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更新日:2018.12.14食トレンド デート・会食 グルメラボ

南仏の名レストランが東京でオープンして17年。【サンス・エ・サヴール】、双子のシェフ、プルセル兄弟の新たな挑戦をインタビュー

17年前にフランスのミシュランスターレストランの東京支店としてオープンし、その軽やかで独創性あふれる料理が瞬く間に人気店となった【サンス・エ・サヴール】。南仏モンペリエのエスプリはそのままに、日本の食材をメインに据え、つくられるここにしかない”プルセル・キュイジーヌ”は世代を超えて愛されている。来年モンペリエの本店を大きくリニューアルする、ローラン・プルセルシェフに今の時代だからこそチャレンジしたい思いをインタビューした。

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ローラン・プルセルシェフ(右) プロフィール

1965年生まれ南仏、モンペリエ生まれ。14歳の頃から料理に興味を持ち、双子の兄ジャックとともに料理人の道へ入る。ミッシェル・ブラス、アラン・シャペル、ミッシェル・トラマ、ピエール・ガニエールなどの元で学び、ジャックとともに1988年、若干23歳にして【ル・ジャルダン・デ・サンス】を開業。10年後ミシュラン3つ星を獲得。その後日本、スリランカ、ベトナムなどに自身の店をオープン。世界に”プルセル・キュイジーヌ”のファンをつくっている。

    前菜の一品。青森の銀サバ、仏手柑、フレッシュのイチジクやトマトなどにアプリコットとオレンジのソース、甲殻類のビネガーがかけられて。にぎやかなハーモニーを奏でる。

僕たちのルーツは、地中海にある

 とある日曜日のランチ。【サンス・エ・サヴール】の店内はさまざまなゲストで賑わっていた。

 祖父母から孫まで揃った三世代ランチ。婚約者のご両親との初顔合わせのようなちょっと改まった雰囲気のテーブル。40代の女性たちがのんびりとランチを楽しむ女子会。もちろんデートのカップルもいる。

 【サンス・エ・サヴール】の料理は日本ならではの食材をメインに、”プルセル・キュイジーヌ”という軽やかで南仏の香りを漂わせているのが特徴だ。監修するのは南仏モンペリエにあるミシュランスター店【ル・ジャルダン・デ・サンス】のジャック&ローランプルセル兄弟シェフ。この二人は、今は世界中のフーディたちを魅了する【カンテサンス】岸田周三シェフや、【フロリレージュ】川手寛康シェフ、台湾の【RAW】のアンドレ・チャンなど数多くの有名シェフを育てている人物だ。

 老若男女問わずに、人々を魅了する料理をつくり続けるローラン・プルセルシェフに、料理に対する思い、これからのチャレンジ、いろいろなことを聞いてみた。

    インタビューに答えてくれた、ローラン・プルセルシェフ。

【サンス・エ・サヴール】の料理の説明にある”プルセル・キュイジーヌ”とはどういう料理なのですか?

 一言でいえば、それは私たちのルーツです。故郷のモンペリエはスペインとフランスの間に位置し、まさに地中海の影響を受けている場所です。母はいつも漁から帰ったばかりの漁師から新鮮な魚を買い、祖父の畑で育てた採れたての野菜を料理していました。そんな母から最初に料理を教わりました。私たち兄弟にとって、料理とは、故郷で過ごしていた幼少期の頃から”パッション”そのものなのです。

 ですから、故郷のオリーブオイル、レモン、アーティーチョーク、トマトなど、地中海ならではの食材は自分たちの料理のルーツ。”プルセル・キュイジーヌ”ではそうした地中海らしい食材を使うことで、我々のルーツやストーリーを感じていただきたいと思っています。

    <ル・ジャルダン・デ・サンスのスペシャリテ>本日の特選鮮魚をその魚に適した調理法で 契約農園直送の有機秋野菜 レモンヴィネガーソース

-そもそも、なぜ料理人になりたいと思ったのですか?

 もともと、自分の手でなにかを生み出す、職人のような仕事がしたかった。母がつくる家庭料理がおいしかったのものありますね。決して裕福な家ではなかったのでレストランには簡単に行けませんでした。ですから、レストランという世界はどんなところなのかということに非常に興味を持っていました。また、数世代にわたってブドウ畑をつくってワインをつくっていた家だったので、そういう環境も料理に興味を持った理由だと思います。

私が14歳半ころには料理人を目指そうと思って、家で料理をよくつくっていました。そうしたら、ジャックも料理に興味を持ち始めたんです。ジャックは15歳のころから料理の世界へ入りました。双子というのは不思議と同じ職につくことが多いと言われてますよね。私たちも、まさにその通りでした(笑)。

    軽やかなソースが素材をひきたてる。前菜のエビを使った料理。ランチ3,800円~、ディナー8,500円~

-ジャックさんとローランさん、お2人でお店を経営されているわけですが、役割分担などはあるのでしょうか?

 長年ジャックはパティシエを、私がキュイジニエを担当していました。今はジャックは広報、海外展開などを担当し、海外を飛びまわっています。私たちのレストランのメニューはほとんど私が考えています。けれど、ジャックはメニューには口出しはしませんが、料理のアイディアをくれたり、試食をしたときの感想を言ってくれたりします。ほぼ毎日電話をしているから、とても仲がいい兄弟かもしれません。今私は東京にいるけれど、ジャックはメキシコにいます。彼は今、メキシコでフランス大使館のパーティとフランスの化粧品会社ロクシタンのパーティを手掛けている最中です。

 過去15年で海外展開も積極的にやってきましたが、こうした催し物もそれにつれて増えました。

    【サンス・エ・サヴール】シックで落ち着いた店内。東京タワーをはじめとする夜景も美しい。

私たちは、世界を旅する冒険家かもしれない

-日本だけでなく、スリランカ、ベトナム、など海外でも積極的に展開されていますね。それはなぜですか?

