ミシュランガイドの星が最も多い街「東京」は、世界トップの美食都市 その強さの理由とは
“世界の美食都市”と聞いて、あなたはどの都市を思い浮かべますか? 世界の美食の指標として知られ、世界37カ国でセレクションを行っている『ミシュランガイド』において、星の評価の数は東京が世界一を誇ります。そんな美食都市・東京の強さとは、なぜ世界トップクラスのグルメ大国にまで発展したのか、その理由に迫ります。
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世界一ミシュランガイドの星の数が多い都市「東京」
東京の星の数の推移/世界の都市との比較
なぜ東京にはミシュランガイドの星の評価を得た店が多いのか
インバウンド消費のカギを握る、日本の食文化「和食」
世界一ミシュランガイドの星の数が多い都市「東京」
フランスで誕生した『ミシュランガイド』は、パリ万国博覧会が開催された1900年の初版発行から100年以上もの間、美食を司るガイドブックとして世界中で親しまれています。日本では、2007年に初のアジア版として『ミシュランガイド東京 2008』が発行され、日本で最もよく知られるグルメガイドとしてその名を馳せています。
現在、東京の『ミシュランガイド』の星の数は、美食都市として知られるフランスのパリやアメリカ合衆国のニューヨークを凌いでいます。東京初の2008年版でパリをおさえて世界1位を獲得して以来、東京は16年連続で世界1位を獲得しつづけており、2022年11月に発行された最新号『ミシュランガイド東京 2023』では、合計200軒(ビブグルマン除く)のレストランが星の評価を得ています。
『ミシュランガイド東京』は、最新の2023年版より日・英併記に。また、「ミシュランガイド公式ウェブサイト」では、世界中のミシュランガイドセレクションが閲覧可能となり、日本の星付きレストラン情報が日・英両方で表記されています ⓒ MICHELIN
『ミシュランガイド東京 2023』発表の場において、ミシュランガイド・インターナショナルディレクター、グウェンダル・プレネック氏は、「東京は星付きの飲食店・レストランの数が200軒と、今年も世界一星の多い都市となりました。良質な食材が集まる利点があり、それを調理する素晴らしい腕前の料理人が国内外から集まる東京は、美食都市として世界をリードし続けるでしょう」とコメント。
さらに、東京特有の食文化についても触れ、「シンプルな居酒屋や小さな寿司屋、日本料理の専門店から最高級レストランまで、東京には良質なレストランが溢れており、そのユニークなシーンで人々を魅了しています。巨大都市・東京は開放的で、食の多様性も輝きを放っています」とグウェンダル・プレネック氏。このように、美食都市「東京」は、世界中のグルマンから注目を集めているのです。
『ミシュランガイド東京 2023』にて、16年連続で三つ星の評価を得ている【ガストロノミー“ジョエル・ロブション”】
東京が評価された星の数の推移、そして世界の都市との比較
2007年に初のアジア版として発行された『ミシュランガイド東京 2008』。そのときはじめて和食料理店や寿司屋が三つ星になりました。さらに、三つ星の数が世界一だったパリの10軒に次ぎ、東京は8軒が獲得。また、それまでに発行された他国のミシュランガイドでは、掲載店の一部のみに星がつくだけでしたが、東京版では150の掲載店すべてが一つ星以上の評価。星の合計数は、パリの64軒の倍以上を上回る191個で世界最多となりました。
2022~2023年に発行された世界のミシュランガイドが対象。※香港、ニューヨーク、ロンドンは2023年3月現在、2022年版が最新版となる。それ以外は2023年版が対象 [2023年3月29日現在の最新データ]
2022~2023年の最新発表によると、東京の三つ星の数は世界1位、さらに三つ星、二つ星、一つ星の合計数でも2位のパリの118軒を大きく上回る200軒と高評価。また、東京だけでなく、TOP5に京都・大阪もランクインしており、東京のみならず、日本の食文化の多様さ、強さがデータからも読み取れます。
それについて、グウェンダル・プレネック氏は、「京都は、歴史と食文化、旬の食材を使った伝統料理、おもてなしの心が息づいています。日本文化を知り、楽しみたい旅行者にとって必見の場所です。一方、大阪は独自の食文化が発展しており、地元の名物料理から世界各国の料理まで、バラエティ豊かな料理を楽しむことができます」と述べました。
なぜ東京にはミシュランガイドの星の評価を得た店が多いのか
☑四季折々の多様で新鮮な食材☑日本独自の味覚、“旨味(UMAMI)”
☑国内外問わず、世界トップレベルの料理人が集結
