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更新日:2019.05.24食トレンド グルメラボ 連載

予約困難な店の新しいカレーが刺激的!『フリースタイル チャイニーズ・ターリー』/【カルパシ】森脇慶子の“今月の気になるヒトサラ”Vol.15

今、カレー好きから注目されているエリア世田谷。その人気の火付け役となった【kalpasi】は日本中のカレーフリークが集まる店。店主、黒澤功一さんがつくりだすスパイスを生かしたクリエイティブなカレーの、どこにもない味に魅了される人続出なのだ。どこかノスタルジックで刺激的。予約を取るのは難関だけれど、それを乗り越えても食べたくなるヒトサラがここにあり!

今月のヒトサラは・・・・・・千歳船橋【カルパシ】
複雑でスパイスの辛さと香りが生み出すカレーで世界旅行『フリースタイル チャイニーズ・ターリー』

 おそらくー。日本人で、カレーが嫌いと言う人は稀だろう。老若男女、それぞれに好みのカレーがあり、そして、その数だけカレーがある。そう、世界中で我が国ほど多種多様なカレーが存在する国もないだろう。

ひょっとしたら、インド人より私たち日本人の方がバラエティに富んだカレーを口にしているかもしれない。何しろ、インドやタイなどのエスニック系はもとより、欧風あり、和風ありの千姿万態さ! 次々と止まることなく個性的なカレーが生み出されているのだから。

 定期的にメニューが変わる千歳船橋【カルパシ】のカレープレート。これもまた、その象徴的なヒトサラだろう。

    『酸辣湯ラサム』にはえのき茸と椎茸がたっぷり。酢の酸味と辣油の辛さを溶き卵がやんわりと包み込む。印中折衷の傑作

 初めて、ここのカレープレートを食べた時の衝撃は今も忘れられない。ご主人の黒澤功一さんは、きっとインドに住んでいたに違いない! てっきりそう思い込んでしまった。なぜなら、彼が作りだすカレーは、いずれも私にとって異次元の風味、想定外の味わいだったからだ。

スパイスのシャープで鮮烈な香り方、複雑怪味な味の広がり方等々、これまで食べてきたものとは、全くベクトルが違っていたのだ。が、しかし。なんと黒澤さんこと黒ちゃんは独学。インドに住んでいたわけでも、ましてや修業していたわけでもなかった。

    手作り感溢れる店内は、さりげなくメゾネット。こじんまりとして落ち着ける。ちなみに、お酒の種類もクラフトビールからオリジナルカクテルまでバラエティ豊か

 聞けば、黒ちゃんが本格的なカレーへとのめり込むきっかけとなったのは、今から15年ほど前。川崎のゲストハウスでスリランカやネパールの人達と同じ屋根の下に住んでいた時のことだ。彼らから教わった現地そのままのカレーの旨さに感動。会社勤めの傍ら、カレーを食べ歩き、美味しかった店のカレーを自宅で再現したり、YouTubeで現地のレシピを見ては勉強していたという。

そして…。好きが高じた黒ちゃん、ついにはインドに行きたくて脱サラ。店を開くまでに至ったのだという。最初の店は浅草。2015年の秋に、地下街の日本酒バーを間借りした僅か6席ほどの小さな店で、オープンするや週3回の営業にもかかわらず、あっという間に行列ができる人気店に。

整理券を配るほどの盛況ぶりを博したものの、4ヶ月で閉店。その後、約8ヶ月の充電期間を経て再開。2016年10月、経堂の住宅地に(カレーマニア待望の)実店舗を構えた。

    『フリースタイル チャイニーズターリー』。奥から『酸辣湯ラサム』、『野菜カリー』、『茉莉花茶ラム』に手前が『豚バラカリー』。先の『油淋鶏』とデザートの『烏龍茶ジェラート』がついて2,800円

 黒ちゃんのカレーは変幻自在だ。ある時は、南インドのミールスやネパールのダルバートなど現地さながらのオーソドックスな味で、しばし味覚の小旅行を楽しませてくれるかと思えば、日本の食材を使ったジャパニーズプレートのような創作カレーで、カレーフリークらの胃袋をがっちり掴むといった具合だ。同じものは作らず、常に前進あるのみ。新しいカレーを作り続けている。

今回、頂いた『チャイニーズプレート』も、そんな黒ちゃんならではの創作カレー。その内容がふるっている。

    スターターとして出される『油淋鶏』。サクサクの衣にスパイシーなソースが絡まり、思わずビールに手が伸びる。ビールもいいが、せっかくなら【カルパシ】オリジナルの『ダニヤハイ』(写真右)を。パクチーてんこもりのサワーだ

