更新日:2017.03.02旅グルメ 連載
中華にマレー、インド料理まで。多種多様な民族や地方の長所を取り入れたプラナカン料理の進化系【Candlenut】
プラナカンとは15世紀後半から東南アジア各地にやってきた、中国系移民の子孫のこと。食文化は多様で各地の民族の食文化を取り入れたプラナカン料理として発展、シンガポールを代表する味のひとつに。そんなプラナカン料理を洗練させ、星を獲得するまで進化させた名店へ。
シンガポールの伝統料理を現代的にアレンジし、ミシュラン一つ星に輝く若手シェフ。その根底に流れる料理哲学とは?
「私の基本は母と祖母の味なのです。家で食べていた家庭の味、毎日食べても飽きないプラナカン料理ってすごいなと思ったんです」。マルコム・リー氏はそう言って笑います。
シンガポールの伝統的な料理として知られるプラナカン料理に、現代のアイデアやテクニック、最先端の科学的調理などを取り入れて、独自の味に昇華させた氏の料理は、ミシュラン一つ星に輝きます。元々は西洋料理を学び、フレンチやイタリアンのファインダイニングを作ることを夢見ていた氏ですが、自らのルーツであるプラナカン料理の作り手が減っていることに危機感を募らせ、自分だからこそできるプラナカン料理を目指すことに。
美しく盛り付けた料理も、口にするとすっと馴染むどこか懐かしい味わい。そう、氏の料理の根底は母の味です。毎日食べても飽きないシンガポール版のお袋の味。それを研ぎすませた味わいは多くの美食家を虜にしています。
2016年10月、デンプシーヒルに移転。注目を集めるシンガポールのおしゃれなエリアでさらなる飛躍を
伝統的な調理法を大切に、今何が求められているかを常に意識
料理は伝統的なプラナカン料理が基本。例えばプラナカン料理で日常的に使われる伝統食材「ブアクルア(ブラックナッツ)」は、5日間かけて水に晒し毒素を抜いた後、なかの実をソースに。これを上質な牧草飼育牛のリブと一緒に煮込んで提供します。「手間はかかりますし、少し苦い独特の味わいですが、赤味噌やたまり醤油に似た奥深さが牛肉の旨みにマッチします。これこそがプラナカン料理。要はそれをどう楽しんでもらうかだと思うんです」とマルコム氏。この真っ黒なソースをひとくち味わうとじんわりと旨みが広がります。
また、オリジナルのカニのココナッツカレーは突き抜けるような辛さの中に、カニの旨みとココナッツのクリーミーさが溶け合い、癖になる味わい。そこには地味で古臭いと思われがちなプラナカン料理は一切なく、新たなるプラナカン料理の世界が待っています。
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1824 Grain-Fed Beef Short Ribs, Buah Keluak Stew
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Blue Swimmer Crab Curry, Tumeric, Galangal, Kaffir Lime Leaf
シェフ マルコム・リー氏
伝統と革新。独自の解釈でプラナカン料理を進化させる気鋭のシェフ
プラナカンの家系に生まれ、毎日おいしい母の手料理を味わううちに料理人を志す。まずは西洋料理を学ぶため料理学校へ入学。その後いくつかの店を渡り歩き、2010年New Bridge Roadで【Candlenut】をオープン。2013年に移転、2016年10月に現在の場所に再度移転。ミシュランシンガポールで一つ星に輝くほか、海外でのイベント参加など新たなプラナカン料理の伝道者として活躍。
【Candlenut】
☎+65 1800 304 2288
住所:Block 17A Dempsey Road, Singapore 249676
営業:12:00〜14:30、18:00〜21:30(金曜・土曜・祝前日・祝日は18:00〜22:30)
休日:無休
撮影/菅野祐二 取材・文/大西健俊
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