【フィリップ・ミル 東京】シャンパーニュと端正なフレンチで人々を魅了する、次世代のTOPシェフにインタビュー
シャンパーニュ好きなら、一度は行ってみたい憧れのシャトー【ドメーヌ レ・クレイエール】。フランス二つ星に輝く名店の総料理長フィリップ・ミル氏が、自身の名前を冠した初の海外店を東京に出したと話題になったのが、2017年のこと。2年が経ち、MOFシェフならではのテクニックとしなやかな感性から生み出される料理はますます進化しています。フランス料理らしい芯をしっかりと感じながらも、ここでしか味わえない美しい料理で、フランス料理界を牽引する次世代のトップシェフにインタビューしました。
フィリップ・ミル プロフィール
フランス・ルマン出身。国鉄に勤める父親と看護師の母親の間に長男として生まれる。14歳で地元の調理師学校に入学し、週末はレストランで修業。19歳にベルサイユ郊外の名店【オーベルガード】ジャン・ボルディエ氏(MOF*国家最優秀職人章)の元で学ぶ。その後はパリにて研鑽を積む。【ドルゥーアン】のルイ・グロンダール氏(MOF)、【プレ・カトラン】フレデリック・アントン氏(MOF)、【ラセール】ミッシェル・ロット氏(MOF)の元で働き、【ル・ムーリス】ではヤニック・アレノ氏のもとでスーシェフを務める。その後シャンパーニュ地方の名シャトー【ドメーヌ レ・クレイエール】の総料理長に就任し、わずか2年後に2つ星を獲得。弱冠38歳でMOFの称号を授与される。
シャンパーニュ地方というテロワールが持つ”多様性”から生まれたここだけの料理
シャンパーニュ地方・ランスのランドマークともなっている白亜のシャトー【ドメーヌ レ・クレイエール】。メインダイニング【ル パルク】、ブラッスリー【ル ジャルダン】の二つのレストラン、客室がある。
そうですね。実際店では1000を超えるシャンパーニュを扱っています。ここでお出しする料理は、土地の生産者と密接につながったものです。シャンパーニュとあわせることで、料理を食べる喜びがさらに高まるようなマリアージュを大切にしています。
1000種類のシャンパーニュ! ル・マン出身でパリで料理人としての経験を積まれたフィリップシェフにとって、シャンパーニュは初めての土地。そこでどう料理しようと考えましたか?とにかくソムリエとともに歩きました。シャンパーニュ地方そのものを理解するために景色を眺め、シャンパーニュを飲み、その魅力を探りました。そこで、発見したのはシャンパーニュ地方の多様性です。ブドウ畑の隣にはいろんな畑も共存し、実に様々な食材が隣り同士で実るのです。そう、まるで絵の具のパレットのように。すっかりその多様性、すなわち豊富な農産物があることに魅せられ、地元の生産者たちとのつながりを大切にするようになりました。それこそが”テロワールのアイデンティティ”になるのではと考えたのです。
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本にはフィリップシェフの料理とともに、メイン食材となった地元の生産者さんが掲載されている。彼らへの愛情を感じる一冊。
私が着任する前、この周辺のレストランはパリのランジス市場から食材を入れるのが常でした。けれど、この豊かな自然がある場所でそうすることに疑問を感じました。例えば私の故郷では、自分の家に畑がありましたし、地元のものを料理に使うことがあたりまえでした。
そんな経験もあり、この地の食材の多様性に魅せられた私は、地元の食材を積極的につかうようになったんです。今では、【レ・クレイエール】で使用する食材は地元の62軒の生産者さんに支えられています。私は生産者のところへ足を運び、彼らは私の厨房に足を運んでくれる。その交流で私は「料理」を、彼らは「食材」を進化することができるのです。
3月15日からの春の前菜。様々な花が一斉に咲いたような一皿。
確かに、"グラスの中"のシャンパーニュもこの地方の魅力だと思います。ですから、私がつくる"皿の上"と"グラスの中"がこだまするように、料理とシャンパーニュの「交流」をいかに表現するか、ということを大切に考えています。
シャンパ-ニュは、そのものすべての銘柄にそれぞれの個性があります。それが料理を作るうえでの難しさかもしれません。酸味のあるものならまっすぐな味を尊重し、ピノ・ノワールの重みがあるものは料理で軽やかにまとめようかと考えたり。シャンパ-ニュと反対の方向性のものをイメージすることもありますし、シャンパ―ニュと同じ方向性にもっていく場合もあります。面白い作業ですね。
シャンパーニュを前面に出してお料理がサポート役になるのか、あるいは自分が支配する、マスターになるのか。そういった意味ではチームワークが欠かせません。もちろん、いずれにせよ根底には、”私の料理のアイデンティティを保ちながら”ということが前提です。
