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更新日:2018.08.10グルメラボ 連載

シーフードサミットin Barcelona/~食の明日のために~vol.6

米・水産系環境団体SeaWebが主催するシーフードサミットは、サステナブルシーフードに関わる様々な人達が世界中から集まるグローバルカンファレンスです。一年に一度行われるこのサミットに、先の6月19日~22日、海を考える日本のシェフグループChefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー/以下「CFTB」)が参加してきました。CFTB事務局の私から、今回はその報告を少しさせていただきます。

シーフードサミット

シーフードサミットって?

 先の6月19日~22日に、スペイン・バルセロナで行われたシーウェブ・シーフードサミット。毎年この時期に行われるこのカンファレンスには、各国の環境NGOや研究者、サプライヤー、ジャーナリストなど、サステナブル(持続可能)な漁業やシーフードに関わる人々が世界中から集まります。開催14回目にあたる今年の参加者は360名ほど。「クロマグロの持続性についての世界の現状」「養殖業の未来」「サステナビリティやトレーサビリティはなぜ消費者にとって大切なのか」など、さまざまな専門的なトピックについての報告やワークショップが行われました。

 そんな専門家達ばかりの会議に、どうして日本からシェフ達が参加したのでしょうか。それは、SeaWebが今年1月に公募したサステナブルシーフードにかかわるプロジェクトコンペにCFTBが応募し、優勝したためです。料理人を中心にしたグループが海の問題を考え、社会に働きかけるというアプローチは世界で大きな注目を集め、世界各国から40近くの応募チームのうち、専門家による厳正な一次審査と一般ウェブ投票の結果、見事優勝が決まりました。(投票にご協力くださった方々、ありがとうございました!)

  • 25を超えるワークショップやパネルセッションがいくつかの部屋で同時進行します。

    25を超えるワークショップやパネルセッションがいくつかの部屋で同時進行します。

  • サミットが開催された、バルセロナのホテル・アーツ・バルセロナ。

    サミットが開催された、バルセロナのホテル・アーツ・バルセロナ。

サミットでワークショップのパネルに

 サミット開始初日、CFTBがパネルとして壇上に立つワークショップが開かれました。サミットに集まった専門家たちと一緒に、今後の活動について意見交換を行うためです。30名ほど集まった参加者は、アメリカをはじめカナダ、メキシコ、ペルー、イギリス、スペインなど、さまざまな国のNGOや研究者、サプライヤー。各国でサステナブルシーフードの推進に10年~15年前から取り組み、苦労を重ねてきた経験から、まだスタート地点に立ったばかりの日本で活動するCFTBに対してさまざまな意見やアドバイスがありました。

    この日のワークショップのためにCFTBが招かれました。(左から2人目は、サステナブルシーフードのコンサルタント会社、(株)シーフードレガシーの松井花衣さん)

    この日のワークショップのためにCFTBが招かれました。(左から2人目は、サステナブルシーフードのコンサルタント会社、(株)シーフードレガシーの松井花衣さん)

 たとえば「シェフとして、サステナブルシーフードについて店のゲストにどのように伝えていけばいいか」という問いに対しては、「漁師さんがいかに想いを込めて魚を守り、獲っているかなど、ポジティブなストーリーを伝える」「複雑な話はせず、思いをシンプルに伝える」という意見が多くありました。また「できるだけ多くのメディアに問題を理解してもらうこと」「魚や皿の上の話にとどめず、地域コミュニティ、漁師、その家族の問題だということまで広げること。海の中だけでなく、私たち人間の問題だと気付いてもらえるように」と熱く語ってくれた内容も記憶に残ります。

 ワークショップ後、米澤シェフは「これだけ多くの人がサステナブルシーフードの問題を解決しようと動いていることに感動しました。世界の動きを体感できたのは貴重でしたね。同時に、長い目でしっかり取り組んでいくべき問題なんだということも実感しました」とコメントを残しています。