東京が美食都市として名を馳せる理由のひとつに、日本の風土が強く関係しています。日本は四方を海に囲まれ、国土の約75%を山地が占める島国で、それぞれの地域によって変化する豊かな自然の宝庫です。南北に長く、四季とともに育まれてきた料理や伝統、海や山の食材、肉や魚、野菜、フルーツなどに囲まれ生活できる環境は世界でも珍しく、日本だけと言っても過言ではないほど。その四季折々の多様で新鮮な食材と、その持ち味を尊重した料理が、日本そして東京のレストランシーンの強みのひとつになっています。
白川郷©SHoriクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際)
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
もうひとつのカギを握るのが、日本人特有の味覚、“旨味”。 “旨味”は、甘味、酸味、塩味、苦味に続く5 番目の味で、人間の味覚を構成する基本味(きほんみ)のひとつですが、日本人が当たり前のように感じていた“旨味”は日本特有の味覚であり、世界では “旨味”という味覚は認識されていなかったのです。注目が集まったのは、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食が改めて注目されたのがきっかけでした。“旨味”は「UMAMI」として世界共通語になるほど。
それまで日本以外に“旨味”がまったく存在しなかったのではなく、世界の人々もそれぞれの食文化の歴史の中でさまざまな食材を通して“旨味”と向き合ってきていたが、“旨味”としては認識されていなかった
このように、新鮮な食材や「UMAMI」をうまく、美しく操る日本の料理人たちのレベルの高さが東京の星の数を世界一におし上げ、成熟した東京のレストランシーンをつくりあげたのです。
また、そんな東京のレストランシーンに惹かれ、国内外問わず、トップシェフが東京へ集まっており、料理人の質の高さもまた、ミシュランガイドの星の評価に貢献していると言われています。
ミシュランガイド京都版の初年度発刊となる2010年度版から14年度連続となる三つ星【菊乃井本店】
インバウンド消費のカギを握る、日本の食文化「和食」
和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、世界的に和食がブームになり、今では世界中の至るところに日本食のレストランが急増しています。また、和食が好まれる理由として多く挙げられたのは、「ヘルシーで健康的だから」。おいしさのみならず、“旨味”を上手に使うことによって、おいしさを損なわず、減塩効果や動物性油脂の少ない健康的な食生活が送れると、ヘルシー志向の外国人からも注目を集めています。
訪日外国人が、「本場日本の味を体験したい」と人気の鮨
また、観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向」(2019年次報告)によると、訪日外国人観光客が「訪日前に期待していたこと」という調査に、「日本食を食べること」(69.7%)が1位となりました。また、日本貿易振興機構「日本食品に対する海外消費者アンケート調査-6都市比較編-(2014年3月)によると、外国人が好きな外国料理の1位が「日本料理」(66.3%)という結果となっています。
訪日外国人観光客の受け入れが再開されたいま、美食の街「東京」、さらに京都・大阪をはじめとする日本各地の地域の食や食文化の魅力を発信することが、日本誘致のカギを握ると言えます。
訪日外国人観光客が日本を訪れる理由の上位は、「日本の文化/歴史に興味がある」(22%)、「食事」(16%) ※株式会社LIFE PEPPER「今後の訪日旅行に関する意向調査」より
[参考]
農林水産省「インバウンドを通じた海外需要の取り組み・創出」令和3年9月
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/nouhakusuishin/attach/pdf/suishin_kenkyu-16.pdf
農林水産省「日本の食文化をめぐる情勢について」(令和5年1月)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaishoku_shokubunka/attach/pdf/index-246.pdf
国土交通省観光庁「訪日外国人の消費動向」平成26年次報告書
https://www.mlit.go.jp/common/001084273.pdf
ミシュランガイド公式Webサイト
https://guide.michelin.com/jp/ja
嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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