ヒトサラマガジンとは RSS

更新日:2021.09.22食トレンド

代々木八幡から鎌倉へ、進化した人気スペイン料理店に注目|鎌倉【アンチョア】

代々木八幡のスペイン料理店【アルドアック】が鎌倉に移転。名を新たに【アンチョア】として、2021年8月にオープンしました。人気店を切り盛りしてきたオーナーシェフ・酒井涼さんの次なるステージは、早くも注目の的に! 郷土料理をベースに、酒井シェフの創造性をちりばめたスパニッシュというスタイルはそのまま、【アンチョア】では鎌倉ならでは新しい一面を見せています。

鎌倉アンチョアのカウンター

スペイン全土の味をアレンジした、シェフの真骨頂

    カウンター3席、4人掛けテーブル2卓のメインフロアは12歳以上が利用可能

    カウンター3席、4人掛けテーブル2卓のメインフロアは12歳以上が利用可能

鎌倉駅西口から徒歩3分ほど、御成通りから路地に入った一角にオープンした【アンチョア】。走る江ノ電を目前にする線路沿い、都心から訪れると小旅行気分になるロケーションです。

    窓側のテーブルはお子様もOK。行き交う江ノ電を眺めることもできる

    窓側のテーブルはお子様もOK。行き交う江ノ電を眺めることもできる

2012年に開店した【アルドアック】の幕を閉じ、鎌倉へ移ったのは「海の近くでやってみたかったから」という酒井シェフ。環境をがらりと変えただけでなく、空間は8席のみのカウンターから、カウンター+テーブル3卓の空間へと広がりました。

そこで味わえる料理は2つのコースで展開します。1つは「デグスタシオンコース」です。

    酒井涼シェフのスペシャリテでもある『ピキージョ』

    酒井涼シェフのスペシャリテでもある『ピキージョ』

「デグスタシオンコース」は、スペイン各地の郷土料理をモダンに昇華させた皿で構成されます。【アルドアック】時代から人気の『ピキージョ』もその一つです。
タラと海老のすり身を詰めた赤パプリカに、色鮮やかなソースをあしらって。パプリカの甘みと魚介の旨み、同じくパプリカを使ったソースが調和します。

    テーブル上で凍ったいちじくが削りかけられる。『イカのロースト いちじく添え』

    テーブル上で凍ったいちじくが削りかけられる。『イカのロースト いちじく添え』

イカ×いちじくという、組み合わせの妙に唸らせられる一皿。
柔らかくも程よい弾力が楽しめる塩梅に火入れしたイカにイカ墨のソースを添え、何と凍ったいちじくを削りかけて。口に入れるとイカの香ばしさとともに、甘いいちじくが溶け広がり、官能的ともいえる味わいです。
旬のいちじくがある時期しかいただけない、季節メニューです。

    鍋で登場してから皿でサーブされる『アロスアバンダ』。以上の料理は「デグスタシオンコース」12,100円より

    鍋で登場してから皿でサーブされる『アロスアバンダ』。以上の料理は「デグスタシオンコース」12,100円より

〆には、見慣れたパエリアとは様相を異にする『アロスアバンダ』を。
アジやサワラ、伊勢海老にマコガレイなどなど、新鮮な地魚をふんだんに使ったスープで炊き上げたパエリアです。
鍋底が見えるくらい薄く広げたお米は、焼き付けたような香ばしさが引き出され、具材がないシンプルさ故に、魚介の濃厚な旨みをダイレクトに味わえます。その力強い味わいは、にんにくの効いたアイオリソースを添えても美味。〆ながらもワインを誘います。

伝統料理に裏打ちされた骨太さがありつつも、軽やかで独創性が楽しめるメニューの数々は酒井シェフならでは。

郷土料理尽くめのコースで、バスク食べ歩きの気分に!

