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更新日:2022.08.05旅グルメ

コンビニよりも自然が近い、北海道広尾町。生産者の町で生まれた“人情”ガイドブック『PIRUY-ピルイ-』

車を走らせていると、窓の外には緑の牧草地でのびのびくつろぐ牛たち。青々とした海と船。ここは食糧自給率1200%の十勝を支える第一次産業が豊かな十勝・広尾町。この場所で暮らす生産者たちが町のガイドブック『PIRUY-ピルイ-』を制作した。この本をつくった意図と、本の内容を紹介するとともに生産者を訪ねて食のトレーサビリティを感じる旅を提案します。

広尾町,PIRUY-ピルイ-

食物自給率1200%の十勝を支える生産の町、広尾町

突然ですが、北海道十勝にある広尾町という町をご存じですか?

羽田空港から帯広空港まで飛行機で約1時間半。そこから南下すること車でおよそ50分。農業王国と名高い十勝においては珍しく、海に面した港町です。古くから秋鮭や昆布、水揚げ日本一に何度も輝くシシャモや毛ガニなど、太平洋の豊かな恵みに支えられた漁業が盛んな十勝の海の玄関口となっています。

また、日高山脈の麓であり、町の面積の8割を占める広大な森林地帯を活かした林業、海霧のもたらすミネラルが育む牧草に支えられた酪農も盛んです。

    牧場の経営からカフェの運営、六次化まで自社で行う【菊地ファーム】の放牧地。この景色を見ながら絶品のソフトクリームやジェラート、牛乳がいただけます

    牧場の経営からカフェの運営、六次化まで自社で行う【菊地ファーム】の放牧地。この景色を見ながら絶品のソフトクリームやジェラート、牛乳がいただけます

5年ほど東京でヒトサラ編集部員として働いていた私は今、そんな海も山も川もすぐそこにある自然豊かな十勝広尾町に魅せられ、2022年4月から移住し、猟師と編集者を兼業しながら生活しています。

    猟師と編集者として活動中の中村麻矢です。約2年前までヒトサラ編集部に所属し、この「ヒトサラMAGAZINE」も担当していました

    猟師と編集者として活動中の中村麻矢です。約2年前までヒトサラ編集部に所属し、この「ヒトサラMAGAZINE」も担当していました

私が考えるこの町の魅力は、猟師、漁師、酪農家といった生産者が揃っていて、“おいしい”の原点に触れられること。そして、プロサーファーや木工職人といった自然と共生する職人たちが揃っていること。おいしいものもたくさんあるし、人も優しいし、鶴やウサギも見られるし……、と話しだしたらキリがないけれど、広尾町はエネルギーに満ちています。

    拾い昆布という漁法で、マッケと呼ばれる漁具を使って海に漂う昆布を採ります。朝、海に行くと必ずといっていいほどこの姿を見かけます

    拾い昆布という漁法で、マッケと呼ばれる漁具を使って海に漂う昆布を採ります。朝、海に行くと必ずといっていいほどこの姿を見かけます

昆布を採る漁師や、放牧されている牛やその世話をする酪農家の姿が日常的で、食べるだけでは見えなかった生産者の想いや葛藤も含めた“リアルな食”がここ広尾町には詰まっています。その想いまで実感して新鮮な食材を食べられることは、食いしん坊な私にとって最高の贅沢。そして、SDGsが注目されているこの時代に、食のトレーサビリティを学んだり、自然の営みや循環を意識するにはうってつけの環境だと思っています。

すごくいい町。そうだ、人が主役のガイドブックをつくろう!

景色もいいし、食材も豊かだし、なによりこの町で働いている人たちはパワフルで面白い。十勝の中でもなかなかコアで、道内でも知らない人が少なくない田舎町だけれど、この町の魅力にまだみんな気づいていないだけでは……!?

この町をもっと多くの人に知ってもらいたいし、来てもらいたい。そのために、まずは広尾町のガイドブックが必要だと感じ、漁師や酪農家とともに“生産者編集部”を結成しました。

    左から昆布漁師の保志弘一、猟師でこのガイドブックの編集長を務める中村麻矢、酪農家の菊地亜希が“生産者編集部”のメンバー。『PIRUY』出版記念パーティーの会場として元米屋【中一】を提供してくださった中村真矢さん

    左から昆布漁師の保志弘一、猟師でこのガイドブックの編集長を務める中村麻矢、酪農家の菊地亜希が“生産者編集部”のメンバー。『PIRUY』出版記念パーティーの会場として元米屋【中一】を提供してくださった中村真矢さん

発刊したガイドブックの名は『PIRUY(ピルイ)』。ピルイとは、アイヌ語で広尾町を意味しています。

    広尾町の人情ガイドブック『PIRUY』創刊

    広尾町の人情ガイドブック『PIRUY』創刊

観光スポットの紹介の他に、“町での日々の暮らし”と“人の魅力”を伝えたいと思い、高校生がカラオケをするためにパブの跡地に通う話や、ビート農家には欠かせない「ピタROW」というビート収穫専用トラクターの話など、ガイドブックというにはなかなか類を見ない“ド”ローカルな話もふんだんに詰め込みました。

    てんさい糖の元になるビートの収穫風景。写真のトラクター「ピタROW」はビート専用の収穫機で、このトラクターを見かけたらそこは一面ビート畑!

    てんさい糖の元になるビートの収穫風景。写真のトラクター「ピタROW」はビート専用の収穫機で、このトラクターを見かけたらそこは一面ビート畑!

そして、欠かせないのが広尾町のグルメ情報。

広尾町は本シシャモの名産地なので、なかなか他では食べられない『シシャモのお寿司』が食べられます。また、酪農も盛んなので、放牧地で牧草をたっぷり食べた夏の牛のミルク、寒くなるとともに脂肪がのってきた冬のクリーミーで濃いミルク、そんな少しずつ季節で変化するミルクを使用した『しぼりたてソフトクリーム』も絶品。
その他にも、サバとガリが一緒になった巻き寿司の『サバガリ』や、うな重ならぬ『ハモ重』など、ローカルフードもたくさんあります。

    地元に根付く町中華【王府(ワンフー)】の人気No.1メニュー。ご当地麺を使用したあんかけがかかった『焼きそば』770円

    地元に根付く町中華【王府(ワンフー)】の人気No.1メニュー。ご当地麺を使用したあんかけがかかった『焼きそば』770円

また、冬になると産地ならではの価格で毛ガニを即売し、太平洋を一望する広大なイベント会場で茹でたての毛ガニが食べられる「毛ガニ祭り」なども行われます。抜群の景色の中で食べる毛ガニは格段においしい!

リフレッシュするのに最適な澄んだ空気と広大な景色。生産者が働くリアルな現場。これといって目立った観光地はないけれど、食にまつわる生産者が多く働き暮らす広尾町で、「食べる」ということを全身で感じてほしいです。

広尾町の人情ガイドブック『PIRUY』

  • 1,300円(送料別)/ピロロツーリズム推進協議会刊 全54ページ/フルカラー
    2022年9月頃(売り切れ次第終了)まで、東京「代官山蔦屋書店」にて限定40冊のみ絶賛販売中!

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この記事を作った人

撮影/赤間大地 取材・文/中村麻矢

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