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更新日:2017.06.09グルメラボ 連載

幸せのとんかつ from「ヒトサラSpecial」

とんかつをこよなく愛する賢者が太鼓判を押す、とんかつ店をご紹介します。タベアルキスト・マッキー牧元氏がオススメする2店がこちら!

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【成蔵】

淡色の衣のなかに潜む、ジューシーで旨み濃い豚

 淡く色づいた大ぶりのとんかつ。口に入れると確かに感じられる、サクッと軽快な食感。しかしそれは一瞬のこと。衣の存在は幻のように消え去り、奥から肉のジューシーな旨みが立ち上がってくる。口のなかで変化する、香ばしさと力強い旨み。畳みかけるようなおいしさに箸は止まらず、気づけば大ぶりの肉塊が皿から消えている。これはまるで魔法だ。

    調理工程に科学的裏付けを求める三谷氏。だが揚げ上がりを判断するのはパン粉の立ち方や色、音など五感頼り

    ロースは繊維質が細やかで脂がしっかりしたもの、ヒレなら筋が少なく太さが均一なものを厳選して仕入れる

 無論、タネも仕掛けもある。その筆頭が、揚げ油の温度だろう。たとえばロースならおよそ110度からスタートし、徐々に温度を高めながらじっくりと揚げる。油から取り出す段階でも、温度は150度程度だ。温度を上げないことでパン粉の水分は抜けるが、内部の豚は蒸し焼き状態。衣の香ばしさと柔らかい肉の両立は、こうして実現されるのだ。

  • 希少な腸間膜油を主に使用。融点が高く冷めにくい特性があり、外はサクッと、中はジューシーに仕上がる

  • 開店当初はシンプルな白壁だった店内。女性ひとりでも気軽に入れるよう、徐々にデコレーションを増やした

 ただ低温で揚げる、という単純な話ではない。全方向から均一に熱が入る純銅製鍋、融点の高い腸間膜油、糖度の低い特注パン粉、こだわり抜いた豚肉、そして揚げ上がりの一点を見極める職人の技。それらすべてが合わさって、はじめてこの極上のとんかつが生まれるのだ。とんかつという料理を未知なる次元にまで高めた職人の熱意には、ただ感服するしかない。

【あげつき】

28年のとんかつ道を歩んでなお、究極の味を探求し続ける

 店主の保科剛氏が、将来、とんかつ店を持つことを決意したのは高校在学中の時。卒業後は料理の基本を学ぶため和食店で修業し、その間もとんかつは独学で追求した。その礎となったのは、給料の大半をつぎ込んで名店を食べ歩き、そして培った舌の記憶である。
 とんかつ一筋ですでに28年。そんな保科氏が惚れ込んだのが、宮崎県産の南の島豚である。生産量が限られ、全国でも一部の高級レストランなどにしか卸されていないという希少な豚肉は、長年かけて出会った最高の食材。だからこそ、保科氏に一切の妥協はない。

    揚げムラをなくすため衣に使う小麦粉やパン粉の配合なども徹底。揚げるまでの工程にも徹底してこだわる

    日本酒のラインナップからも、燗酒を愛する保科氏の好みを垣間見る。味がしっかりした、芯のある酒が揃う

 揚げムラをなくすことに神経を注ぎ、油の管理、揚げ方を長年研究。独立してから7年にわたって取り続けるノートには、その日の気温、湿度まで細かに記してあるという。油はオランダ産の高級油をベースに独自にブレンド。低温でじっくりと15分ほどかけてから高温の油へと移し、さらに余熱を使って熱を通していく。
 噛み締めれば、まず驚くのがその香りだ。それはラード由来の風味とは異なり、素材そのものの上品な、大げさにいえば果物のような香り。肉からは甘みと旨みが押し寄せ、キレのある脂が微かな余韻を残して消えていく。

  • 店はテーブル席中心。平日のランチは行列もできるが、夜は予約も可能。並ばずとも名店の味を楽しめる

  • 『特ヒレかつ』。南の島豚でもヒレは他ではなかなか出会えない部位。「都内ではうちだけかも」と保科氏

 「目指すのは究極のとんかつです」とこともなげに話す保科氏。28年に渡るとんかつ道。非の打ち所がないとんかつ。しかし、保科氏の見据える“究極”はまだ先にある。

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ヒトサラ編集部

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