 我々にとって旅をすることは欠かせないことなんです、なぜなら、その国の文化や料理に触れ、知ることで、自分のなかで新しい文化的な発見や成長につながっていると思うから。今の時代はフランス料理(キュイジーヌ・フランセーズ)、ではなく、”グローカルなキュイジーヌ”という視点で考えなければいけないと思います。世界各国に素晴らしいシェフがいます。南米もそうですし、アジアも、そして日本ももちろんそうです。彼らのつくる新しい料理に触れて新しい発見があるというのは、今の時代の面白さです。

 私たちは、料理というのは分かち合うものだと考えています。自分たちのノウハウをほかのシェフたちと共有する、というのも必要です。

 30年、料理をし続けていますが、たとえばモロッコ、日本、イタリア、南米などを旅して発見したもの、出会いを通じて我々の料理はつねに進化していると言えます。

    『ブドウの葉で包んでローストした北海道白糠町産仔鹿 ブロッコリーのコンポテ、栗かぼちゃのピュレ、グリオットチェリーとリコリスのレデュクション ソースポワブラード、丹波産黒大豆きなこのアクセント』

-進化する一方で、変わらない大切にしているものがあったら教えてください。

不変なものは、冒頭で申し上げた地中海というテーマ。ベースはクラシックですね。修行したシェフはクラシックなフレンチを教えてくれたので、当然その技術は身に沁みついています。今でこそエスプーマやジュレというものがありますが、それを学ぶ前にまず、ブランケット・ド・ボー、ブッフ・ブルギニオン、ベアルネーズソース、そういうものを学びました。

けれど、世界の人々の嗜好はあきらかにライトな方向にシフトしている。それにあわせて今までの料理の構造をあえて壊して作っているものもあります。酸味、シュクレ・サレ(甘味と塩味)を楽しむこと、食感も非常に重視しています。

 世界が進化しているなかで料理も進化しなければならないでしょう。強すぎるソースやボリュームが多すぎる料理は、はやらない。より軽やかなソースやフルーツを使ったソースを使ったり、レデュクション(煮詰めたもの)して味の深みのあるソースを少しだけ添える、そんなことを実践しています。

-進化しつづけることは、大切なことだと。

 この10年間人々の消費動向が変わってきています。よりリラックスでシンプルなスタイル、けれども味わい深くて同時にクリエイティブ。そういうものを探しているような気がします。パリでは、ガストロノミーの料理をビストロのような雰囲気でリーズナブルに提供している、いわゆる”ビストロノミー”の店がますます増えている。シェフがコックコートの代わりにTシャツを着たり、自らサービスするなど、ガストロノミーのルールがどんどん変化していると思います。

 こうした動きを私は好ましく思います。それは、”質の高い料理の民主化”だからです。若い無名のシェフも小さなレストランをオープンしたとしても有名になるチャンスがある。
ガストロノミーの値段を出さずとも、十分においしい料理がいただける。しかもクリエイティブなシェフもいますし。若いシェフやゲストにとって、そうした体験は良いものだと思います。

    2019年9月にオープン予定の新【ル・ジャルダン・デ・サンス】は、『HOTEL de BELLE VAL』というホテルの中にできる

“光ることはいいけれど、光り続けるのはもっといい。”

-そうした流れの中で、来年、ガストロノミーレストランの本家【ル・ジャルダン・デ・サンス】をリニューアル・オープンしますね。

 僕は個人的にガストロノミーが大好き。それが自分の魂を奮い立たせるものなのです。ただそれを、今の時代に沿うような形で表現します。パートナーと一緒に17世紀のモンペリエの最初の市庁舎だった建物を買いました。そこには、20室を擁するホテルと30人程度が入る小さなレストランをつくります。そこで、今までの【ル・ジャルダン・デ・サンス】とは全然違う店をつくります。

 サービスひとつにしてもよりリラックスしたものにし、料理にも新しいものを取り入れる。非常に軽やかでライトで体に良いメニュー。"Locavore"という「地元産のものを食べる」という造語がありますが、そういったものも意識していきます。

 私たちは53歳ですが、いまだに新しいものをみなさんに提供したいという願望があります。我々のキャリアを振り返ってみると、非常に恵まれてきました。33歳で三ツ星を獲得し、多くのシェフたちを育成してきました。“光ることはいいけれど、光り続けるのはもっといい。”というフランスの言い回しがあります。この言葉が私は好きです。一瞬の成功をおさめて通り過ぎてしまうのではなく、しっかりと構築して光り続けること。一つ確立したら、そのスタイルを変えない、というのではなく、私にとっては進化とクリエーションのなかに大きなモチベーションがあるのです。

(2018年11月10日 インタビュー)


東京でしか味わえない【サンス・エ・サヴール】鴨田猛シェフの料理

    17年間タッグを組み続けている、ローラン・プルセルシェフ(左)と、鴨田猛シェフ(右)。

「プルセルシェフの料理は、何と言っても口にいれたときの食材が持つ味わいが組み合わせることで生まれるハーモニー、そして香りが広がっていくドラマティックさがすごい」と鴨田猛シェフ。東京の自身が任されている【サンス・エ・サヴール】でも、その”食べていくにつれ、味が膨らんでいくようなイメージ”を大切にしているという。そうした鴨田シェフに、プルセルシェフは絶大なる信頼をおいていて、今では東京の店はすべて鴨田シェフが考案。積極的に日本ならではの食材に焦点をあて、柑橘や酸味、シュクレ・サレを巧みに取り入れながら、東京の”プルセル・キュイジーヌ”を生み出している。

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この記事を作った人

山路美佐(ヒトサラ副編集長)

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