バンコク【Gaggananand(ガガンアナンド)】|ニューオープンの「ガガン」に行ってみた ~ヒトサラ編集長の編集後記 第26回
「アジアのベストレストラン50」で4年連続1位の座をキープしてきたバンコクの【ガガン】が惜しまれながらも先日閉店(2019年8月24日)しました。次は日本で新展開と言われていましたが、結局ガガンは自分のフルネームを冠したレストラン【ガガンアナンド】を、2019年11月1日にバンコクの中心にオープンしたのです。
新しいガガンの25皿とは
【ガガンアナンド】。この新しい【ガガン】はスクンビット駅から歩いて15分ほど。観葉植物に囲まれたお洒落な建物は、昔のそれとはまた少し違った、おしゃれな雰囲気に包まれていました。50人以上は収容できるそうで、当のガガン氏曰く「まだこれからだよ、オープンしたばかりだもの、楽しんでって」。
2階「Arena G」
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1階「G's Spot」
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陽気なシェフ、ガガン・アナンド
コースは以前のように25皿、お酒のペアリングを頼んでいたので、2,3皿ごとに1杯のグラスにお酒が注がれます。登場する25皿の食材はひとつひとつがパズルの一部になっていて、お皿が運ばれてくるたびに、料理に使われている食材を想像しながら、手元のパズルを完成させていきます。
この日ペアリングしたワイン
テーブル中央には、使用された食材を当てるパズルが
乾杯のシャンパーニュはJ-Mセレック。第三世代の筆頭といわれる作り手の爽やかなもの。最初に出てきたのはマンゴーでできた卵黄のような飴細工。なんだこれはと、手でとって口に入れると中がはじけ、マサラ、ヨーグルト、ざくろなどのフレーバーが飛び出し、いきなりインドに連れていかれます。
1皿目
で、早くも2皿目に名物の「Lick it up」(舐めろ)の皿。皿の料理をなめとるわけですが、みな面白がって皿をなめています。皿のビジュアルはランゴーリだということで、インドで見られる庭絵でしょうか。カラーフェスなる絵の具を掛け合うフェスもあるそうで、そのイメージでしょうか。カリフラワーやココナッツ、スピナッチパウダーの味がします。
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2皿目
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舐めたあと
なめながら鼻に色をつけたりしてカラフルに笑ったあと、秋が登場します。いま日本はちょうど秋。四季のないタイという国で日本の秋を愛でるという趣向のようです。秋色に彩られたフォアグラ、あん肝、ゆず、ちゃつね、などカレーの構成要素に甘いコクが加わり、そば粉でつくられた煎餅がパリパリといい食感。
3皿目
オーストラリアの白ワイン「フローラ」にあわせて出てきた4皿目はソルテッドエッグ。シンガポールなどで見かけるものですが、マシュマロベースになっています。下にオブラートが敷かれていて、一緒にくるんで食べます。5皿目はかんぱちと海苔のゼリーに根セロリのタルト、海苔巻きのイメージでしょうか。
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4皿目
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5皿目
そして6皿目はすすきを思わせるタケノコ料理が大きな壺とともに現れます。炭焼きですが、キヌアとピックリングスパイスで味付けされています。カレー風味の秋。不思議な感覚です。
赤ワインに変わります。アルノー・ロバーツ。ガメイ種の軽い感くて渋みがないものに7皿目のフローズントマトを合わせていきます。トマトウォーター、コリアンダーのピューレ、ブラッディマリーでつくられています。
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6皿目
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7皿目
8皿目はトリュフの香るミルクタルトでストリートフードを高級に構成したもの。こういうストリートフードの再構成はファインダイニングのシーンではよく見られます。ただし、食材は何かを当てる段になると、メインの食材がいろんな要素で隠されていたりするから、みな悩みます。料理は楽しみながら一口でいただく、という流れが続きます。
8皿目
9皿目は熱いカレーコロッケ。メテオ(流星)だとのことですが、中身は魚のすり身などで構成されています。いくらやホタテも入っていて食材当てはさらに難しい。
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9皿目
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中にはいくらなど
ロゼかと思いきや、オーストラリアのレインボウ・ジュースという面白いワインが注がれます。所有者の畑にある23種類以上のブドウが全部入っているとか。ブドウを無駄にしないというコンセプトのレインボウ・ジュースに合わせる次の2皿にはサステナブルというテーマが見え隠れするようです。
10皿目は紫色の食材で構成されたハート型の一皿で、ナスや紅芋、ビーツなどがつかわれています。紫という色は食欲をそそる色ではありませんが、それをハート型にすることで、おやつ感覚で食べやすくなる気がします。
10皿目
11皿目は白いだんご状のポテトでスモーキーな香りに包まれています。インドではポテトは重要な食材で、お皿に見立てたのはキャベツ。ともに安価で栄養価の高いものです。それを皿まで残さず全部食べるのも前出のワインと同じ考えからでしょうか。
11皿目
そして12皿目にみんな中指を立てます。皿をなめるに続いて行儀の悪い行為をあえてします。そこに女性シェフから手渡しでお菓子が乗せられます。インドのストリートフードのパニプリをアレンジしたもので、甘さと刺激があります。インスタ映え狙い、といったところでしょうか。今っぽい風景です。
12皿目