 まず、スターターに『油淋鶏』。いわゆる中華の油淋鶏だが、クミンやマスタード、アニスにコリアンダー等々、数種のホールスパイスが入ったソースが、中華とは一味違った爽快感で食欲を刺激する。食事のスターターとしてはぴったりだ。

続くカレープレートには、『豚バラカリー』、『野菜カリー』、『茉莉花茶ラム』、『酸辣湯ラサム』、甜麺醤と実山椒のソースで和えたそら豆に『木耳のアチャール』、ご飯が整然と並ぶ。

このご飯にしても、ジャスミンライスとバスマティライスのミックスと手が込んでいる。見た目はいかにもインド風?の『豚バラカリー』は五香粉入り。スパイシーながらも、口にするとややとろみがあり、古き良き中華料理屋のそれを彷彿とさせる。

    これが、店名となったスパイスの「カルパシ」。きのこのような香りのする珍しいスパイスで菌類に属するとか。別名ブラックストーンフラワー

 対して日本ではもやし豆として知られるウラド豆をベースにした『野菜カリー』は、豆の優しい口当たりが心和む一品。ブロッコリーや人参など野菜の歯応えも柔らかく、クコの実と陳皮の入ったそれは、プレート全体の癒し系的存在だ。

個性的なのは、『茉莉花茶ラム』。煮出したジャスミン茶にスパイスとラムを入れ煮込んだスープで、口にした瞬間の独特な風味は実に印象的。 濃く煮出したジャスミン茶の香ばしさとラムの香りが拮抗し合い、最初はえぇっ、何これ⁉︎と思いつつも、啜り込むほどにはまっていく不思議な味わいなのだ。

そう、多かれ少なかれカレーには、そういった未知の味へとのめり込むちょっとスリリングでワクワクすおいしさがある。

『酸辣湯ラサム』も然り。その名の通り、中華の酸辣湯とインドの辛くて酸っぱいスープ、ラサムをドッキング。6種のスパイスを水から煮出して香りとエキスを抽出したところに酢と辣油を加えて中華テイストを加味。隠し味にトマトを入れ、全体の味をまとめている。

どのカレーも、出汁的なものは使わず、全て水から。それゆえ、食材やホールスパイスの香りがストレートに引き出され、ピュアな味わいとなるのだろう。

    数種類のカレーをミックスしながら食べると、カレーの様々な味わいを楽しめる

 黒ちゃん曰く「オーセンティックなカレーを作る時は、きちんとセオリー通りに作るんだけどジャパニーズターリーや中華風のような創作カレーを作る時は、敢えて基本を外してみたりすることもありますね。例えば、今回のカレーには炒めた玉ねぎを使っていないんです。そうすることで、また、新しい発見があったりもする。そこが楽しいですね。自分が食べたいもの、やりたいもの、面白いと思うものを出す。これが、僕のカレー作りの根本なんです」

 最初は各種一種類づつをご飯と混ぜながら。そして、次第にそれぞれをミックスさせつつ食べるのが【カルパシ】スタイル。混ぜ込むほどに新たな味覚が生みだされ、五感を翻弄。小さな味の冒険を満喫させてくれる。それこそが、ここ【カルパシ】の最大の魅力かもしれない。

黒澤功一シェフからひと言

創作的なカレーは、季節の食材を見ながら思いつくことが多いですね。これから夏にかけては、暑い国のカレーが多くなるかな。基本的に自分が食べたいと思うカレーを作っています。

Kalpasi (カルパシ)

  • 住所:東京都世田谷区経堂4-3-10 1F
    営業時間:[第1部]18:30~20:15/[第2部]20:30~22:15
    定休日:月・火曜
    予約方法:毎週日曜日22時よりLINEにて予約受付開始。ID:kalpasiから申し込み。
    営業に関する速報はTwitterアカウントkalpasi96/FBページを参照のこと。

撮影/今清水隆宏

この記事を作った人

  • 森脇慶子
    「dancyu」や女性誌などで活躍するフードライター。綿密な取材と豊富な経験に基づく記事は、読者のみならずシェフたちからも絶大な信頼を得ている。日々おいしいものを探求すべく新旧問わず様々な店を訪問。選者を務める「東京最高のレストラン」(ぴあ)も好評発売中。

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