更新日:2017.05.27旅グルメ 連載
アジア・フーディーズ紀行 vol.12:韓国・ソウル【PIERRE GAGNAIRE a Seoul】
上海、シンガポール、バンコク、ソウル、香港……アジアの混沌は、料理においてもモダンを超越するのか? そんな直感を確かめるべく、アジアのガストロノミーを巡ってみました。第12回はフランス料理界きったの天才肌が韓国ソウルで展開する【ピエール・ガニェール】です。
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4皿のコースとは思えないほどの料理の種類はアミューズの前から
メインの「海」は、海に囲まれた韓国の食材を多用
メインの「陸」は、食材をくまなく使い尽くすフランス流
グルメシーンに関する仕事をしていると、どうしても新しい世代の動きの方に目が行きがちなのですが、フランス料理のトップ・オブ・トップの分野で、今年の春にちょっと気になるニュースが流れました。
ボルドーにある名シャトーがオーナーを務めるグランメゾン【ジョエル・ロブション】が閉店。2週間後には、ピエール・ガニェールがその場所を引き継ぐという発表がなされました。
それを受けて、気の早い人は、すわ、世代交代か?!みたいな見解も流れていましたが、さて、どうなのでしょうか。
東京、ソウル、香港に支店を展開するピエール・ガニェール氏
ジョエル・ロブション、アラン・デュカス、ポール・ボキューズなどが現在のフランス料理を牽引する3大巨匠として挙げられるかもしれません。
ここで紹介したいピエール・ガニェールは、そこに続く存在とも言えます。
東京のANAインターコンチネンタルホテル内にもガニェール氏の支店は展開されていますが、今回はソウルのお店に訪れてみました。
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ソウルきっての名門ホテルの一つ「ロッテホテル」新館35階に位置します
ロッテホテルのメインダイニングとして使われているだけあって、一歩足を踏み入れると、その驕奢な雰囲気に固唾を飲んでしまいます。
そして、北漢山からソウル市内を一目で見渡せる展望は抜群です。
4コースとは思えないほどの皿量はアミューズの前から
席についてまず驚いたのは、ドリンクや料理の注文をする前に、料理が運ばれてきたこと。ちょっと驚いた表情が出ていたのでしょう、スタッフは「これは、全員に出しているものです。この後、ランチコースには、アミューズもありますからね」と教えてくれます。
とは言いつつも、これが出てきた後に、まだアミューズもあるの?とさらに驚いてしまったのですが。
これらを摘まみながら、コースを選びます
メニューブックをパラパラめくっていると、気になったのはイントロダクション。「韓国食材に敬意と尊重を表現する」という件です。
先の巨匠たちは、自分のスタイルが強いため、なかなかこういうことは言わないものです。「最高のフランス料理を提供する」とは言うでしょうが。
ランチのメニューは、3パターン。『3コース 海』85,000KRW、『3コース 陸』121,000KRW、『4コース フルメニュー』140,000KRW、要は、メインに魚を選ぶか、肉を選ぶか、両方か、です。
せっかくなので、魚・肉が両方出る『4コース』をオーダー。
パンに続いて、ようやくアミューズ。メニューではアミューズ扱いになるのですが、限りなく、前菜に近い感じで、『パテ』と『茹でタコのサラダ』。そういったコースの流れも、独創的です。
メインの「海」
魚料理は、伺った9月下旬には『スズキのポワレ』でした。メニューに関しては、少なくて友1か月に1回は変わっていくそう。
調理法のアプローチがまったく違うので、パッとは気づかなかったのですが、そういえば、ソウルでスズキを食べるのは2度目でした。
前々回に紹介した【ミングルス】でも、メインに使われていたことを思い出します。
アミューズで出てきたタコも、【チョンシク】で印象的に使われていました。
そうやって考えると、「韓国の食材に敬意を払う」という言葉も説得力が出てきます。
メインの「陸」
肉料理は、この日はウサギ。どうやって出てくるか期待していたら、これもまたちょっとした驚き。4皿出てきました。
『ムネ肉の煮込み』、『モモ肉のロティ』、『内臓のリゾット』、『頬肉のリエット』と、多くの部位を使い切るところは、フランス料理ならでは、とも言えるでしょう。
デセールはご愛敬?
デセールのメニュー名は『ピエール・ガニェールのデザート』。ショコラのスイーツで、Nソウルタワーをあしらっているところはご愛敬でしょう。
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『ピエール・ガニェールのデザート』はショコラとソルベの2種
話をピエール・ガニェール本人に戻すと、彼はどちらかと言うと「天才肌」という評価が一般的で、その料理も「芸術的」だとか「独創的」と言われることが多いシェフです。
彼自身が腕を振るう際には、「即興性」も着目に値するという話もよく聞きます。
例えば、ロブションがチーム力で圧倒的な完成度を追求するタイプとするならば、フリーフォームなところがガニェールの魅力だとも言えます。
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コーヒーとプティ・フール。オリジナルのショコラも付きます
逆に言えば、彼の天才性を真似できるスタッフはそうそういるわけはないので、経営や多店舗展開に苦しむ毀誉褒貶の激しいシェフでもあったわけですが、ここに来て、安定感が出てきたように思います。
ガニェール本人の才能をコピーできなかったとしても、例えば、現地の食材を生かすことによって多様性を出すことはできるようになっています。
複製不可能なものではやり方次第ではその本質を量産できる。そんな一つの解決法を、ソウルで感じました。
PIERRE GAGNAIRE a Seoul
営業時間:ランチ 12:00~15:00 ディナー 18:00~22:00
定休日:無休
電話番号:+82-2-317-7181/7182
予約の仕方
電話はもちろん、オフィシャルwebからの予約フォームもあります。日本語対応もしているので便利です。
ドレスコードと店の雰囲気
ドレスコード: スマートカジュアルまたはビジネスカジュアル(男性は襟付シャツを着用のこと。短パン、トレーニングウェア、トレーナー、スリッパの着用はNG)。女性は履き物の種類によって入店をお断りする場合があるとのこと。
撮影・取材・文/杉浦 裕
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