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更新日:2018.09.14食トレンド 旅グルメ

世界のフーディが目指す、絶品の薪焼きステーキは、スペイン山バスクにあり/【カサ フリアン】トロサ スペイン

バスク、サンセバスチャンから車で40分の山間の街トロサ。そこに、世界のフーディたちが集う肉の名店がある。皆が注文するのはシメンタール牛やバスク牛を豪快に薪で焼くステーキと、赤ピーマンのマリネ、トマトサラダ。シンプルなのにここにしかない味なのだ。なぜ、こんなにもおいしいのだろう・・・・・・。その秘密に迫る!

世界のフーディが目指す、絶品の薪焼きステーキは、スペイン山バスクにあり/【カサ フリアン】トロサ スペイン

 バスク地方のいくつかの町に、“必ず食べるべし”な名物料理がある。代表例は、サン・セバスチャンのタパス、ゲタリアの魚の炭火焼、そしてトロサのチュレタだ。

 チュレタとは、牛骨つきリブロース肉の炭火焼。ここトロサは、町を二分するように流れる川の両岸に向かい合うように2軒のチュレタ名門店がある、バスク地方きっての“肉の聖地。そして、川の東側にある「カサ フリアン」は、世界一美味しいチュレタの店として、高い名声を誇っている。

    創業当時の雰囲気が色濃く残る内観。左にある焼き台に肉が乗ると、店全体に肉がやけるよい匂いが漂う。

    創業当時の雰囲気が色濃く残る内観。左にある焼き台に肉が乗ると、店全体に肉がやけるよい匂いが漂う。

 創業は1951年。店名になっているフリアン・リヴァスが初代オーナーだった。彼は、客席内に“パリージャ”と呼ばれる炭火焼台を設置した“アサドール”というスタイルのレストランの生みの親。今でこそ、オープンキッチンが大流行だが、この店はまさにそのハシリだったのだ。

1981年に、近くでバルをやっていた、マチアス・ゴロチャテギに店を譲って、フリアンは引退。その後、マチアスが焼きの技術や肉の質を発展させ、いつしか、「カサ フリアン」はチュレタの名門中の名門、とうたわれるようになった。そして今は、マチアスの息子、兄のイニャキと弟シャビの兄弟が調理場にたち、その名声を守っている。

    代替わりして改装した入口のウエイティングスペース。

    代替わりして改装した入口のウエイティングスペース。

 さて、主役の牛肉を見てみよう。

 店内に設えられた熟成庫の扉を開けると、ふわっと良い香りが漂う。ずらり並んで吊るされている牛肉の大きな塊に近づいて、肉に貼られたラベルを見ると、スイス産シメンタール、北ドイツ産ホルスタイン、そして地元バスクで育てられるオレンダインなど。授乳を終えてしばらく時間がたってしっかり脂が乗った6〜9歳の経産牛を厳選して仕入れ、2〜3週間の熟成を施している。仕入れる肉は、実に月に1トンにも及ぶそうだ。

    熟成中の肉とともに、シャビ(右)&イニャキ兄弟。父マチアスが築いた店の名声を、さらに進化させながら守っている。

    熟成中の肉とともに、シャビ(右)&イニャキ兄弟。父マチアスが築いた店の名声を、さらに進化させながら守っている。

 熟成完了、と見極めた肉は、5センチほどもの厚切りにカット。海塩の粗塩をを、表面がほとんど見えなくなるくらいまでたっぷりふりかけ、煌々と炎をあげる炭火台の上に乗せて、この店が誇る“焼き”が始まる。

 「フリアン・リヴァスがアサドールのコンセプトを生んで肉焼き技術の基本を築き、父がそれをさらに極め、今、我々兄弟に継承してくれているんだ」と語るのは、マチアスの次男で、兄のチャビとともにこの店をさらに盛り上げているイニャキだ。マチアスパパは数年前に引退しているが、今でも頻繁に店に顔を出しては常連たちとのおしゃべりを楽しんでいる。

    粗塩をたっぷりのせて、焼きのスタート。表面を強火で焼き固め、熟成牛の旨味を逃さず閉じ込めてから、ゆっくり中まで火を入れる。

    粗塩をたっぷりのせて、焼きのスタート。表面を強火で焼き固め、熟成牛の旨味を逃さず閉じ込めてから、ゆっくり中まで火を入れる。

 がっつり塩をした肉を、わずかに前に向かって斜めになっている網台に。ジュッ!という小気味よい音とともに、あっという間に周りは、肉が焼けるよい香りに包まれる。網が斜めになっているのは、肉の脂をうまく落として1箇所に集めるため。上下二段になった焼き台の、どの部分がどういう火力になっているかを見極め、チャビかイナキがつきっきりで肉の状態を見ながら、場所を移し上下を返し、ゆっくり30分ほどかけてチュレタを焼き上げる。

 利用する炭は、多くの有名アサドールでも使われている、キューバ産マラブ。硬木で火力が強奥、香りが強すぎず食材に余計な香りがつかない。

    オリーブオイルと塩でさっぱり味付けたトマトサラダは夏にだけ登場。

    オリーブオイルと塩でさっぱり味付けたトマトサラダは夏にだけ登場。

 チュレタが焼きあがるのを待ちながら、前菜を楽しもう。

 夏らしいトマト&タマネギ&青唐辛子のさっぱりサラダに続き、ホルスタイン牛のカルパッチョ、そして、この店でチュレタと並ぶ“マスト・イート料理”である、赤ピーマンマリネのグリル。湯気を立てながら運ばれてくるアッツアツの赤ピーマンは味がぎゅっと凝縮し、見事な風味と甘み。これを食べずして、フリアンに来た、と言うべからず。

    オリーブオイルと黒胡椒を振っていただく、ホルスタイン牛のカルパッチョ。キレのよい香りと旨味の肉。

    オリーブオイルと黒胡椒を振っていただく、ホルスタイン牛のカルパッチョ。キレのよい香りと旨味の肉。

    チュレタと並ぶ、「カサ フリアン」の名物、赤ピーマンマリネのグリル。

    チュレタと並ぶ、「カサ フリアン」の名物、赤ピーマンマリネのグリル。

 前菜に舌鼓をうっているうちに、チュレタが完成!表面はこんがりと、中はしっとりロゼに焼きあがったチュレタは、一口噛むと香ばしさが口に広がり、二口噛むと旨味が溢れ、三口噛むと脂がジュワッと溶け出す感覚。

“美味しい”という言葉はこのためにあるんだ、、、と、きっとしみじみ思うだろう。

 最上の肉を、丁寧に熟成させ、シンプルに焼き上げる。書いてしまえば簡単だが、その工程の一つ一つに、熟練の職人のみが持ちうる経験から生まれた技術と、愛情がこもっている。そこから生まれる、奇跡の美味しさ。「カサ フリアン」は、奇跡を求めて集うフーディーを、今日もトロサで待っている。

    こんがり焼きあがったチュレタ。エレガントな赤ワインとともに、召し上がれ!

    こんがり焼きあがったチュレタ。エレガントな赤ワインとともに、召し上がれ!

CASA JULIAN

  • 住所:Calle de Santa Klara 6, 20400 Tolosa
    電話:+34 943 67 14 17
    営業:13時15分~15時30分、 20時45分~22時30分(夜は、金、土のみ営業)
    無休

この記事を作った人

撮影/小野祐次 取材・文/加納雪乃

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