    カジュアルなスタイルでいろんな方と話せたランチミーティング。

    カジュアルなスタイルでいろんな方と話せたランチミーティング。

 ワークショップ以外でも、ランチタイムは必ず様々な方とお話できるミーティングが設定され、世界中にいろんなネットワークを作ることができました。これまでに「日本と欧米諸国では魚食文化の歴史や社会のあり方が違うため、同じような手法を取るのは無理」と言われたこともありましたが、実際に現場の声を聞いてみると、同じような問題を抱えながら困難を乗り越えてきたことがよく分かります。これらの貴重なアドバイスを大切に、また各国機関や世界の料理人とのコラボレーションも視野に、これからのCFTBの活動に生かしていきたいと思います!

    米モントレー水族館のシーフードウォッチ・シニアプログラムマネージャー、ライアン・ビゲローさんと。

    米モントレー水族館のシーフードウォッチ・シニアプログラムマネージャー、ライアン・ビゲローさんと。

ガーデンパーティーでの料理提供も!

  • まだまだ明るい夕刻のガーデンパーティー。シャンパーニュグラスを片手に素敵なひと時でした。

    まだまだ明るい夕刻のガーデンパーティー。シャンパーニュグラスを片手に素敵なひと時でした。

  • 大盛況の日本人シェフブース。お料理の補充が追いつきません!

    大盛況の日本人シェフブース。お料理の補充が追いつきません!

サミットはもちろんお勉強だけではありません(笑)。初日の夕方(10時まで明るいので、夕方といっても8時まででしたが..)にはホテルの素敵なガーデンでパーティーが開催され、その場でCFTBの3人のシェフがサステナブルシーフードを使ったフィンガーフードを提供しました。メニューは下の二つです。

    -地中海のスズキのタルタル最中 オリーブオイルと二種類の味噌風味

    -地中海のスズキのタルタル最中 オリーブオイルと二種類の味噌風味

 400食も準備したフィンガーフードですが、お客様がひっきりなしにブースを訪れ大人気。「おいしい、おいしい」と2度、3度と訪れるリピーターも多く、見事完売しました。終了後、田村シェフは「なかなか魚が届かず焦りましたが、時間がないなか三人でなんとか400食準備できてほっとしました。リピーターが多いのは本当にうれしいですね」と笑顔を見せました。

    -藁で燻したノルウェー鯖と玉ねぎのキャラメリゼを重ねた一口パイ、山椒の香り

    -藁で燻したノルウェー鯖と玉ねぎのキャラメリゼを重ねた一口パイ、山椒の香り

 3人のシェフとの深夜の打合せ、そして日本と会場となったスペイン、SeaWebの本部があるアメリカをつないでの数か月にわたる電話会議と調整を重ねた結果の料理提供。慣れない食材とキッチンでの料理を担当してくれたシェフたちはもちろん、「日本のシェフが作るすばらしい魚料理を皆さんに食べてもらいたい」とSeaWebに無理にお願いし、プログラムに組み込んでもらった裏方の私としても感激のひとときでした。ご協力くださった関係者の皆様に心から御礼申し上げます。

 最後に、サミットを終えた石井シェフの言葉をご紹介します。「世界に比べ、日本がいかに遅れているかということを強く実感した4日間でした。今後の活動の方向として、欧米と同じようにはいきませんが同じ問題も共有していますし、逆に日本ができている部分も確認できました。今回は代表として3人でしたので、日本に帰って多くの仲間にこの経験と知識のシェアをし、料理人の力でできる活動をしていきたいと思います」。

 

この記事を作った人

佐々木ひろこ

日本で国際関係論を、アメリカで調理学とジャーナリズムを、香港で文化人類学を学び、現在フードライター、エディター、翻訳家。多くの雑誌や書籍、ウェブサイトに寄稿中。料理人を中心としたサステナブルシーフード勉強会“Chefs for the Blue”の世話人。

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