ホッキガイ』。歯ごたえを残しつつも、しっとりとした食感に仕上げられ、噛み締めるごとに磯の香りと甘みが広がります

    9貫目:旨みと甘味が最大限に引き出された鹿児島県産の『車海老』

    9貫目:旨みと甘味が最大限に引き出された鹿児島県産の『車海老』

    水酛製法らしい甘酸っぱさが舌に心地よい日本酒「HANATOMOE 水酛×水酛」。濃厚な風味のネタの旨みを豊かに伸ばす

    水酛製法らしい甘酸っぱさが舌に心地よい日本酒「HANATOMOE 水酛×水酛」。濃厚な風味のネタの旨みを豊かに伸ばす

    10貫目:濃厚で甘い『雲丹』は青森県産のものを使用

    10貫目:濃厚で甘い『雲丹』は青森県産のものを使用

    11貫目:醤油やみりんなどでふっくらと上品な風味に炊き上げられた『穴子』。ふわふわとした食感とともに、舌の上でやさしくほぐれていきます

    11貫目:醤油やみりんなどでふっくらと上品な風味に炊き上げられた『穴子』。ふわふわとした食感とともに、舌の上でやさしくほぐれていきます

    12貫目:師匠・青空から受け継いだ技で仕上げた『玉』

    12貫目:師匠・青空から受け継いだ技で仕上げた『玉』

握りの後は、優しい味噌汁、そして驚きのイタリアンドルチェ。イタリアン出身の君波氏が手がける『クルミのセミフレッド』が登場し、和の流れに自然な形でイタリアンのアクセントを添えます。

    海老の頭からとった濃厚な出汁がたっぷり溶け込んだ味噌汁。心と体を優しく包み込むような味わいで、コースの余韻をさらに深めます

    海老の頭からとった濃厚な出汁がたっぷり溶け込んだ味噌汁。心と体を優しく包み込むような味わいで、コースの余韻をさらに深めます

    デザートは、イタリアン出身の君波氏による本格ドルチェ『クルミのセミフレッド』。香ばしいクルミと濃厚なミルクの風味が絶妙に溶け合ったアイスクリーム。ここにきて、本格的なイタリアンドルチェが来るのは新鮮!

    デザートは、イタリアン出身の君波氏による本格ドルチェ『クルミのセミフレッド』。香ばしいクルミと濃厚なミルクの風味が絶妙に溶け合ったアイスクリーム。ここにきて、本格的なイタリアンドルチェが来るのは新鮮!

コース全体を通して感じたのは、江戸前の技を基本に据えながらも、出身地や全国の良質な食材、そして炭火焼やペアリングによる“流れ”を意識した、柔軟かつ精緻な構成力。特に店主と女将によるアルコールペアリングは、ただ料理に寄り添うだけではなく、酒そのものの個性でシーンを彩る提案力に感動しました。

そんな、次代の鮨を牽引する新生【みつい】。予約困難店となる前に、ぜひ体験してみてください。

PROFILE

  • 三井 祥(みつい しょう)。1988年、長野県生まれ。武蔵野調理師専門学校を卒業後、新宿のホテル「ヒルトン東京」の日本料理店で料理人としての基礎を体得。三つ星店 銀座【青空】の高橋青空氏の鮨に惚れ、門戸を叩く。8 年半の修業後、西麻布【鮨祥】の付け場を務め上げ、2025 年5月、麻布十番に【みつい】を開店。

席数:メインカウンター 9 席 / 個室カウンター 4 席
コース内容: 27,500 円 ( サービス料 5% 別途 ) / つまみ 5~6 品、握り 12 貫ほど、デザート
ペアリング: 7,700 円 ( サービス料 5% 別途 ) / 7 杯
お子様連れ:中学生以上 (※大人と同じコースを召し上がれる方のみ)
オープン日:2025年5月1日 (木)
予約サイト:https://omakase.in/ja/r/ng595754

この記事を作った人

嶋亜希子(ヒトサラ編集部)

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