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更新日:2017.06.09旅グルメ 連載

世界遺産「モン・サン・ミッシェルの演奏会」ー天空の城で味わう至福の玉子焼きー

世界遺産「モン・サン・ミッシェル」城内で、歴史上はじめて演奏をした和楽器グループ「AUN J クラシック オーケストラ」。そのリーダーである井上良平が書き下ろす、音と食の魅惑ワールドがスタートします。

世界遺産「モン・サン・ミッシェルの演奏会」ー天空の城で味わう至福の玉子焼きー

和楽器グループ「AUN J クラシック オーケストラ」世界遺産へ行く

 旅といえば食事が占める割合はとても大きい。というか、食べることは旅そのものでもある。旅は人を成長させ、また人に良いと書いて食という意味もある。旅の話を交えながら、日本の、世界の食をお伝えできたらと思う。

 さて、まず第1回はフランスのモン・サン・ミッシェルにお連れしたい。宮崎駿監督のジブリ映画「天空の城ラピュタ」のモチーフにもなったフランス・ノルマンディー地方の海に浮かぶ島、モン・サン・ミッシェル。小さな島の中心に、城砦のような修道院があり、古くから「海上のピラミッド」などと呼ばれてきた。モン・サン・ミッシェル湾は、干満の差が激しく、島は絶海の孤島になったり、大陸と地続きになったりと、様々な表情を見せる。
 
 ここは日本人が一度は行きたい世界文化遺産No. 1だそうだ。

天空の城で味わう至福の玉子焼き

    『モン・サン・ミッシェルの玉子焼き』

    『モン・サン・ミッシェルの玉子焼き』

 ここで有名なのがオムレツというか玉子焼きである。日本のだし巻き玉子とは一線を画し、世界の名だたる卵料理とも違う、まさに天空の玉子焼きだ。遠路はるばるここまで来たら一度は食べたいモン・サン・ミッシェルの玉子焼き。気になる味は値が張ることもあり賛否両論。僕はこの料理が世界の五大珍味に数えられるのではないか、と密かに思っている。

    「夕陽に包まれた世界遺産」

    「夕陽に包まれた世界遺産」

 まずバスで5時間揺られ、到着したら登山に近い急階段があらわれる。そのモン・サン・ミッシェルの大聖堂へと向かって、何百段と登っては下りを繰り返す。すると当然ながら腹が減る。これは自然の摂理であり、旅の醍醐味の一つだと思っている。

 いきなり目の前にそびえる大聖堂。慣れない異空間のせいだろうか、急激な血糖値の低下にクラッとくる。そうだ飯を食わなければいけない。胃から脳へ、すきっ腹のカラータイマーが明滅してきた。時差ボケもあって、フラフラとしたカニ歩きのまま、右に左に動いて、モン・サン・ミッシェルの限られたレストランへ急ぐ。

 モン・サン・ミッシェル市は小さいながらも市長がいて、その一族がホテルやレストラン、そして城の管理もしている。

 今回はありがたいご縁が重なった。僕がリーダーをしている和楽器グループ「AUN J クラシック オーケストラ」が、なんとモン・サン・ミッシェルで演奏するという幸運な機会を得ることができた。モン・サン・ミッシェル城内での演奏は歴史上初めてだという。

 それでこの天空の城まで、喜び勇んで来たのである。

    天空の味

    天空の味

 あ、そうだ、血糖値だ。僕は先ほどから意識朦朧で、壁伝いに両手を交互に這わせながらたどり着いたのが、一族が経営するレストラン。ここであの有名な玉子焼きを食べることができる。まるでこの感覚は、曲中で中棹三味線がいいタイミングで入った爪引きのような響きでもある。わかりにくいか!?

 僕は目玉焼きが必ず皿の上に仲良く2つ揃ってないと許せないほどの卵好きである。両目と両目で見つめ合いながらうんうんと涙目でうなづき、片手に箸を鷲掴み、エイエイと躊躇せず間髪入れずに黄色に火照った目玉に突き刺すのが、我が井上流派の刺玉流(しぎょくりゅう)である。そんな妄想を血糖値が下がりきった頭で考えながら、オムレツを注文する。日本円で約5000円近く。その値もあり、期待が一気に膨らむ。

 この天空の城の玉子焼きは、あの渋谷の名店【かつ吉】で『特上ロースカツ定食』と生ビールを頼んでもお釣りがくるプライスだ。そんな高価な卵料理がこの世に中に存在するんだな、とまさに世界の広さをここで感じ、味わう。

 さて僕がどう感じたかって? 

 皆さんには、ぜひ現地で味わっていただきたいと思うのである。

世界遺産「モン・サン・ミッシェル」で演奏する快挙

    モン・サン・ミッシェルで演奏する「AUN J クラシック オーケストラ」

    モン・サン・ミッシェルで演奏する「AUN J クラシック オーケストラ」

 一泊するならいいが、このままバスで5時間かけてパリへ帰るなら、ゆっくりと夕陽を浴びて、様々な料理を食して欲しい。
 
 そして僕からもう一つアドバイス。あなたが日本人であるなら旅のお供のマストグッズである携帯醤油を持参しているはずだ。きっとそれは強力な旅の助っ人になると思う。

 最後にこのコンサートに辿り着くまでの経緯が、なんとBS日テレ開局10周年記念番組の2時間ドキュメンタリー番組になった。ご覧になった方もいることだろう。

 初回から魅惑と蠱惑の味に包まれたヒトサラレポートであるが、次回からはきちんと真面目にお伝えできるよう、頑張っていきたいと思う。

 どうかよろしくお願いします。

  • 撮影:クロアチアのドゥブロブニクにて

    撮影:クロアチアのドゥブロブニクにて

この記事を作った人

井上良平

AUN(あうん)というグループで和太鼓と三味線や笛を演奏している双子の兄です。鬼太鼓座で12年間活躍し、AUNとして独立。2008年、8人グループ「AUN J クラシック オーケストラ 」を結成。和楽器をもっとみんなの心に届かせたいと思っています。

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