もう1つの「バスク郷土料理コース」では、バスクを代表するクラシックな料理が楽しめます。「旅した気分になれるような、現地そのままのメニューを」という酒井シェフの言葉通り、本場仕込みの味に出会いたいときはこちらのコースを。

    『ピンチョス4種』は「バスク郷土料理コース」7,700円より

    『ピンチョス4種』は「バスク郷土料理コース」7,700円より

美食の街と称されるサン・セバスチャンのバルでお馴染み、ピンチョスを盛り合わせに。あれこれと摘めるのが楽しい一品目です。

海老の串焼きは有名バル【ゴイスアルギ】の名物、万願寺唐辛子を添えたのはチョリソの一種『チストラ』。三崎マグロの自家製ツナはトマトとゆで卵と一緒に、マリネしたサバには羊のチーズとママレードを合わせて。青唐辛子・アンチョビ・オリーブの組み合わせた『ヒルダ』は定番ピンチョスです。

  • チストラを掛けたバーは、食材を干すために特注で設置したもの

  • ゲタリアでは欠かせない、魚を炭火で焼くための網

ピンチョスとして登場した「チストラ」は自家製。店内の片隅に吊り下げられて、完成を待っています。
厨房にある魚型の網はオプションメニュー『鮮魚の丸焼き ゲタリア風』に使われるもの。バスクの港町・ゲタリアで親しまれている名物料理と同様に、この網で魚を挟んで炭火焼きにします。
食材やツールも現地仕様。しばし、バスクに思いを馳せる食体験をどうぞ。

    右から『アルス・コレクタ ブラン・ド・ブラン』、『アストビザ アラバコ チャコリ ロゼ』、『エンビナーテ タガナン・ティント』

    右から『アルス・コレクタ ブラン・ド・ブラン』、『アストビザ アラバコ チャコリ ロゼ』、『エンビナーテ タガナン・ティント』

料理に合わせるお酒はもちろん、スペインワインが主力です。
バスク産の微発泡ワイン「チャコリ」はグラス800円、カヴァは1,000円から。その日によって銘柄が変わるグラスワインは800円から、ボトル4,000円から揃っています。

神奈川の旬素材を使い、鎌倉ならではの新しい味を

鎌倉に移ってから、地元で手に入る食材の質の高さを再認識したという酒井シェフ。代表的な鎌倉野菜や相模湾の魚介をはじめ、鶏に豚にジビエまで、神奈川産の旬素材を積極的に取り入れています。

    毎日足を運ぶ「鎌倉市農協連即売所」をはじめ、地元で手に入る農産物は充実している

    毎日足を運ぶ「鎌倉市農協連即売所」をはじめ、地元で手に入る農産物は充実している

「引き算を意識するようになった」と語る酒井シェフの料理には、個性豊かな地元素材は欠かせない一要素でもあります。いい食材だからこそ、それらの持ち味を活かし、ストレートに伝えていく。

それは「スペインでは基本的に地産地消」と続く言葉通り、風土や伝統を映したスペイン郷土料理という原点を体現しているようです。
神奈川・鎌倉ゆえに生み出されるであろう、【アンチョア】ならではの味に期待大です。

    独自の表現方法を持つ鴻来有希さんの絵画。季節によって、作品を入れ替えていく予定とのこと

    独自の表現方法を持つ鴻来有希さんの絵画。季節によって、作品を入れ替えていく予定とのこと

店内に飾られている絵画は、葉山在住の画家、鴻来有希さんの作品。海水を混ぜたアクリル絵の具で描かれています。海水に含まれる有機物が光や空気の影響を受けることにより、これから色形が変化していくのだとか。

レストランという空間も、その土地にあるものを材料にして、その土地ならではの環境で変化していくのかもしれません。【アンチョア】の鎌倉時間はまだ始まったばかり。酒井シェフが構えた新しい場は、これからどう進んでいくのか。ワクワクしながら追いかけたくなります。

この記事を作った人

撮影/今井 裕治 取材・文/首藤 奈穂(フリーライター)

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(12/6~12/12)

エリアから探す