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更新日:2017.12.17旅グルメ

札幌で「フランスの日常」を味わうレストラン【ル・プルコア・パ…】

クラシカルなフランス料理を北海道の食材で表現する、札幌の人気レストラン【ル・プルコア・パ…】。'99年のオープンから18年目を迎え、今年移転と共にブーランジュリとカフェを備えたレストランにリニューアル。夢の空間を形した久保田豪之シェフの「いま」に迫りました。

札幌で「フランスの日常」を味わうレストラン【ル・プルコア・パ…】

札幌市・東区、住宅地の小さなフレンチレストランからスタート

 22歳の若さで渡仏し、フランスの三ツ星レスランなどで修業した久保田豪之シェフ。自身初のフレンチレストラン【ル・プルコア・パ…】をオープンしたのは、札幌市の中心部から外れた、東区という住宅街でした。

――なぜ、フレンチの料理人になったのですか?

 高校生のころ、漠然と「自分の店を持ちたい」という思いがこみ上げました。今思えば、父も自営業だったので、自分で経営するという思いがあったのかもしれません。
 料理人という職業は、両親には反対されましたが、半ば強引に大阪の辻調理師専門学校へ行き、フレンチの世界へ足を踏み入れることになりました。

――22歳での渡仏、かなり若い方ではなかったですか?

 そうですね、かなり若い方だったと思います。まぁ、若いから勢いがあったと言ってもよいと思います。ただ、やるからには本場で体験しなくてはと思い、知り合いを頼って、星付きのレストランで修業させてもらいました。最初は言葉もほとんど分からず、ストレスで髪が抜けたりと、本当にギリギリの状態で必死に働きました。

――一度帰国後、再び渡仏したのですね。

 一度目は勢い、二度目は自分の店を構えるための最終調整と言いますか、三ツ星のレストランに手紙などを送り、修業させてもらえることになりました。正直一ツ星・二ツ星の世界とは比べ物にならない緊張感があり、本当に良い経験をすることが出来ました。そして時間があれば、現地の家庭料理が味わえるようなレストランにも足を運びました。

――失礼ながら、札幌市東区という場所でフレンチレストランをオープンすることに、周囲の反対はなかったですか?

 おっしゃる通り、多くの方に反対され、最初は笑ってしまうほど開店休業状態でした。本格的なフランス料理が受け入れられず、パスタはないのかと言われたり…(苦笑)。焦りはあったものの、実家ということもあり、ゆっくり浸透していけばいいかなという気持ちで営業し続けました。

    【ル・プルコア・パ...】の店内。特別な日もおまかせ出来る、落ち着きのある空間。カウンター席を挟んで、ブーランジェリーカフェ【ア・トン・コテ】がある

    【ル・プルコア・パ...】の店内。特別な日もおまかせ出来る、落ち着きのある空間。カウンター席を挟んで、ブーランジェリーカフェ【ア・トン・コテ】がある

旬の北海道食材をクラシカルな一皿へ昇華

 札幌の中心部から離れた住宅街の小さなフレンチレストラン。「ゆっくり街に浸透していけばいい」久保田シェフがそう語るように、フレンチが初めてという方にもリラックスして過ごせる、普段使いができるレストランとして地元の住民から愛されていきました。
 お店で供されるのは北海道各地から取り寄せた、旬の食材を使ったフランス料理。冬にはシェフ自らが捕ったジビエを使った料理もいただけます。

――ご自身で狩猟さてれいらっしゃるとのことですが、狩猟免許を持つことになったきっかけは?

 フランス修業時代、南西地方ではジビエは身近で、北海道にも思っていた以上にジビエの素材があることにも気が付きました。そんな時にたまたまお客様の中にハンターの方がいて、縁もあって2007年に免許を取得しました。そのころは、札幌市内のフレンチやイタリアンのシェフでは誰も持っていなかったかと思います。今でもシーズン中は狩猟に出かけ、お客様に提供しています。

    『鹿肉のロティ』。狩猟の時期になるとシェフが自ら仕留めたジビエが登場する。それを楽しみにしている常連客も多い

    『鹿肉のロティ』。狩猟の時期になるとシェフが自ら仕留めたジビエが登場する。それを楽しみにしている常連客も多い

朝・昼・夜、それぞれで使い分けられる新しいフレンチレストランの形へ

 今は札幌のフレンチを語るうえで外せない存在となった【ル・プルコア・パ…】。今年4月にブーランジュリーとカフェ、ブラッセリーを併設した新しいスタイルのレストランとしてリニューアルオープンをしました。

