和食の定番、生まれはどちら?
ユネスコの無形文化財への登録も記憶に新しい和食。一口に和食といってもすべてが日本発祥というわけではなく、海外由来である日本料理がいくつも存在することをご存知でしょうか。その中には英語圏でも通じる『アノ料理』も含まれているのです。
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戦国時代に海を越えてやってきた料理たち
寿司の『いくら』や『シャリ』も外来語?!
とんかつの『カツ』はフランス生まれ
戦国時代に海を越えてやってきた料理たち
日本の天ぷらは英語でも『Tempura』と表記されるほど和食として深く浸透している料理のひとつですが、天ぷらという言葉がもともと日本語ではなかったと聞いたら驚かれるかもしれません。語源は諸説ありますが、中でもポルトガル語で『味付け』や『固くする』という意味を持った『Temperar』からきている説が有力とされています。
戦国時代にポルトガルから銃やキリスト教が伝来したころと時を同じくして、さまざまなポルトガル文化が日本に伝来しました。その際にそのまま日本のものとして定着した食べ物は他にもあります。
たとえば、星の形をしたかわいらしい『金平糖』も、砂糖菓子をさす『Confeito』から来ているといわれており、カステラやビスケットなどと一緒に南蛮菓子としてキリスト教布教の際に庶民に配られ、人々の関心を集めるために使われていたそうです。
お寿司の『いくら』や『シャリ』も外来語
お寿司に欠かすことのできない『シャリ』ですが、実はこの名前も中国やインドから伝わった言葉といわれています。仏道の言葉ではお釈迦様の骨のことをサンスクリット語が語源とされる『舎利』と呼んでおり、遺骨の色や形と様子が似ていることからお米を舎利と呼ぶことになったのが始まりなのだとか。
ほかにも、お寿司で定番のネタである『イクラ』はロシア語からきています。ロシアではイクラは『魚卵』『小さい粒状のもの』という意味で、サケの卵に限らずキャビアやたらこなどもすべてイクラと呼ばれています。そうするとどうやって区別をしているのかが気になりますが、サケの卵は『イクラ・クラスナヤ(赤いイクラ)』キャビアは『イクラ・チョールナヤ(黒いイクラ)』と呼んでいるのだそうです。
とんかつの『カツ』はフランス生まれ
日本では『勝つ』と音感が同じことからゲン担ぎの食べ物としても親しまれている『とんかつ』も、もともとは外来語でした。とんかつの『カツ』は英語で肉の切り身を意味する『Cutlet』であり、さらに『Cutlet』の語源は骨付き背肉を意味するフランス語の『Cotelette』であったとされています。
最初は『カツレツ』として日本に伝わり現在もその言葉が残っていますが、昭和初頭に【元祖とんかつぽん多】で『とんかつ』として売り出された豚肉のカツレツが評判となり、次第に『とんかつ』という略語が定着して今に至るといわれています。
日本固有のものだと思っていたものが実は海外由来だったと知って、驚く方も少なくないかもしれませんが、裏を返せばそれだけ多くの世界や人々の影響があって今日の和食があるとも言えます。
それぞれの料理が国境を越えたドラマに思いを馳せてみれば和食の味わい深さがまた違ったものに感じられるかもしれません。
坂野絵美(フリーライター)
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