1本15万円。2019年は100本限定発売の日本酒『現外』とは、いったいどんな日本酒?
先日、ある超高額の日本酒の新商品の発表会が都内で行われました。価格は、驚愕の1本15万円……! しかし、その価格にもかかわらず先行での予約販売分10本は、販売開始後わずか12時間で完売。そんな鮮烈な登場を果たした『現外 –gengai-』とは、いったい、どんな日本酒なのでしょうか。
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再現不可。24年間の熟成による日本酒の味わい
きっかけは、1995年の阪神淡路大震災だった
一般的な工程を断念した結果、偶然生まれた
『現外』が示す、日本酒“ヴィンテージ”の価値
どこで購入できる?
再現不可。24年間の熟成による日本酒の味わい
深く鮮やかな琥珀色が、『現外』ができるまでにかかった歳月を物語る
24年間——。それがこの『現外』という日本酒の熟成にかかった時間です。
先日、銀座のレストランで催された記者向けの発表会では、出席者に一杯ずつ振舞われ、筆者も飲む機会を得ました。
「まずはグラスをスワリングして、香りを楽しんでみてください」。そう案内されるがままに、ワイングラスを鼻に近づけると、いままで日本酒に感じたことのない熟成香が鼻に入り込み、なかで膨らむような感覚を覚えます。
口に含めば、まず甘味と苦味が、そして追うようにして酸味が広がり、心地よい余韻のように旨みが舌に残ります。口から鼻にかけていっぱいに広がる芳醇な香りと、複雑な味覚が順々に押し寄せるような感覚に、ギリシャ神話の神々が宴の際に楽しんだというネクタルや、はたまたインド神話で天上の神々が飲んだというアムリタ(甘露)といった、空想上の飲料の名が頭をかすめます。
商品発表会で、ペアリング例として供されたのは、西京味噌と現外で漬け込んだフォアグラのテリーヌと、『現外』で野菜とともに煮込んだ仔羊
長期熟成されたお酒ならではの味わいは、ともすればツウ好みのエグミや渋みを伴うことがあります。しかし、『現外』の味は至ってクリアであり、洗練されています。ドリンカビリティは非常に高いと言えます。
もしかすると24年間熟成させれば、他の日本酒でも同じような味わいになるのかもしれません。
しかし、『現外』というお酒が再現不可だといわれる所以、そしてなぜ24年も熟成されることになったのかという理由は、その数奇な生い立ちにあります。
きっかけは、1995年の阪神淡路大震災
沢の鶴に残っていた被災した蔵の写真。震災の2日後には、出社できる社員が出社し、蔵の片づけをしたという
『現外』の製造元である、沢の鶴株式会社は、兵庫県・灘五郷で300年続く、老舗の酒蔵です。1995年1月17日、酒づくりの真っ最中であった沢の鶴は阪神淡路大震災に被災し、その際に多くの貯蔵タンクが倒壊してしまったといいます。
それでも、いくつかが倒れずに残ったタンクの中に、日本酒の元となる「酒母」が入ったタンクが一つありました。このタンクこそ、『現外』の元となった日本酒なのです。
日本酒はふつう、「酒母」をつくったあとに、そこに水、蒸米、麹を加えて発酵をすすめる「醪(もろみ)づくり」と呼ばれる工程を経て、しぼり、火入れへと進みます。しかし、蔵全体が被災してしまったために、設備破損や人手不足などの理由から、タンクに残った「酒母」は、通常の酒造りの工程を踏むことができませんでした。
一般的な工程を断念した結果、偶然生まれた
沢の鶴株式会社、マーケティング部の宮崎さん。「酒は育てるもの」という言葉が印象深い
沢の鶴酒蔵のマーケティング部、宮崎さんは、「酒母の状態とはいえ、お酒であることに変わりはありません。通常の酒造りができないからといって、そのお酒を捨ててしまうことは、蔵としてできませんでした。当時の蔵人は、これをお酒にするにはどうしたらいいかを考えた結果、酒母をしぼらざるを得なかった、と。通常の酒造りでは考えられない工程です」と話します。
当初は、酸味が強く、すっぱくてとても飲めたものではなかったこの「酒母」が、急激に変化しはじめたのは5年ほど前。酸味が取れ、甘みと丸みが出てきて、透明感があり、それでいて深い味わいのお酒に変わってきた、と宮崎さんは言います。
意図した製法でないうえに、どうなるかわらかないままに熟成を続けた結果できあがった。つまり『現外』は偶然によって誕生した日本酒であり、それが再現不可といわれる所以なのです。
『現外』が示す、日本酒“ヴィンテージ”の価値
深く鮮やかな琥珀色が、完成までにかかった歳月を物語る
一般的にいって日本酒には長期熟成という文化は以前からあるものの、ワインやウイスキーに比べて、そこまで成熟しているわけではありません。しかし、だからこそ『現外』は高水準の日本酒の長期熟成の味わいの価値を広げるべく提案します。
長期熟成を含めた経年変化というものは、実行する前から予測がつくものではないということは周知。分子結合などの要素が複雑にからみあい、偶発的に誕生するもの。それこそが、経年変化の価値であり、面白みでもあります。
人の手で生んだものではなく、時間だけがつくり出せる味わい。
その深い奥行きのある味わいに、自分が生きた年月を照らし合わせたり、誕生年を重ねたり、同じ時代にともに存在することに感動したり……そうすることもまた、“ヴィンテージ”の価値なのだと、『現外』は教えてくれます。
そんな一本を開けるならば、やはり特別な時間に、特別な人と開けるにふさわしい。家でそれに見合う料理を用意するのが難しいならば、お気に入りのレストランに、ボトルの持ち込みの打診をしてみるのもいいでしょう。
どこで購入できる?
「SAKE100」ブランドサイト。「100年誇れる1本を。」をブランドコンセプトに、高品質、高価格のオリジナル日本酒を販売している
今回、沢の鶴とタッグを組み、『現外 -gengai-』を発表した株式会社Clearは、日本酒に特化した事業を行うスタートアップ企業です。
2014年、ローンチした日本酒専門WEBメディア・SAKETIMESを運営するかたわら、メディア事業で構築した日本酒における深い知見と酒蔵とのネットワークを活かし、2018年7月にプレミアム日本酒ブランド「SAKE100」をリリース。酒蔵とパートナーシップを組み、高品質、高価格でプレミアムなオリジナル日本酒の開発を行い、「SAKE100」ブランドとして展開しています。
これまでに3商品を発売し、そして新たに2019年5月、第4弾として新たにラインナップに加えられたのが、『現外』で2019年は100本のみの販売。現在、「SAKE100」ブランドの商品は、下記URLからの直接購入でのみ入手できます。
「日本酒は、一般的に日常に寄り添うことのできるお酒だが、『現外』は非日常のシーンで特別な時間を演出する」と、商品発表会での株式会社Clear代表の生駒龍史さん
郡司 周 (ヒトサラ編集部)
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