 【ル・プルコア・パ…】はどんな店かと聞かれたら、ジャンル的にはフレンチレストランとなりますが、【ア・トン・コテ】というブーランジェを併設していることによって、実は様々な使い方が出来るので、説明は容易でありません。
 8:00~10:00までは【ア・トン・コテ】で、焼きたてのバゲットや、季節ごとに用意する数種のヴェノワズリー(菓子パン)などを、コンフィチュール、蜂蜜とともに楽しめるモーニングセットを用意。平日のランチは同じく【ア・トン・コテ】で、久保田シェフが手掛ける、本日の一皿(肉料理、魚料理)を、お代わり自由のパンとともに楽しめます。
 休日のランチタイムは【ル・プルコア・パ…】で、いつもより少し時間をかけて、コースランチを堪能でき、ディナーは内容の異なる3つのフルコースを用意していますが、ワインとともにアラカルトで楽しむことも可能。シェフの姿を眺めることができるカウンター席も人気だそう。
 「フランスでは当たり前の風景を札幌に根付かせたい」。その想いから、朝・昼・夜、それぞれの時間で様々な使い方ができるフランスラストランへと進化しました。

    【ア・トン・コテ】のブーランジェ竹内氏と。出会うべくして出会った2人が作り出すのは、フランスの街角レストラン

    【ア・トン・コテ】のブーランジェ竹内氏と。出会うべくして出会った2人が作り出すのは、フランスの街角レストラン

 東区での開業から18年を経て札幌の中心部への移転、なぜ新たな形でスタートを切ったのか。それはパン職人である竹内哲也さんとの出会いがきっかけでした。

――中央区への移転。そしてブーランジェリーの併設、その経緯は?

 中央区への進出は、東区でオープンして3、4年ですでに考えてはいたのですが、東区の店舗もままならない状況だったので、実現には至らずで。そんな時、人や物件と縁があって、中央区に【サラマンドル】という、郷土料理に特化した2号店を出すことが出来ました。同時に、【ル・プルコア・パ...】でアラカルト料理を提供するのはやめ、コースのみにしました。

 また、今回同じ空間に店を構えている【ア・トン・コテ】のブーランジェ竹内さんとは15、6年前に出会ったのですが、そのころから一緒にやりたいと思っていました。フランスではパン屋とレストランが併設になっている店が当たり前にある。その当たり前の風景を、札幌に根付かせたいという想いがあり、その想いが一緒だったのです。

 それにより、朝食からランチ、そしてしっかりディナー、さらにはウェディングパーティーまで、お客様のスタイルに合わせて利用できるようにしました。

    専属プランナーがついたパーティプロデュースから料理までをサポートする「Wedding Party Plan」も

    専属プランナーがついたパーティプロデュースから料理までをサポートする「Wedding Party Plan」も

――今後の抱負は?

 フレンチをより、気軽に楽しんでいただける店づくり。そして北海道の素晴らしい食材を、より多くの方に食してもらえるよう、今までやってきたことを続けていきたいと思います。

(2017.7.3取材)

シェフプロフィール

久保田豪之 クボタヒデユキ

1972年札幌生まれ。大阪辻学園調理技術専門学校を卒業後、94年に22歳で渡仏。【ル・ラディオ】【ルオン・ド・リヨン】【オーボン・コアン・ドゥ・ラック】などの店で修行し、96年に一時帰国。札幌で店舗を構えるために98年に再度渡仏し3つ星レストランで修行し、1999年11月、実家を改装し、【ル・プルコア・パ…】をオープン。2017年5月、札幌市中央区に移転。

【restaurant Le Pourquoi Pas…(ル・プルコア・パ…)】

電話:011‐215‐0381
住所:札幌市中央区大通東3丁目1-1トルチュビル1F
18:00~21:00ラストオーダー(カウンターのみ22:00ラストオーダー)
土日祝のみランチ営業(11:30~13:30ラストオーダー)
定休日 水曜日
席数 カウンター5席 フロア30席

ディナー 5,500円・7,500円・10,000円
ランチ  2,800円・4,800円

【à ton côté(ア・トン・コテ)】

電話:011-215-1191
住所:札幌市中央区大通東3丁目1-1 トルチュビル1F
ブーランジュリ 8:00~19:00(パンが無くなり次第終了)
カフェ&ブラッスリー 8:00~21:00(カフェのランチは平日のみ)
定休日 月曜(祝日の場合は翌火曜休み)
席数 20〜22席

この記事を作った人

取材・文/オサナイミカ(札幌100マイル編集長)

札幌生まれ・札幌育ち。美・食・“充”を発信するサイト「sapporo 100 miles」で編集長ブログを約10年書き続けている。お酒をこよなく愛し、北海道の美味しい食とのマリアージュを楽しむことに喜びを感じる日々。

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