【フィリップ・ミル 東京】では140種類以上のシャンパーニュがボトルでオーダー可能。グラスも6~7種類を取りそろえている。
フランス料理で大切なのは、フランス料理らしい”味”。それをどう現代風に表現するか。
フィリップさんの”料理のアイデンティティ”というのは? 私自身の”料理のアイデンティティ”というのは学んできたフランス料理の基盤をどう近代化するか、ということです。まず食材を尊重し、緻密な焼き加減など、本質の部分に非常に重きをおいています。そうして洗練されたものをつくる。フランス料理で一番重要なのは"味"です。フランス料理のクラシックな味を保ちつつ、見た目の美意識を変えて、クリアで洗練されたものを表現したいと思っています。
そして、時代の変化とともに変わってきた人々の嗜好にあわせ、より軽やかにライトなものを心掛けています。たとえば子どものころに食べていたポトフを今つくるとしたら、そのままの材料や作り方ではつくらない。けれど、技術やレシピの工夫で味はそのままにしたい。私にとって料理というのは、”食材”・”味わい”・そして”尊重”が重要なのです。
スペシャリテの【ウフ・モレ】。季節によって合わせる野菜やソースが変わる。
そう言っていただけて嬉しいです。これは、【フィリップ・ミル 東京】でお出ししている、【レ・クレイエール】のスペシャリテのひとつです。今、フランスでは『ウフ・パルフェ』(完璧な卵)という料理が流行っているのですが、黄身も白身も柔らかい温泉卵のようなものなんです。
私は黄身は柔らかく、でも白身はしっかりとしたコントラストを大切にしたかった。ですから、フランス料理の伝統料理で『赤ワインのポーチドエッグ』から連想し、理想の硬さにした玉子に赤ワインのソースをまとわせました。アスパラと卵はとても相性がいい食材ですよね。卵は男性的な味なので、そこに赤ワインの酸味を加えバランスを取り、卵の下のピクルスが食感のアクセント。皿の上の甘味、酸味、苦み、それらをすべてまとめるのがキャビアの塩味です。
桜の季節、窓際は真下に広がる桜並木を眺められる特等席。夜は美しい夜景を堪能できる。
そうですね、フランスでやっていることをここでもやっていきたいと思っています。まずはシャンパーニュとのマリアージュを考えた料理。そして日本というテロワールを大切にすること。そのため、日本各地の生産者にも出向いています。貝にこんなにたくさんの種類があるという発見もありました。たけのこ、しいたけなども好きです。私は、そうした各地の生産者のことを”土の宝飾家”と呼んでいるのですが、彼らのつくったものでどんなことができるのか、【レ・クレイエール】と同じようなことにトライしたいですね。
そして、日本とフランスの食材の季節が少し違う、ということも感じています。日本では2月ごろにはもうイチゴがあるけれど、フランスは4月末~5月くらいが旬。日本の季節にあわせながら料理をつくる、ということに自分の意識を持っていかなくてはいけないと思っています。
チョコレートやチュイル、コンフィチュールを重ねた定番のデザート。季節によってテーマが変わる。今回はベリー類をテーマとした春のデザート。
今はどこの世界でも人材不足といわれている時代ですが、シェフになる人も少ない。いかに若手に動機づけられるのかという目的でこのコンテストを開催しました。料理人は独創性、創造性を生む職業であり、さらには仲間との交流や分かち合いがある素晴らしい職なんだということを伝えたい。
このコンテストは、男女がひとつのチームになり、MOFシェフ、またはミシュラン星つきシェフのもとで、課題をに取り組みます。ジャッジするというより、そのシェフが自分の経験や体験をアドバイスとして伝えていく。いわば、自分自身が今までやってもらったことを後進に伝えたいという思いでやっています。各国ごとに料理のアイデンティティがあると思うのですが、我々はフランス料理のアイデンティティを若い人たちに伝えていくのが使命だと思っています。今年で9年目、3月18日のインターナショナル大会ではランスに12か国から参加者が来るんですよ。
次世代のフランス料理界を牽引するMOFシェフの今後に目が離せない。
もっと数多くの日本の生産者に合って、新しい発見をしたいですね。そうしてお客様により楽しんでいただける料理を提供していきたい。フランス料理というのはフランスのものでなければいけないというものではないです。日本のテロワールと合わせることもできるんだ、そういったことも、ぜひ伝えていきたいですね。
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この記事を作った人
撮影/石井宏明 取材・文/山路美佐(ヒトサラ副編集長)
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