13皿目はドーサ。クレープですね。タマリンド、バナナのペーストを添えて、カレー風味満載です。そこに日本酒が登場、三重県清水醸造の「作(ざく)」の大吟醸です。カレー風味のあとでは、とくにメロンや桃のフレーバーを感じます。14皿目のうにとなすとフィンガーライムで構成された料理に合わせるのですが、ガガンが愛する日本のイメージなのだとか。この皿だけは、やはり日本酒と合わせてほしい、と彼はいいます。
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13皿目
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14皿目
ワインが変わります。トスカーナのモンテドリーニで、黄色味の強いベルナッチャ中心のブドウを樽で熟成させたもの。次から少し料理のボリュームが上がります。
15皿目、カチョリというインドの揚げパンです。グリーンピースの熱々のムースが入っています。16皿目はコーンかと思いきやバナナの葉っぱでくるまれたイベリコ豚とチーズ。西洋は大航海時代のポルトガルとインドをミックスしたイメージだとか。
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15皿目
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16皿目
次はロワールのソービニオンブラン100%のオレンジワイン。
17皿目にパイナップル、グリーンアップルなどで出来た飲み物が箸休め的に出てきて、そのあとの18皿目にたいやきの登場です。中はひよこまめのムースで優しいおいしさがあります。
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17皿目
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18皿目
ここまでで3時間くらいかかっています。
音楽はガガンにしてはおとなしいめのものがずっと流れています。
だんだん終電の時間などが気になるのですが、それは野暮だろといわんばかり。食事はまだまだこれから、出されるペースが遅くなって、酔いは回ります。
着々とパズルも組み立てられていきます
19皿目はベビーチキン。サフランベースのタピオカが添えられています。さわやかなカレーといった感じでしょうか。20皿目はうみぶどうやあわび、ココナッツなどでできた皿。アワビの肝に見立てた黒ゴマのペーストがとてもおいしく、こういう海鮮系は、なかなか日本では味わえない感じです。
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19皿目
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20皿目
香りの強いシラーズの赤が出てきます。西オーストラリアのもの。
さて、ここからが、いわゆるメインなのでしょうか。
構成はわかりにくいのですが、七輪に乗せられた焼肉の登場です。21皿目。これはラムの炭火焼きだそうで、ワギューラムと言っているそうです。ラムの臭みはなく和牛の柔らかさが万人受けしそうな感じ。カルダモンや杉などで香り付けされ、チキンとトマトベースのカレーソースでいただきます。肉の脂がおいしく香り高く、シラーズの赤との見事なマリアージュにちょっとほっとします。
21皿目
22皿目が炊き込みご飯。チキンスープをベースに、ポルチーニやモンキーヘッドなどの地元きのこにオイスターマッシュルーム。香りが華やかに飛び回ります。ご飯はこれまた薫り高きバスマティライス。バーベリーで酸味がつけられていて、お替りしたいほどのおいしさ。カレーをどこかに常に感じながら、しめのご飯ということです。
22皿目
デザートワインということではなく、少しクールダウンしてほしいからと同じく西オーストラリアのドライで爽やかな白ワイン。デザートワインはありません。
23皿目は、パイナップルとジャスミンのジュースにミルクのゼリー、食べられる花が添えられて、スモークとともに登場。これでご飯を食べた後のすっきりを演出。24皿目はマッシュルームのお菓子、チョコレートっぽい風味で、アイラ島のウィスキーがかけられていて、ほどよい甘さに抑えられています。
最後の25皿目はアプリコットやゆずのジャムが乗ったタルト。
以上、お茶やコーヒーはなし、といったコースでした。
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23皿目
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24皿目
25皿目
さてさて、25皿全部で5時間半の長丁場でしたが、不思議と食べ疲れはしませんでした。ガガンの世界観でいろんな国へ連れてってくれるのですが、常にカレーの香りはどこかに隠れていて、それはガガンのアイデンティティでもあるのでしょう、ベースはぶらさないというスタンスは理解できます。
食材のパズルが完成
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裏返すとお店のレイアウトが描かれていました
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まだオープンしたばかりで、これから、面白い進化を遂げてくれることを期待します。
個人的には以前の料理より遊びに成熟度が加わり、味わいも深化していると感じています。
それはバンコクという街の懐の深さと通底してるのかもと思いました。
街はどこも渋滞です
【Gaggan Anand Restaurant】
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電話:+66 98 883 1022
住所:68 Sukhumvit 31, Khlong Tan Nuea, Watthana, Bangkok 10110 タイ
Website:
https://gaggananand.com/request-a-table
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界を旅してきた編集者、紀行作家。
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